ニュージーランドのメーカー:DOTTEREL〜Konos microphone system
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ニュージーランドに拠点を置くDotterel Technologiesは、革新的なオーディオ技術を専門とする会社で、特にUAV(無人航空機)向けの高度なノイズ減少およびオーディオ録音技術の開発で知られています。
独自のオーディオシステム開発
百聞は一見にしかず、はずはこちらの動画を見てみましょう。
ニュージーランドのオーディオメーカー:DOTTERELのコンセプトや製品の狙いなどが見えてくるかと思います。
昨今ドローン技術はすでに文句のつけようがないほどに進化してきました。
カメラに関してもDJIの素晴らしいレンズ群に加えてソニーなど映像メーカー各社からドローン用カメラ、またミラーレスそのものをマウントできるようになっているため、空撮の技術革命は終了したといっていいでしょう。
残された課題がオーディオでした。
ドローンそのものに搭載できる素子はいくらでもあるでしょう。
しかし、ドローンの最大の弱点であるプロペラ音。
これはドローンに搭載どころか、ドローンの付近での録音でも難易度が高いものでした。
同社のKonosマイクロフォンシステムはそういう意味ではドローンでのオーディオ革命の第一歩であると言えます。
Konos microphone system
このシステムは、紹介動画の中にもあったように、特に騒音環境での使用に特化しています。
以下にその詳細をご紹介します。
特徴
- 高感度アレイ: 80エレメントの高忠実度・高感度マイクロフォンアレイを備えており、困難な音響条件下でもクリアな音声をキャプチャ可能です
- 調整可能な指向性: 狭いビームから広いビームまで、指向性を調整できます。この特徴により、一つのマイクロフォンで様々な音響環境に対応できます。
- ノイズ除去機能: オプショナルなノイズフィルタリングを使用し、リアルタイムでオフアクシスのノイズを除去しつつ高忠実度を保持します。
Dotterel TechnologiesのKonos microphone systemによって、エンターテイメント、緊急サービスなど、今後もこれらの分野での革新的なオーディオ技術の開発を進めることが予想されます。
ドローンはエンターテイメントの他にも林業や救命、軍事に利用される割合が高いとは思いますが、特に災害時の救助にKonosマイクロフォンシステムは特に災害時の救助に最適ですし、災害時の救助目的で利用されることを一人の音楽家として強く願っています。
指向性を調整することで対象者からの情報を聞き出せますし、広げることによって現場の状況はより鮮明になります。
音から得られる情報は映像とはまた違ったものになりますので、今後飛躍的に革命が起こる分野となるでしょう。
より小型で効率的なモデルの開発、さらなるノイズ低減機能の強化、現在はオペレーターが手動で解析する分析もAIを活用したリアルタイム音声分析などが今後の進化の方向性として考えられます。
Pythonを使った音声解析などの記事はこちらもご覧ください。
librosaのコード】オーディオスペクトル解析&周波数解析のサンプルコード
災害時の課題
災害が起こった際に被災者救出に向けてこのシステムを積んだドローンを大量に飛ばせば、画像認識で人を見つけ応答を呼びかけることが可能になりますよね。
例えば助けを求める人の音声をAIで解析し、被災者の元に急行することもできるでしょう。
ただし、課題となるのがやはり指示を与えるプログラマー、つまり人間側の倫理の問題です。
災害時では日本でも採用されているトリアージ(triage)は、医療資源が限られた状況で患者を最も効果的に治療するための方法です。
トリアージの基本的な原則は、最も重篤な状態にあるが救命可能な患者に優先的に医療資源を割り当てることです。
トリアージの優先順位付け
- 即時カテゴリー(赤): 重大な傷害を負っており、即時の医療介入が必要な患者。
- 遅延カテゴリー(黄): 深刻な傷害を負っているが、直ちに命に関わるわけではない患者。
- 小規模治療カテゴリー(緑): 軽傷で、遅延して治療を受けても大丈夫な患者。
- 期待カテゴリー(黒): 重篤で、救命の見込みが極めて低い患者。
さて、ここで救助のプログラムにどのように提案するのか?
つまり助けを呼べる(音声認識と解析が可能な要救助者)と助けを呼べない(声がでないまたは出せない)要救助者のどちらに先にドローンは向かうのでしょうか?
