【金田式DCマイク】 ショップス MK2, DPA2006カプセルで実験レポート:マイクに対する考え方
この記事の目次
今回の記事では筆者がピアニストとして、金田明彦氏の金田式電流伝送DC録音でテストした収録の模様を3つの現場からご紹介。
当サイトの金田式DC録音は金田明彦氏が直々に制作したものを当サイトの音響顧問でもある五島昭彦氏が使用するものになります。
金田式DC録音の試聴
五島昭彦氏が録音する他の金田式DC録音の試聴は、当サイトの関連サイト「タイムマシンレコード(旧:オーディオアカデミー)」でご用意しています。
是非時空を超えた音楽体験をしてみてください。
朝比奈 幸太郎
卒業後ピアニストとして関西を中心に活動。
インプロビゼーション研究のため北欧スウェーデンへ。
ドイツ・ケルンにて Achim Tang と共同作品を制作&リリース。
ドイツで Stephan Desire、日本で金田式DC録音の五島昭彦氏から音響学を学ぶ。
帰国後、録音エンジニアとして独立し、プロデューサーとして芸術工房 Pinocoa を結成。
ドイツ、アルゼンチンをはじめ国内外のアーティストをプロデュース。
株式会社ジオセンスの小林一英氏よりC言語・GPS技術を学び、村上アーカイブスの村上浩治氏より写真と映像を学ぶ。
2023年よりヒーリング音響を研究する Curanz Sounds を立ち上げ、世界中に愛と調和の周波数を発信中。
2025年より神戸から北海道へ移住!
音の質感と空間にこだわり、デジタルとアナログの境界線を探求しています。
この記事のテストと監修〜録音エンジニア:五島昭彦
学生時代に金田明彦氏に弟子入り。
ワンポイント録音の魅力に取り憑かれ、Panasonic半導体部門を経て、退職後金田式DC録音の専門スタジオ:タイムマシンレコードを設立。
ジャズは北欧系アーティストを中心に様々な美しい旋律を録音。
クラシック関係は国内外の様々なアーティストのレコーディングを担当しており、民族音楽にも精通。
現在は金田式DC録音のDSDレコーディングを中心にアコースティック楽器の収録を軸に活動中。
世界で唯一、金田明彦氏直系の弟子であり、金田明彦氏自らが手がけた金田式DC録音システムを使用している。
チェックポイント
マイクロフォンカプセルはSCHOEPS MK2(無指向性)を中心に進めていきます。
現在このMK2カプセルは単体だとサウンドハウスさんでは見つからず、システム5さんでお取り寄せとなっています。
現状だとMK5が指向性と無指向性を切り替えられるようになっており、大変魅力的。

単一指向性しか使わないのであればMK4になります。
SCHOEPS ( ショップス ) / Stereo Set MK 4 をサウンドハウスで見てみるMK2はもちろんなんですが、MK4の弦楽器の引っ掛かる感触っていうのはもう他のマイクカプセルでは基本的にも応用的にもありえないと思います。
個人的には弦楽器録音なら間違いなくショップス、そして現場状況によって変わりますが、指向性のMK4はかなりおすすめです。
【永久保存版】プロが選ぶ本物の最高級マイク6選同時にDPAの中でもカプセル交換ができるタイプであるDPA2006のカプセル。
こちらも無指向性マイクですが、同時録音しているトラックが複数あります。

ポイント
DPA2006は4006の半値以下で購入できます。
全体のクオリティーは4006には及ばないところはありますが、音の特徴はしっかりと棲み分けられており、決してただ安いだけではない素晴らしいマイクです。
こちらのYoutube動画では、2006カプセルと、YAMAHA MG-06, DA3000の組み合わせで音声収録してみています。
MG-06は私と五島先生で見つけた異次元コスパのマイクアンプ。
バッテリーで駆動すればトランスレスマイクアンプとして値段からは考えられない性能を見せてくれます。
金田式DC録音の音
ここからサンプルを聞いてみてください。
実験自体は無線と実験の金田式電流伝送の100m以上のノイズ耐性テストとなっており、詳しくは無線と実験をご覧ください。
- 録音は金田明彦氏公認の金田式DC録音後継者:五島昭彦氏
- 演奏は筆者:朝比奈幸太郎
- 掲載音源はサウンドクラウドは48khz、他はmp3に圧縮されています
- すべての音源はラウドネスやEQ等の処理は行わず、ノーマライズ処理のみ

