イコライザーに関する3つの誤解!【イコライザーとは針である】

前回じゃがりこ飯的マスタリングについて解説しました。
結局のところクオリティを上げるためには、各種プラグインなどの使い方をマスターするよりも豊洲で最高級の本マグロを競り落とすほうが早いし確実だし、クオリティも上がります。

マスタリングとは何か?!【じゃがりこ飯的マスタリング】(サイト内記事)

最高級本マグロを調理するための下準備をお届けしましょう!
今回はイコライザーです。!

イコライザーとは針である

EQと表記されるイコライザー。

みなさんも一度は聞いたことがあるかもしれません。

映像制作の方にとってはダビンチなどの編集ソフトの音声編集のゾーンにイコライザーが入っています。

【EQ実践編(ノーマライズまで)】DaVinci Resolveでの使い方(サイト内記事)

『音響をするならイコライザーを使いこなせるようにならなければいけない!』

などと言われたことがある方もいるかもしれません。

イコライザーって何?

イコライザーってどうやって使うの?

いまいち音が決まらない!

などなど。

これから音響を学ぼうとしているミュージシャンや映像関係の方からイコライザーに関する相談をいくつか受けてきたことがありました。

その中で筆者が感じることは、みなさんイコライザーに対して大きな誤解をしているのではないかということでした。

そして、何を隠そう、筆者自身が音響を学んでいく段階で、過去に同じような誤解を抱いていたのでおそらく共通して抱える悩みなのではないかと思います。

陥りやすい誤解を順番に紐解いて行ってみましょう!

誤解その1:イコライザーは音質を良くする

イコライザー=音が良くなると思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、イコライザーで音質がアップすることはありません。

これまでお話してきたとおり、音質自体はマイクアンプとADCで決まります。

「音はアナログ部分で決まる」ここは揺るぎない真理であり、筆者がアシスタント時代によく言われていたことでした。

イコライザーは周波数を調整しますが、音質そのものとは全く無関係の概念です。

誤解その2:めっちゃ難しい。

さて、もちろんなんの情報もなしに手探りで触るにはあまりにも難しい存在です。

アナログ時代は主流だった「グラフィックイコライザー」なんかの写真を見たら卒倒する方もいらっしゃるかもしれませんが、実はめっちゃ簡単なんです。

ポイントを押さえればばっちりです。

凄まじい数の周波数ポイントを何百種類も触り倒して調整していく・・・ことが必要な音源はそもそもその録音自体が失敗しています。

誤解その3:音声を加工する作業である。

ここが最も重要な誤解です。

イコライジングは音声加工の作業ではありません。

イコライジングほど引き算の音響はないからです。

例えば当サイトでも追って解説しますリバーブ処理は完全に足し算の音響です。

イコライジングはなにか足りない要素を足していく作業ではなく、余計な要素を引いていく引き算の美学がそこにあります。

針で・・・穴をあける

引き算の美学であるイコライジングですが、それはまるで、詰まっている何かを細い針で穴を開けるような感覚です。

音の血栓となっているのはどこか?!

それをモニターでしっかりと探し出してイコライザーという針で一発ポツ・・・っと抜いてやる。

そんなイメージです。

なのであっちこち穴を開けまくっていくともう沼にハマって抜け出せなくなってしまいます。

POINT

大抵の場合一発目に指す穴の位置を間違えたためにあちこち触ってぐちゃぐちゃになる。

そして作業が大変になっていく・・・故にイコライジングは難しい。。。

と印象付けられます。

感性を信じて一撃必殺の針を刺す。

それでだめならもうそのイコライジング作業は失敗・・・といっても過言ではないほど、初期のモニターと、どの血栓を抜くのか?が重要になってくるわけです。

体験談

筆者がタイムマシンレコードから独立して初めて一人で録音から制作までを手掛けたときは、まさにイコライザー沼にはまり込んでしまって抜け出せなくなっていました。

その時はとにかくもうイコライジング作業だけで一ヶ月以上・・・

毎日朝から晩までモニターして何度も何度も変更し、ここが決まったと思ったらある部分では全然だめ。。。

全体の音が全く決まらない。

こういうときは一度初期状態に戻してフラットな視点でみることで抜け出しやすいのですが、プレスの納期も迫っていることがあり、焦りもあったのでしょう。

結局一ヶ月以上も格闘した後に一度フラットに戻して、ローをわずかにカット。。。

たったそれだけ。

たったそれだけでバシッと音が決まり、見事に入稿となりました。

ダメゼッタイ

イコライザーを使って特定の周波数帯を持ち上げる。

という誤解している方もいらっしゃいますが、これも大きな誤解と言っていいと思います。

決してイコライザーで持ち上げたりしてはいけません。

本マグロで例えると、もう針を使って身を削っているようなもの。

常に引き算の美学を意識する

常に引き算の美学であるということを肝に命じておきましょう。

例えば中域をもう少し効かせたい!

持ち上げたいと思ったとしましょう。

その時、誤解を招いたままであるとイコライザーを使って中域をアップさせるかもしれません。

しかし、それはアプローチがそもそも間違っているわけです。

中域をしつかりとピックアップしたければ、低域のどこか、高域のとこか、あるいは中域のどこかを針で抜いてやる。

どこかにかならずある血栓を抜いてやることですーーーと抜けてくるわけです。

そこに自然発生している音場に決して逆らってはいけません。

美しい法則で羅列された周波数の場を乱してはいけないわけです!

詰まっている部分だけをそっと抜いてやる。

その作業がイコライザーであるということをしっかり認識しておきましょう。

この記事を書いた人

こうたろう

元ピアニストでフォトグラファー&サウンドデザイナー
ミュージシャンだった父の音楽スタジオと、モデルだった母の仕事場であるフォトスタジオの現像ルームが子供時代の遊び場という恵まれた環境で育つ。
音楽大学を卒業後ピアニストとして活動を開始。
自身のピアノトリオで活動後北欧スウェーデンにてヨーテポリを拠点に活動するシンガーアーティストLindha Kallerdahlとセッションを重ね声帯とピアノによる即興哲学を研究。
その後単身ドイツ・ケルンへ渡独。
ドイツから帰国後ピアノソロ作品アルバムと共に同時リリース。
金田式電流伝送DC録音の第一人者である五島昭彦氏のスタジオ「タイムマシンレコード」にアシスタントとして弟子入りし、活動を開始。
独立後、音楽プロデューサーとして音楽レーベル「芸術工房Pinocoa(現在はKotaro Studioに統合)」を立ち上げ、タンゴやクラシックを中心としたアコースティック音楽作品を多数プロデュース。
現在は元ピアニストの経験を生かしたミュージシャンのライブフォトを得意としながら、肖像写真、動物写真、自然写真を中心にミュージックビデオの制作などオーディオ技術も得意とするフォトグラファーとして活動中。