トリアージはシンプルで機能的な手法ではありますが、人間の裁量がほぼすべてを締めているわけです。
ここをプログラム化するにはまだまだ様々な倫理的な問題が山積みだと言えます。
トリアージの歴史
ちなみに豆知識としてトリアージの歴史を少しおさらいしておきましょう。
- 起源: トリアージの概念は、18世紀にフランスの軍医であるドミニク・ジャン・ラリーによって導入されたとされています。彼は戦場での医療サービスの効率化を目指し、傷の重さに基づいて治療の優先順位を決定しました。
- 発展: 第一次世界大戦と第二次世界大戦を通じて、トリアージシステムはさらに洗練され、緊急医療の基本原則として広く採用されるようになりました。
- 現代: 現代では、災害医療、戦場、緊急医療の現場などで広く使われており、効率的かつ公平な医療資源の配分を実現するための重要な手段となっています。
技術仕様
- 周波数応答: 50Hz – 20,000Hz
- 出力: 3x XLR-Mバランスマイク出力
- 電源: 外部USB PD 2.0/3.0 12V、消費電力は12W
- 動作時間: 約3.5時間(10,000mAhのパワーバンク使用時)
- 寸法と重量: Konosアレイ約155g、プロセッサー約770g
映像制作での利点
Dotterel TechnologiesのKonosマイクロフォンシステムは、ラスベガスで開催された2023年のNAB Showでオーディオカテゴリーの年間製品賞を受賞し、国際的に認められています。
この賞は、オーディオ技術業界における同社製品の影響と革新性を示しています。
災害救助の視点ではなく映像制作の視点でみても、これまでにはなかった軽装備でのロケが行えますし、これまで難しかった録音を可能にします。
【購入】代理店リスト
北米
- ロサンゼルス: Trew Audio, 2243 N. Hollywood Way, Burbank, CA 91505 [ウェブサイト: www.trewaudio.com]
- アトランタ: Trew Audio, 1706 Defoor Pl NW, Atlanta, GA 30318 [ウェブサイト: www.trewaudio.com]
- ナッシュビル: Trew Audio, 220 Great Circle Rd #116, Nashville, TN 37228 [ウェブサイト: www.trewaudio.com]
- ニューヨーク: Gotham Sound, 35-10 36th Ave. Second Floor, Long Island City, NY 11106 [ウェブサイト: www.gothamsound.com]
- トロント: Trew Audio, 17 Carlaw Avenue, Unit 4, Toronto, ON [ウェブサイト: www.trewaudio.ca]
- バンクーバー: Trew Audio, 3737 Napier Street, Burnaby, BC [ウェブサイト: www.trewaudio.ca]
ヨーロッパ
- ドイツ: Nordic Pro Group, Gildestrasse 6, 24960 Glücksburg [ウェブサイト: www.nordicpro.eu]
- フランス: Cartoni France, 3 Rue Georges Méliès, 94350 Villiers-sur-Marne [ウェブサイト: www.cartonifrance.com]
- イギリス: Raycom, Unit 8, Abbey Lane Court, Evesham, WR11 4BY [ウェブサイト: www.raycom.co.uk]
オーストララシア
- ニュージーランド: Dotterel Technologies, 16/930 Great South Road, Penrose, Auckland 1061 [ウェブサイト: www.dotterel.com, メール: info@dotterel.co.nz]
- 。
これらの代理店を通じてKonosマイクロフォンシステムを購入することができます。
日本国内代理店
日本国内でKonosマイクロフォンシステムを購入するための正規販売代理店は、TACSYSTEM株式会社となっています。
以下のリンクから製品情報を確認し、購入の相談が可能です。
- TACSYSTEMの製品情報ページ: Konos Microphone System – DOTTEREL
- TACSYSTEMのお問い合わせフォーム: お問い合わせはこちら
技術的な解釈
Konosマイクロフォンシステムの技術的な特徴について考察したいと思います。
仕様をみると80個の素子を使用して指向性の範囲を調節するとあります。
このシステムでは、80個の小型マイクロフォン(MEMSマイクロフォンアレイ)が使用されており、これらが相互に協調して動作する仕組みになっています。
各マイクロフォンは独立して音声をキャプチャしますが、これらの音声信号は組み合わされて相互、または対象となる情報と一度一つに集約され、別の音声信号を生成すると推察できます。
指向性の調節は、これらのマイクロフォンの相互作用と対象素子を調整することで行われます。
具体的には、マイクロフォンアレイ内の個々のマイクロフォンからの信号の位相とタイミングを調整することにより、特定の方向からの音声を強調し、他の方向からのノイズや不要な音声を抑制することができます。
このようなプロセスを通じて、狭いビーム(60°)、中程度のビーム(100°)、広いビーム(180°)に範囲を選択的に調整することが可能になるわけです。
この位相を使ったノイズの処理や新しい音場を作り特定の範囲を強調する音響自体はVRマイクのシステムから応用されているのではないかと思うわけです。
複数の素子を組み合わせ音響を再構築する技術に関しては1980年代から確立されつつありました。
ここでマイクロフォンアレイ(複数素子の組み合わせ)の簡単な流れについておさらいしておきましょう。
Soundfieldマイクロフォンの開発
Soundfieldマイクロフォンは、Michael GerzonとPeter Cravenによって発明され、最初のモデルが1978年にCalrec Audio Limitedによって開発されました。
この技術は、3Dオーディオキャプチャの原理に大きな影響を与えました。
技術的な進化
1993年にSoundField Limitedが設立され、Soundfieldマイクロフォンの製品範囲がさらに拡大しました。
2016年には、RØDE Microphonesの親会社であるThe Freedman GroupがSoundFieldを買収し、新たな製品を市場に投入しました。
音場の再現技術
Soundfieldマイクロフォンは、A-FormatおよびB-Formatと呼ばれる2つの異なるオーディオ信号セットを生成します。
これらは、オムニディレクショナル、前後の双指向性、左右の双指向性、上下の双指向性の情報を含み、3次元の音場を再現するために使用されます。
今回KonosマイクロフォンシステムもAIでのアルゴリズム調整が可能になれば、現場の環境や状況に合わせて組み合わせる素子を随時選んだりできるようになると考えると非常に面白いオーディオ革命が起こるのではないかとワクワクを抑えられません。
ただし、オーディオとAIの未来の相性を占う上で最も大切な概念が、ノイズの定義です。
ノイズをどう定義するのか?
写真や映像はある程度ノイズの定義ができているのかもしれませんが、オーディオノイズの定義がAIの領域でできるようになるにはまだまだ時間がかかりそうです。
おまけ:Dotterelとは?
“Dotterel”は、本来は鳥の一種を指す言葉です。
Dotterel(ドッテレル)は、チドリ目チドリ科に分類される鳥の一群で、ユーラシアやアフリカの一部に生息しています。
この鳥は比較的小さく、独特の模様と色を持つことで知られています。
ニュージーランドのオーディオ技術会社Dotterel Technologiesがこの名前を選んだ具体的な理由は公開されていませんが、企業が自然や野生生物に触発された名前を選ぶことは一般的です。
Dotterel Technologiesの場合はもしかすると、ドローンのプロペラノイズをなんとかしたい!という想いから立ち上がったのかもしれませんね。