本日は自己紹介の強化記事という名前を借りた徹底した自分語り記事というわけで、ZOOM F3と出会って今後研究、追求していくべき録音システムを定めたこと、そして、これまでの録音奮闘記までをゆったり綴っていきます。

簡易紹介:こうたろう
1986年生まれ
音大卒業後日本、スウェーデン、ドイツにて音楽活動
その後金田式DC録音のスタジオに弟子入り
写真・映像スタジオで音響担当を経験し、写真を学ぶ
現在はヒーリングサウンド専門のピアニスト、またスタジオでは音響エンジニア、フォトグラファーなどマルチメディアクリエーターとして活動中
当記事ではプロのピアニスト、音響エンジニアとしての知識とスキルをシェアしていきます
これまでの録音の道のり

テープレコーダーでの録音期
音楽家としてはサラブレットといっても過言ではない環境で育ったため、生まれた頃からタスカムの12トラックミキサーや、マルチトラックオープンリールレコーダーなどが揃っており、自分の声をサンプラーに入れたりして遊べる環境が整っていました。
祖父母に引き取られたあと、小学校の頃はソニーのテープレコーダー機能付きのポータブルプレーヤーが家にあったので、それで自分のリコーダー演奏などを録音して楽しんでいました。
中学の頃は吹奏楽部だったので、それもまたテープレコーダーに録音したりして、どうすれば割れないように録音ができるかなど一生懸命悩みました。
高校〜大学では本格的に
これは高校時代の筆者の部屋。
懐かしいGMキャピタルトーン、サウンドキャンパスの姿や、YAMAHA REV7, 写真にはありませんが、カメラより後ろには伝説のDX7もありました。
スピーカーは卓の上に乗ってるのがモニター用として使っていたもの。

音大の授業ではMIDIシステムの授業を取っており、その教授の自宅にも押しかけるほど熱心に学んでいました。
ちょうどボコーダー機能がついたKORG R3というシンセサイザーを使っていた時期。
当時のパソコンのスペックは大学に入ってペンティアム4を買ったんだ!
と喜んでいましたから、高校の頃はもっとロースペック機。
といってもこの頃のロースペ、ハイスペの基準なんてもう忘れました。
R3はアナログの12ch卓に入れて、エフェクトも内蔵のものを使わず、あえてYAMAHAのREV7というリバーブにエフェクトセンドで送り、リターン→卓のメインOUTからオーディオインターフェイスに送るという方法を取っていました。
もちろんアナログの音の行方を逐一把握するため。
当時は多くの制作環境がデジタルへ移行していた時期であり、MIDIの授業もすでにソフト内で完結するほどにはなっていました。
シーケンサーとレコーダーを同時に走らせるといった環境はすでになくなっていて、デジタルネイティブ世代でもなければアナログを知らないなんてかなりやばい世代になってしまうんじゃないかという想いでしっかりとアナログを学んだわけです。
そのため、個人的にはアナログの世界は必ず知っておくべきだと考えています。
ダイナミックマイクでバンドネオンの録音
大学を卒業し、ピアニストとしての活動をはじめていたころも、録音に関しての情報収集は欠かせませんでした。
当時は今の五島先生のようなメンター(師匠)がいなかったため、MIDIの教授の家に押しかけたり、レコーディング業者の方にメールで訪ねたりしながら勉強していました。
ちょうど大学の先輩がバンドネオン奏者として活動していたこともあり、ギターの先輩と一緒に家に来てもらって録音テストをさせてもらったこともあります。
もちろん、ジャズピアノトリオも録音しました。
学生の頃はスタジオ借りたりするお金もなく、三点セットのドラムにウッドベースに電子ピアノを6畳マンションの一室にぶち込んで。。。
当時の音源は紛失してしまいましたがいい思い出です。
当時のセットはタプコというメーカーのミキサーに、ダイナミックマイクを4個使ってマルチ録音。
といってもベースはアンバランスケーブルでDIも使わずにミキサーに突っ込んだり、ドラムはモノラルだったり、ピアノは電子ピアノの内蔵DACから直接アンバランスでミキサーに突っ込んで括ったやつをオーディオインターフェイスに記録するといったもう今から考えたらむちゃくちゃなシステムで試行錯誤していました。
2012年に五島先生と出会う
当時フォトグラファーとしても活動していた筆者にとある先輩ボーカリストからアルバムのジャケットを撮ってほしいと依頼されて先輩のアルバム制作のチームに入ります。
そのアルバムがこちら。
その時にこのライブのレコーディングを担当していたのが五島先生でした。
そこからのレコーディング知識の進化はスムーズでした。
ワンポイント録音という方式と初めて出会ったのもこの時。
マルチマイクとワンポイントの交錯する日々
そこから五島先生のタイムマシンレコードでの企画で録音アシスタントをしながら学んでいくわけですが、独立し、現在はKotaro Studio となっている旧・芸術工房Pinocoaでは一時期マルチマイクの実験を繰り返していた時期もありました。
自然界の収録に意識を向ける
写真家:村上宏治氏のしまなみ街道の映像プロジェクトでは自然界の録音を追求するために指向性、無指向性、マルチマイク、ワンポイント、様々なシステムが交錯する日々が続きます。
この頃に自然界の収録のためにどんな思考回路が必要か?
映像と合わせるということや、映像業界からの視点でのオーディオなど様々なことを学びました。