津山市エスパスホール
テスト環境としては非常にシンプル。
津山エスパスホール、グランドピアノ、DCマイクロフォン、私。
津山市のピアノ工房アムズ、故:松岡一夫氏の調律で行われたテストでした。

このチームでは2013年に象牙のSteinway B型を使って、noumenonを制作しています。
松岡一夫氏は若くして亡くなってしまいましたが、こうやって高い録音レベルで彼のスキルを未来に残せることを誇りに思います。
noumenonの制作はピアノ工房アムズのスタジオで行いました。
録音自体はDPA4006のみとなっており、サウンドデバイスの702Tで録音しています。
シンプルな無指向性ステレオペア録音としては本当に素晴らしい音響になっています。
こちらの朝比奈幸太郎公式サイトの作品集のページで全曲試聴できるようになっています。
朝比奈幸太郎ピアノ作品現場の様子
Steinway Dを使ったエスパスホールでのテストはホールを貸切でセッティング。

こんな感じで天釣り用の機材を下に降ろして金田式DCマイクをセットしていきます。

音源試聴
プログレ全盛期世代には懐かしいキングクリムゾンのムーンチャイルド。
テーマ部分は著作権上アップロードできませんので、ピアノアレンジインプロソロ部分の抜粋ということでご試聴ください。
サウンドクラウドのものは48khzとなっています。
ドローンの空撮映像のBGM用に作曲した筆者のオリジナル。
MP3に圧縮されていますが、金田式ならではの音以外の概念も録音するといったニュアンスは十分に伝わるのではないでしょうか。







こちらが今回のテストで使用したショップスMK2カプセルの金田式DCマイク。
最初期のDCマイクはこちらの書籍でチェックすることが可能です。
五島昭彦氏は、この最初期のDCマイク時代から金田式DCマイクを知っているわけですから、金田式の長い歴史と叡智を感じることができます。

調律師の松岡さんと筆者は飲み仲間で、この日もステージで五島さんがマイクセッティングしている間今晩のお酒、宴会についてのトークで盛り上がっていました。
これはだいたいどの現場でも同じ。
調律で詰めまくったあとは宴会の話題です。
懐かしい。
神戸市灘区民ホールでのテスト

灘区民ホール津山エスパスホールから数日後に今度は筆者の地元神戸市にて灘区民ホールを貸切で収録。
一度ホールのPAルームを経由した100m以上の電流伝送実験です。
日本製KAWAIのフルコンサートグランドピアノです。
カワイのピアノは硬くて純和風の音の出方がしますので、津山市のスタイウェイとの比較としては最高かと思います。
ピアニストあるあるかもしれませんが、カワイのピアノが好きな人は椅子の位置が高い。。。と思いませんか?
音源試聴
初期の作品
まずは21歳、学生時代にピアノトリオ用に作曲した『ゴブリンの誘惑』という曲。
シンプルな構成に見えて複雑に絡み合う和声が特徴です。
上記はソロバージョンですが、ピアノトリオ版はこちら。
次にとあるドキュメンタリー映像作品のためのオリジナルのBGM、映像的短編集-2。

現場の様子とマイクの位置
ホールの貸切って気持ちいいですよね。
釣りマイクの位置に関しても細かく検証できました。
釣りマイクでのピアノ収録の位置に関しては非常に難しく、客席ギリギリまで落としてようやく理想の位置になるような感覚。
本番収録の場合は、ここまで下ろすことはできませんから、なるほど他のマイクセッティングなどを組み合わせながら収録する必要があります。
ピアノの場合は本番であってもバウンダリーマイクでかなりの水準まで追い込めることがわかっていますから、釣りマイクなのか?バウンダリーなのか?演奏者のタッチに応じて変えていくことが必要になります。


