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一般的にはモノラルで収録されることの多いVlogですが、ステレオ録音することによって一味も二味も違う作品に仕上がります。

もちろんマイクは2本必要なのでその分設備費はかさみますが是非ステレオの世界もきわめて見てください。
ステレオ録音ができると強い

さて、ステレオ録音はどういったシーンで活用すればいいのでしょうか?
これは主にワンポイント録音でその真価を発揮すると考えます。
ワンポイント録音は、ステレオペアマイク2本のみを使ったシンプルな録音方式でセッティングは簡単ながらもわずか1cmでも高さがずれたり、場所が変わると大きく音質が変化してしまう非常に奥ゆかしい録音方法になります。
やはりステレオ録音ができると一気に世界が広がります。
さらにこれからの時代ですと音響さんは確実にVR録音をマスターしなければいけません。
今やはり有名なのはゼンハイザーのマイクでしょうか。
でももちろんVRの前にステレオ録音なのです。
SENNHEISER ( ゼンハイザー ) / AMBEO VR MICちなみにVRマイクは対応しているレコーダーじゃないと録音できないので注意してください。
ステレオ録音に関しては2ch用意されているものであればほとんどのもので対応可能です。
ZOOM ( ズーム ) / F6 +専用プロテクティブケースPCF6セットステレオワンポイント録音をマスターするメリット
ではこの奥ゆかしいワンポイント録音方式をマスターするとどんな良いことがあるんでしょうか?
ズバリ!
一匹狼になれる!
という点です。
企業よりも個人と言われる昨今、フリーランスとして活動していくためには、レスポンスの速さはもちろんですが、やはり小回りの良さが求められます。
マルチトラック録音(じゃがりこ飯マスタリングが必須)で勝負する場合、例えばオーケストラの収録などのお仕事があった場合は、一人で現場にいって収録するなんてことはまず不可能です。
最低でも10人ほどバイトスタッフを調達しなければいけません。
これではクライアントにとってももちろん予算が跳ね上がりますし、お仕事を構成するのにも日程調整やその他たくさんの雑務が増えてしまいます。
企業であれば対応可能となりますが。
しかし、ワンポイント録音であれば、マイク2本とレコーダー持っていけば一人で録音可能。
音質やクオリティーは変わらず、もしくはそれ以上の可能性を秘めたワンポイント録音ですが、数十人規模のスタッフが必要な収録を一人でこなすことができます。
Vlogなどの撮影でも別途スタッフを雇う必要がなくなります。
じゃあなんでみんなワンポイント録音にしないの?!
これもズバリ言ってしまいましょう。
言いにくいけど言ってしまいましょう。
理由の一つとなるのが・・・

見栄えが悪いからです。
見栄が悪いってどういうことだよ。。。
説明します。
数十人のスタッフが必要なマルチトラック録音も、マイク2本だけもってやってくるワンポイント録音のエンジニアももちろん音響のスキルは同じ。
そしてかける知的労力も同じ。
しかし・・・クライアントからみると・・・
本番中もインカムを使い随時セットしたすべてのマイクのゲインを確認。
本番始まるちょっと前に録音ボタンを押して、ヘッドホン越しに楽しそうに鑑賞している。
当然状況Aの方が見栄えが良いですよね。
そりゃクライアントからすれば、状況Aの方が予算をたくさん出した甲斐があるってもんです。
なので状況Bの場合はすごい舐められます。
収録後に値下げ交渉されることもあります。
「〇〇してただけだからもう少し安くなりませんか?」
などなど。
こういう事情があって、なかなかワンポイント録音は流行らないし、仕事の依頼があっても無駄にマイクたくさん立てたりするエンジニアもいます。
結局使うのはステレオペアだけなのに、使わないトラックを見栄えのために並べるということもしなければいけません。
実際本当にやります。
これは昨今のカメラ、映像の世界でも同じだと思います。
手のひらに収まるサイズの素晴らしいカメラがたくさんあります。
フリーランサーの方でも写真や映像の依頼があった場合、そのままだとクライアントに舐められる・・・
だから見栄えよくするために必要のないRigまでつけてゴツ盛りのフル装備にする。