神戸の自宅から朝3時半に出発して早朝6時半に尾道に到着、取材して、宴会して写真スタジオの床で寝て早朝にまた取材して帰宅〜という生活を当時はまだ要支援でしたが、在宅介護と併用しながら行っていました。
これだけ忙しいと身体はハイになっていて、逆に全然しんどいと思ったことはありませんでした。

往復だいたい7時間。
常に衣服には何かしらのマイクがついているような生活でした。
心地よい時間でした。
この年に祖母が心筋梗塞で倒れ、一気に要介護5に進み、本格的な在宅介護生活に入ります。
で、在宅介護(要介護5での在宅介護となれば家族は24時間体制です)が始まったので家でできることを探そう!というわけで、プログラミングの勉強を開始、3ヶ月後には祖母の寝返りのタイミングを別室のLEDランプで点灯して知らせるという簡単な装置を開発。
在宅介護にも使える! / M5STACKで温湿度計を作る5つの手順
祖母が心筋梗塞で運ばれる2日前に株式会社ジオセンスの小林先生にプログラムを教えてほしいとお願いしていたのもなんだかすごいタイミングでした。
もし”人工衛星みちびき”を使ったGPS関連のスキルに興味のある方は是非小林先生の技術ブログもチェックしてみてください。
非常にわかりやすく、詳細に書かれていて多くの方に参考になるかと思います。
クライアントワーク時代
しまなみ街道の映像プロジェクトの頃は同時に音楽制作のクライアントワークなども行なっていたため、システム自体はお客様の要望に合わせる必要があり、なかなか一つに定められずにいました。
ただそのお陰で様々なスタイルの音楽やマイクロフォンを試すいい機会になりました。
当時の仮ミックスの制作部屋がこちら。