デジタル記録部分はSound Devices 702T。
現在は廃盤となっているSound Devices 702Tはマイクアンプも非常に優秀なレコーダーですが、今回は金田式のテストですので、デジタルイン部分、記録用のみ使用です。
702Tの後発ではHDD搭載モデルもあります。
どちらも非常に優れたマイクアンプを持っていますよね。
モニターヘッドホンはもちろん、ゼンハイザーのHD25。
本当にシンプルなセッティング。

ワンポイント録音のため、接続は極めてシンプルです。
駆動はもちろんすべてバッテリー。
この日のテストは収録場所が近く、いったりきたりしながらのテスト。

神戸市ジャズライブハウス:ボーンフリーでのテスト

こちらは調律師の鈴木優子氏とのチームで検証。
筆者は鈴木優子氏とアルバム制作はしたことはありませんでしたが、ピアニスト時代関西でのライブでは鈴木優子氏の調律にお世話になっておりました。
特に1907年製のプレイエルでコンサートしたときには確か4時間ほど微調整に付き合ってもらいながら、調律していただき、大変お世話になった調律師です。
今回の音源は少ないですが、YAMAHA C3を使用しています。
ジャズライブハウスですので、ホールに比べると非常にデッドな環境。
音源試聴
現場の様子


この日は全く同じ位置でDPA2006と無指向性素子のWM-61Aをセットしてのテスト。
写真には写っていませんが、別の位置でDPA4006もセットしています。
参考までに筆者の手持ちセットだったZOOM F4とKM184の組み合わせも音源がありますので、記録として掲載しておきます。