「わかる・・・」と頷いてしまうカメラマンさんも多いのではないでしょうか?
巨大なカメラと装備を持っていくだけで「さすが、プロの機材は違いますね!」と言われるんですね。
本当はSonyならa1と本気のレンズ一本だけで最高の仕事ができるのに・・・です。
そして難しい。。。
ワンポイント録音はじゃあ簡単か?
と言われれば、はっきりいって難しいです。
マルチマイクでいろんなところを保険で録音しておく手法の方があとから潰しが効きます。
ワンポイント録音は現場で音を作ってしまわないといけないので後から潰しが効きにくいのも特徴なのでかなり緻密なモニター環境と、ミックスルームでモニターするほどの集中力が要求されます。
テクノロジーのおかげ
当然ワンポイント録音が一人で完結するのはテクノロジーのおかげです。
優秀なADCやマイクアンプが手のひらサイズのレコーダーに凝縮され、テープはメモリーカードに。
軽くても丈夫なマイクスタンドケース。
録音の分野もまたテクノロジーの進化の恩恵で小回りの効く立ち回りができるようになったと言えます。
ステレオペアの各方式を覚える
さて、これは突き詰めると結構な種類のセッティング方式が存在しています。
しかし、基本的に覚えるのは二種類で大丈夫。
でも一応教養のために何種類か紹介しておきます。
指向性のステレオペアと無指向性のステレオペアのセッティング方式をそれぞれ一種類づつマスターしていきましょう。
無指向性マイク:AB方式

AB方式は2本の無指向性マイクを一定の感覚で平行に並べてセットします。
一般的には30cm〜60cmの間で良いポイントを見つけます。
オンマイク気味の収録で使うことが多いですが、もちろんオフマイクでもばっちり昨日します。
オーケストラの収録では釣りマイクが各ホールに設置されています。
この釣りマイクはAB方式のホールが非常に多いです。
録音や音響にこだわりのあるホールでは、デッカツリー方式やフィリップス方式が採用されたりしています。

こちらは金田式電流伝送DC録音でのコンサートホールでのテストの際の写真です。

この時の実験ではデフォルト時よりもかなり低めに設定していました。
無指向性マイクでのステレオペア収録ではこのAB方式が基本になると考えて差し支えないでしょう。
ホールを借りても釣りマイクをこのように交換させてもらえるかどうかは交渉次第で基本的に9割くらいは断られるのでホールでのAB方式で収録したい方は根気よく対応可能なホールを探すか、まずは関係者の人脈作りに勤しみましょう。
Kotaro Studioの出す暫定的な答え
30cm〜60cmが基本とは言いましたが、筆者の個人的な最適解は32.5cmが軸になっています。
ここから、オンマイク気味で収録する時は31.5cm、オフマイクで収録する際でもマックス33cmを基準にしています。
もちろん環境によって様々だとは思いますが、よほどのことがない限りこの数値でマイクの間隔はセットし、あとはステレオペアで座標を動かしながら音を探っていきます。

ちなみに筆者がピアノソロの収録で無指向性AB方式を採用する場合、間隔は28.5cm〜29cmにしています。
距離によって多少変わりますが、これは筆者の経験上の間隔になっています。
是非試してみてください。
指向性マイク:NOS方式
無指向性マイクの場合はAB方式でほぼ一択でしたが、指向性ステレオペアの場合はいくつかあります。
今回の講座では一種類づつ覚えましょう〜!
ということでしたので、NOS方式、通称オランダ方式をマスターしてください。
こちらはオランダ放送協会が開発したステレオペア録音方式となっており、簡単に設置できるので世界的にもかなり普及しています。
特にこだわりがなければ指向性マイクのペアはこのオランダ方式でOK。
写真はKM184を使ったオランダ方式の様子ですが、こちらは間隔は守っておらず若干独特のスタイルになっていますが、形としてはこのような形式になっていきます。