これからは自由に音響追求
クライアントワークを想定するのであればワンポイント録音だけで勝負する!
なんて、録音エンジニア側のわがままは通せません。
通せないというよりは到底無理があるでしょう。
それはワンポイント録音の音響自体がまだ世間的には少数派で馴染みがないからです。
しかし近年はNetflixのオリジナル映画、ドラマをはじめとし、映画の音声自体もワンポイント収録する風潮が強まっています。
そのため、遠い未来では、無指向性のワンポイント録音だけでクライアントワークが完了できる時代もくるかもしれません。
せっかくクライアントワークを辞めたんですから、もっと自由にやればいいじゃないか?!
と自分に言い聞かせて、自分自身が本当にいいと感じる音で発信を続けていこうと思います。
ポッドキャストでもやはりどこか一般的な音に整えていきたいという想いが働き、無指向性のステレオにAKGの指向性をミックスしていましたが、今後はもう指向性のピックアップもやめにします。
無指向性ワンポイント録音の魅力
何より夢がある。
そして自分の感性、そして耳との戦い。
まさに自分との戦いです。
音楽を収録するのであれば、時に論理的ではない感覚も駆使し、あえて論理化できるものと混ぜ、感性を載せることができる。
自然界の収録であればありのままを。
そして距離だけで自然を感じたい。
アナログミキサー時代から様々なスタイルに悩んできましたが、最終的に落ち着いたのがZOOM F3と無指向性マイクロフォンのAB方式ワンポイント録音スタイル。
現在のメイン機材リスト
マイクアンプ&レコーダー
ZOOM F3
これまで様々なフィールドレコーダーを使ってきましたが、F6がダントツでNO1でした。
それを軽々超えてきたのがF3。
もちろんF6はVRマイクや、ステレオペアを3組レコーディングできるので、また別物であり、それぞれしっかり棲み分けられています。
ただ、F3はヘッドホンアンプ、マイクアンプは確実に進化していて、同じ性能でF6のチャンネル数を持つとなると、F6の価格の倍はしてしまうでしょう。
2chでいい。
2chのワンポイントこそ至高・・・とそんな強いZOOMの想いも感じられます。
ZOOMのサウンド作りはいかにシンプルを追求するのか?
というニュアンスがしっかりと感じられます。
ZOOM ( ズーム ) / F3 Field Recorderこれに加えて最近はサウンドデバイスのマイクアンプを使ったりしています。
【マイクアンプ比較テスト】Sound Devices のマイクアンプを試す
自然界、屋外での録音用モニター
IE100PRO Wireless Clear ワイヤレスイヤホン
IE100PRO Wireless Clear ワイヤレスイヤホンこれは無指向性マイクの素子をバイノーラルタイプにするため、イヤホンに素子をくっつける一種のマイクスタンドとしての使用です。
決して音がいいから使っているわけではありません。
音楽収録用のモニターヘッドホン
音楽収録では、オーストリアンオーディオのHI-X15 密閉型ヘッドホンを使います。
Hi-X15 密閉型ヘッドホンOC18とHI-X15 密閉型ヘッドホンの音を聴いて AUSTRIAN AUDIOについて語っていく
ただしおすすめはゼンハイザーのHD25です。
HD25 密閉型モニターヘッドホン無指向性マイクしか使わないのであれば、HI-X15 密閉型ヘッドホンがおすすめ。
筆者はそういう理由で音楽収録にはHI-X15 密閉型ヘッドホンを使います。
HI-X15 密閉型ヘッドホンの方がリバーブ、ディレイ感は非常に繊細に掴みやすいわけです。
ホールやアコースティック収録の際無指向性マイクの要は反響音をどう処理するか。
このあたりは、HD25よりもHI-X15 密閉型ヘッドホンの方が優位性が高いです。
総合得点でダントツなのがHD25。
無指向性しか使わないのであればHI-X15 密閉型ヘッドホンもGOODという認識でOKです。
マイクロフォン
マイクロフォンはEM158。
五島先生に制作をお願いしているプリモの素子です。
この素子は本当に素晴らしい素子で、DPAとゼンハイザーのいいところだけをとったようなニュアンス。
最高クラスかと思います。
市販品枠としてはまだ試行錯誤していますが、五島先生から借りているDPA4060の素子とZOOM F3の相性がよければ同じ素子を使っているDPA4560を導入します。
【F3 + DPA4560】バイノーラルの最高峰セットを考える
それ以外で検討中なのはMKH8020。
【このマイク、凄いです】SENNHEISER MKH8040, MKH8020を徹底分析
今のところはこの二択で検討中。
苦難の録音道を歩んできて五島先生によって開かれた筆者の録音人生。
無指向性のワンポイント録音に夢を詰め込んで再出発といきたいところであります。
では。
プロフィール

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音大を卒業後ピアニストとして活動。
日本で活動後北欧スウェーデンへ。
アーティストLindha Kallerdahlと声帯とピアノによる即興哲学を研究。
その後ドイツ・ケルンに渡りAchim Tangと共にアルバム作品制作。
帰国後、金田式DC録音の第一人者:五島昭彦氏のスタジオ「タイムマシンレコード」にアシスタントとして弟子入り。
独立後音楽レーベル「芸術工房Pinocoa(現:Kotaro Studio)」を結成。
タンゴやクラシックなどアコースティック音楽作品を多数プロデュース。
大阪ベンチャー研究会にて『芸術家皆起業論~変化する社会の中、芸術家で在り続けるために』を講演。
その後、秋山庄太郎氏後継の写真スタジオ「村上アーカイブス」でサウンドデザイナー兼音響担当として映像制作チームに参加。
村上宏治氏の元で本格的に写真、映像技術を学ぶ。
祖父母の在宅介護をきっかけにプログラムの世界に興味を持ち、株式会社 ジオセンスの代表取締役社長:小林一英氏よりプログラムを学ぶ。
現在はKotaro Studioにて『あなたのためのアートスタジオ』音と絵をテーマに芸術家として活動中。
2023年より誰かのための癒しの場所『Curanz Sounds』をプロデュース。
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