KM184に関しては、オンマイク寄りで収録するというイメージでしたが、この日は五島昭彦氏のアドバイスに従ってオフマイクで収録しています。
写真右上のマイクがKM184。
184に関してはピアノ収録でいろんな位置関係のサンプルを掲載した記事があるのでそちらをご覧ください。
【NEUMANN KM 184】各マイク位置でのピアノ音源テストや比較なども!
ピアノ工房アムズでのテスト録音
ピアノ工房アムズでは冒頭のエスパスホールでもお世話になった調律師の松岡一夫氏全面強力で行われました。
こちらはまた別の企画で、金田式アナログバランス電流伝送DC録音のテストです。
Revox B77を使ってのテスト。
この頃はまだ筆者はB77のレストア技術を持っていなかったため、半分故障しているB77で録音。
38cmがうまく回らずに19cmでのテストとなりました。
現在はタイムマシンレコードでRevox B77のレストア技術の記事を一部で公開しております。
Revoxレストア技術現在であれば38cmが回らない理由と、キャプスタンスピードコントロール基盤のキャリブレーション方法などを理解していますので、簡単に直せた・・・と思うと、勿体無い限りであり、やはり一期一会の録音現場、常に最高音質で残しておくことの大切さを痛感します。
現場の様子
掲載音源は少なめですが、現場での収録の様子を収めた映像があるので掲載します。
筆者は五島昭彦氏とアムズに何度も通い、松岡一夫氏と交流を深めてきましたが、レコーディングでもお仕事でも、どんな時でも必ず打ち上げがあり、夜は宴会に発展します。
時にはアムズの森でBBQ、鉄板焼き、などなど。
この日も調律が終わると、松岡氏は街に買い出しにGOしていますので映像には映っていません。
アムズのピアノショールームはまた特別な響きの場所で、ピアノの管理のために温度や湿度などは厳格に管理されています。
音源試聴
マイクに対する考え方
音を聴くというのは同時に観ることでもあると常々感じます。
人間は音を聴いて、そしてちゃんと見ている。
これは視力に関しては目の前のものを認識するけれど、聴力に関しては脳に到達したときに映像や絵を脳が再構築しているようなそんなニュアンスがあるのが伝わるでしょうか。
写真ではよくシークエンスを撮る、画角じゃなくて、状況を撮るといいます。
そこにストーリーはもちろん発生しますし、前後のストーリーは収めることができますが、やっぱりフレームという枠でリミットがあることは事実。
もちろんそのリミットがあるからこその世界観はありますが、音に関してはもっと違う見方をすることができます。
金田式DCマイクの場合は、その状況の場の空気感、さらには空気感という言葉では表せない人間の感情が入り組んだ状況を一緒に録音しているという表現が適切で、他に言語化する良い言葉が見つからないというのが正直なところ。
そこにいる人たちの感情、何を想い、何を感じているのか。
実際にこのテスト自体は2017年頃に実施され、5年程度の時を経て今リライトしており、さらに2026年に細かいところをリライト、思い出しています。
やはり他の録音とは違って、金田式DCマイクの録音音源はその時に感じていたことや、考えていたこと、筆者(演奏者自身)の思考回路などが鮮明に蘇り、明らかに音だけではない何かがそこに存在している様子が伺えます。
金田明彦氏の書籍にあるように、まさに時空を超えた録音が実現しているのです。
この時空を超えた録音世界は、EQとか、ノイズとか、リバーブがどうのこうのとか、そういうなんか細かいことってどーでもよかったりします。
声や音に感情が乗る、そしてその感情ごとマイクを揺らしているかどうか?
たったそれだけなんじゃないか?
金田式DCマイクはやっぱり、ただそこに存在しているだけ、そしてシンプルに感情とともに共鳴してくれる。
21世紀に入って世界や社会からいろんな意味でノイズを消すことに執念を燃やす傾向が人類全体に感じます。
それはまるで漂白剤の世界と表現する人もいるでしょうし、筆者もそんな窮屈さを感じることが多々あります。
音にしてもそう、演奏家が興奮余って舞台で足踏みをした・・・ことをノイズだといい、消してほしいプロデューサーもいますし、それを味であると定義し、音楽の一部だと考える人もいます。
どちらがいいとかじゃないけれど、Kotaro Studioは後者、そして金田式DCマイクで録音するほとんどすべての人も後者なんじゃないかと予想しています。
前者のような意味でノイズを消していき、行き着く先の最後に残った波形にはもう感情なんて残ってないんじゃない?という感覚。
そういう録音はマイクロフォンが誕生した歴史を考えても本末転倒になってしまうんじゃないか?と感じるわけです。
2026年時点でいえば、それはもう音楽生成AIでいいんじゃないか?ということ。
でもやっぱりマイクロフォンを使って、人が演奏し、人が聴き、人が録る。
そこはノイズが消されたシステマチックな世界からは決して見えないアートの世界なんです。
アーティストはもっとありのままでいい。
ノイズだらけでいい。
壊れていたっていい。
ピアニストやミュージシャンが『演奏終わってからの打ち上げの酒』を考えながら演奏したものもいい。
ボーカリストが歌ってる最中に悲しくなって下向いちゃったっていいじゃない。
金田式DCマイクを通して音を聴いていると、まるで金田明彦氏がそんな哲学を語りかけてくれるような気がします。
そこに良い音とか、悪い音とか、抜けが良いとか悪いとか、そういう次元では語られることのない哲学があって、人間の純粋な面、汚い面、いやらしい面、すべてが金田式DCマイクと共鳴して乗る。
こんな理想的な録音、マイクロフォンは他にないなと思うわけです。
マイクロフォンとは、音楽とは、音を録るとはなにか?そんなテストになったのではないでしょうか。
収録から約5年して改めて感じた想いを綴ってみました。
1/20の価格で持ち歩く。
- ● 世界最高峰の解像度
- ● 絶対的なリファレンス
- ▲ 要:厳重な管理と電源
- ● MK2に肉薄する空気感
- ● ポケットに入る機動性
- ● プラグインパワーで即録音
この記事を書いた人:朝比奈 幸太郎
音大卒業後ピアニストとして活動後、渡独。
帰国後タイムマシンレコード・五島昭彦氏に師事し、究極のアナログ録音「金田式DC録音」の技術を継承。
Revox等のヴィンテージ機材のレストア技術を持ち、マイク、アンプ、スピーカーに至るまでシステムを根底から自作・設計する録音エンジニア。
物理特性と芸術性が融合する「本物の音」を追求・発信している。