指向性マイク:ORTF方式
通称フランス方式。
このフランス方式も教養の一つとして覚えておくと損はないかと思います。
フランス方式は、2本のマイクの角度を110度に設置。
素子の間隔は17cmとかなり窮屈なセッティングになっています。
参考写真は用意できませんでしたが、このセットだとマイクケーブルなどが干渉しあったりしてうまくセッティングできなかったりするので、最初からこのフランス方式で収録するための専用マイクなどが発売されています。
真っ先に出てくるのはやはりショップスでしょうか。
SCHOEPS MSTC 64 Uはフランス方式での録音専用マイクロフォンとして有名です。
紹介ページを貼っておくの形状に注目してみてください。
指向性マイク:XY方式
こちらも覚えておくといいかもしれません。
こちらは指向性マイクとしては定番のセッティングにはなります。
ただ個人的にはXY方式の音がどうにも合わずに、好きになれずにいます。
入門機〜中級機種のハンディーレコーダーなどに内蔵されているマイクはこのXY方式で構成されているものが多いです。
例えば、タスカムのDR-40XなどはAB方式とXY方式を切り替えて使えるという特徴がありますよね。
TASCAM DR-40X 内蔵マイク VS 外部マイク 音質チェック
2本のマイクの素子の間隔は0cmにします。
0cmなので上下に重ね交差して置くのが特徴的です。
こちらはiPhoneなどに挿して使うタイプですが、このようにコンパクトにまとめられるため、多くのレコーダー内蔵マイクに採用されやすいです。
このようにZOOM製のカプセル交換式のXYマイクだと差し替えるだけですが、自分で配線する場合などは、右マイクが左の音を収録、左マイクが右の音を収録するため左右の配線を間違えないよう気をつけましょう。
この他、デッカが開発したデッカツリー方式や、フォリップス開発のフィリップス方式などがありますが、結構マニアックなので、こちらも需要がありそうならマスター講座でお届けしたいと思います。
基本軸に囚われすぎない

さて、忘れてはいけません。
音響の世界に正解はありません。
正解を決めるのは常にあなた自身です。
これら紹介した方式は誰かに伝えるため、シェアするために決められた間隔と距離であり、すべての音源に対して常に最高の結果を残してくれるものではありません。
筆者の出したAB方式の数値も必ず毎回その数値というわけではありません。
筆者がピアノを収録する時は30cmを下回る間隔でセットするように、あなた自身のオリジナルの方式を作ってもらって何も問題ありません。
それがいい音であれば、それが正解です。
まずはセットしてみる。
そしていろんな音を撮ってみる。
無指向性はAB方式、指向性はオランダ方式・・・
を当サイトでは推奨していますが、フランス方式以外考えられない!という意見もまた正解です。
いろいろ試してみてあなただけの正解を見つけてみてください。

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服部 洸太郎
音大を卒業後ピアニストとして活動。
自身のピアノトリオで活動後北欧スウェーデンにてシンガーアーティストLindha Kallerdahlと声帯とピアノによる即興哲学を研究。
その後ドイツへ渡りケルンにてAchim Tangと共に作品制作。
帰国後、金田式電流伝送DC録音の名手:五島昭彦氏のスタジオ「タイムマシンレコード」にアシスタントとして弟子入りし、録音エンジニアとしての活動開始。
独立後、音楽レーベル「芸術工房Pinocoa(現在はKotaro Studioに統合)」を立ち上げ、タンゴやクラシックなどのアコースティック音楽作品を多数プロデュース。
その後、秋山庄太郎氏後継の写真スタジオ「村上アーカイブス」でサウンドデザイナー兼音響担当として映像制作チームに参加。
村上宏治氏の元で本格的に写真、映像技術を学ぶ。
祖父母の在宅介護をきっかけにプログラムの世界に興味を持ち、介護で使えるプログラムをM5Stackを使って自作。
株式会社 ジオセンスの代表取締役社長:小林一英氏よりプログラムを学ぶ。
現在はKotaro Studioにてアルゼンチンタンゴをはじめとした民族音楽に関する文化の研究、ピアノ音響、さらに432hz周波数を使った癒しのサウンドを研究中。
スタジオでは「誰かのためにただここに在る」をコンセプトに、誰がいつ訪れても安心感が得られる場所、サイトを模索中。