何度でも言うよ!カメラにマイクを挿さないで!

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TwitterのDMで相談をもらいました。

ZOOM H6を使っているんだけど、どうも音が良くならない。

KM184を使っているのに音が悪い。

H6の出力:LINE OUTからカメラのオーディオインに刺して録音しないでください。

簡易紹介:こうたろう

1986年生まれ
音大卒業後日本、スウェーデン、ドイツにて音楽活動
その後金田式DC録音のスタジオに弟子入り
プログラミング(C)を株式会社ジオセンスのCEO小林一英氏よりを学ぶ
現在はヒーリングサウンド専門のピアニスト、またスタジオでは音響エンジニア、フォトグラファーなどマルチメディアクリエーターとして活動中
当記事ではプログラマー、音響エンジニアとして知識とスキルをシェアしていきます

録音準備には三種の神器が必要

  1. マイクロフォン
  2. マイクアンプ
  3. ADコンバーター

どれが欠けても成立しないんです。

例えば当スタジオでも度々紹介しているバイノーラルマイクロフォンなども、カメラに直接入れちゃう人も結構いらっしゃるんです。

例えば録音デビューの記事で紹介しているこのローランドのバイノーラルマイク。

これの赤い部分をカメラのマイク端子直接差すと音自体は記録できるわけですが、先ほど紹介した三種の神器のうち、二つ、つまりマイクアンプとADコンバーターは完全無視状態になってしまうわけです。

ポイント実際はカメラにもマイクアンプにADCが内蔵されているので、カメラのステレオミニプラグインにバイノーラルマイクを挿入すれば録音は可能です。
しかしオーディオレコーダーに付属するカメラで撮影するのが本格的なシネマカメラとは戦えないように、カメラに内蔵されたオーディオ機器は、オーディオ専門機器とは戦えません(一部例外もあります)

サンプルの音を用意していますが、このマイクを買ってカメラに直接挿してしまっていてはこのマイクの音はでないというわけなんです。

例えばこのサンプルはDR-05XのマイクアンプとADコンバーターを組み合わせた音であり、すべてが機能してマイクの初めて性能を発揮できるわけです。

高級マイクも同じ

このマイクロフォン三種の神器はどのマイクも同じです。

もちろんカメラに内蔵されている小さな素子も同じで例外はありません。

カメラの内蔵マイクの音がいまいちなのは、マイクの素子が問題なのではありません。

実際Kotaro Studioが自作の無指向性マイクを制作するために採用している素子が入っているケースだって多々あります。

もちろんモノラルという点も大きいかと思いますが、マイクアンプとADコンバーターが最大の問題なのであり、通常オーディオとは切り離して考えられているため、カメラにはそこまでオーディオに特化したアイテム、パーツを入れることはできません。

ポイントブラックマジックなどではXLR入力端子があるものもありますが、あれでさえ、オーディオ専用のマイクアンプとADコンバーターとは全く違う次元であると思われるので、生配信でない限り別で用意するのが賢明です。

それは車にエンジンがないと動かないのと同じです。

いくら最高のマイク(フェラーリ)を買ってもマイクアンプという名のエンジンが軽自動車のものが入っていたら真価を発揮できませんよね。

レコーダーを用意しても音が悪い?

質問者様の場合はそのことをしっかりと意識されていて、カメラとは別にレコーダーを準備していました。

そこまではよかったのですが・・・

肝心のADコンバーターというパーツをカメラのものを使っていてはこれもまた真価を発揮できないわけです。

これはフェラーリに最適なエンジンが積まれてはいますが、軽油を入れているような状態です。

ポイント

こちらのYoutube動画でもわかりやすく解説していますので、是非チェックしてみてください。

ライン出力はメモのため

こういったフィールドレコーダーと呼ばれるものにライン出力がついています。

もちろんカメラに差して使うのもOK。

しかしこれはカメラにメモを入れているだけに過ぎません。

後からレコーダーで録音した音とカメラの音を動画編集ソフトを使って、オーディオマッチさせるためです。

一昔前はタイムコードジェネレーターが搭載されている機種は珍しかったためスレートトーンというのが主流でした。

無機質なトーンをカメラに送り、オーディオレコーダーでも同時に記録することにより、オーディオマッチさせるというわけです。

ポイント

ここからさらに一昔前の昭和時代に遡ると、これがカチンコというわけなんです。
もちろん今の時代でもカチンコを使ってもいいですが、かさばるしあまり現実的ではありませんよね。

ライン出力を使わずにカメラの内蔵マイクとマッチさせることもありますし、筆者はあんまりテイク数が多くない場合はライン出力でメモも取りません。

こちらはZOOM M4との組み合わせですが、このように完全無線で収録できます。

【M4 MicTrakレビュー】 M4 32bit ステレオリンクの問題点

ただし、オーディオというのは思いのほか遅いんです。

秒速340m程度しかありません。

100メートル走のスタートの合図などは遅れて聞こえるレベル。

このため、ライン出力を使わない場合、カメラとレコーダーとの間に一定の距離があったりすると、若干のずれが生じるわけです。

また、複数台のアングルで収録するケースになるとタイムコードジェネレーターという機材を使い、全体を同期させます。

タイムコードジェネレーターが現場になくても複数カメラにオーディオデータを送信する荒技などもありますが、そのあたりは別の機会に紹介しましょう。

まとめ:カメラに入っている音は最後にはなくなる

これが正解です。

オーディオマッチさせたあとにはカメラの音は切り離します。

FINAL CUTであれば、クリップを同期、または手動でオーディオを切り離すという項目があるので、切り離し、カメラの音声は完全に削除しちゃってください。

カメラの音を残してかぶせるのもNG。

ポイント詳しいやり方はこちらの記事にまとめていますので参照してください。

こちらの記事でグランドピアノの実験をシェアしましたが、このレベルの実験記事を見たときに、私たちサウンドデザイナーや録音エンジニアが見るのはピアノやホールではありません。

まず最初にマイクのカプセルはなにか?

そして、何よりもマイクアンプは何を使うのか?

というわけなんです。

【名古屋芸術大学、ベルリン芸術大学、東京藝術大学 共同研究】ピアノ録音を教えられるのか?

RME?!

パーフェクトです。

RME ( アールエムイー ) / 12Mic 12chマイクプリアンプ をサウンドハウスさんでみてみる

というわけで、サウンドデザイナーと一緒に行わない映像制作の際は面倒だとは思いますが、必ずレコーダーで録音した音声を後から編集ソフトでマッチする作業を行いましょう。