【音響の王者】愛しきDPAのマイクロフォン特集

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簡易紹介:こうたろう

1986年生まれ
音大卒業後日本、スウェーデン、ドイツにて音楽活動
その後金田式DC録音のスタジオに弟子入り
写真・映像スタジオで音響担当を経験し、写真を学ぶ
現在はヒーリングサウンド専門のピアニスト、またスタジオでは音響エンジニア、フォトグラファーなどマルチメディアクリエーターとして活動中
当記事ではプロのピアニスト、音響エンジニアとしての知識とスキルをシェアしていきます

ヒーリング音響専門ブランド

DPAの魅力

DPA Microphones 、旧:Danish Pro Audioは1992年、ブリュエル・ケアー社(Brüel & Kjær、B&K)元従業員のMorten StoveとOle Brosted Sorensenによって設立されたデンマークの企業です。

アメリカの投資会社The Riverside Companyが所有しています。

多国籍企業であるBrüel & Kjærのプロオーディオ部門を引き継ぐ形で誕生しました。

1995年に後に有名になるDPA 4060および4061のミニチュアマイクを共同開発。

4060と4061はすぐにニューヨークのブロードウェイやロンドンのウエストエンドで、劇場用マイクとして広まりました。

本社はデンマークのAllerødにあり、生産工場はデンマークのAsnæsにある。

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2022年現在のCEOはKalle Hvidtさんです。

ミニチュアマイクロフォンの世界を切り開いたDPAの音はBrüel & Kjær由来の測定用音響のDNAを受け継いでおり、非常に透明感があり、正確な音場を捉えるマイクとして確固たる地位を築き上げました。

特にアコースティック録音、とりわけクラシック音楽の録音には多くのエンジニアが優先的な選択肢としてDPAの名前を挙げます。

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無色透明な無指向性マイクのはずですが、各マイクロフォンにそれぞれキャラクターがしっかりあって、透明感という要素がしっかりとそこにある、そんなマイクなんです。

DPAが得意なジャンル

DPAが得意なジャンルは主にアコースティック音楽になりますが、その中でも特に次の3つのジャンルが最高にマッチします。

  1. 合唱&コーラス
  2. アコースティック西洋古典
  3. グランドピアノ

合唱との相性は白眉で、声の透明感を捉える力は奏者の想い、感情までを載せて録音できるマイク。

合唱の録音でDPA以外の選択肢を取るというのはそれなりの特別なコンセプトがある場合であると思います。

合唱のサンプル音源は五島昭彦先生が録音した『うたはいつもそこにいて』という作品がすべてを物語ってくれます。

サウンドデバイスの702Tという伝説の名機と言えるマイクアンプを使っており、ピアノは補助マイクとしてDPA4060を使用。

DPAマニア向けの逸品となります。

アコースティック西洋古典作品も弦楽器をふんだんに使った作品よりも声楽系の作品と非常に相性がいいと思います。

ペンシル型無指向性マイクに共通する点でもあるかと思いますが、教会のような上から降り注ぐスタイルの音楽に関してはもう最高のクオリティーを見せてくれます。

ピアノ録音に関しては多様な選択肢から音を創り上げていくべきであるとは思いますが、やはりDPA4006でのサウンドはとてつもないオーラを纏います。

こちらも五島昭彦先生が録音、調律師は親友だった故:松岡一夫氏、そしてピアノは筆者が担当しているトリオ作品であると思っているピアノソロ作品があります。

ポイントこちらはサウンドデバイスのマイクアンプADCを使った完全なワンポイント録音作品になります。
現代では新規で輸入することは不可能な象牙鍵盤のスタイウェイB型。
スタイウェイやベヒシュタインの認定調律師だった松岡一夫氏の調律技術がいかにとんでもないレベルであったのか・・・DPAがしっかりと”今”に残してくれていることに至上の喜びと感謝を感じます。

一生一度は使いたいDPAマイク

そんなDPAマイクですが、各種様々なモデルが発売されています。

一本一本本当に丁寧に仕上げられている芸術作品です。

DPA4006

やっぱり王者4006を最初に紹介していきます。

ST4006A ステレオペアをサウンドハウスでチェック

どっからどう考えても無指向性の王者。

ショップスも無指向性マイクを出していますが、ショップスは指向性タイプのカプセルの方がマッチします。

そういう意味では本当の無指向性王者がDPA4006と言えるんじゃないでしょうか。

ST4006A ステレオペアをサウンドハウスでチェック

以前五島先生とDPA4006と他の無指向性マイクを比較した音源を録音したことがあります。

ブラインドで聴けるようになっていますので、マイクロフォンA,B,C,Dそれぞれ聴き比べてみてください。

DPA4006だけダントツで抜けているのがわかると思います。

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ちなみにこの時はヤマハのCF3を使っており、筆者が大好きなレパートリー、チャールズ・ミンガスの『直立猿人』をピアノソロアレンジでカバーしました。

先述したピアノソロ作品も4006ですが、これを超えられる無指向性マイクというのは今のところ考えられません。

ちょっとグダグダの回になっちゃってますが、こちらのポッドキャストは贅沢に4006を使っています。

DPA4011

ST4011Aステレオペアをサウンドハウスでチェック

4006と同じペンシルタイプでの単一指向性型のマイクロフォン。

DPAといえば無指向性マイクのイメージですが、この4011もすごい。

こちらは筆者は使ったことのない憧れのマイクですが、Youtubeなどのサンプルを聴いていても本当に痺れます。

こちらはヒーリング業界では定番になりつつある21世紀に誕生したハングドラムという楽器。

ハングドラムとの相性は筆者も最高だろうなと思っていましたが、さすが、音楽家はみんな考えることは同じですね。

さすがにバイオリンのソロはショップスの方が上。

これは事実だから仕方ない。

しかし、ピアノや声楽系オーケストラそして合唱などのDPAと相性のいい音楽に加えて弦楽器もショップスに迫る勢いで録音ができるという意味では総合得点としてショップスと対等です。

最高峰をお手軽価格で!

4006や4011は個人で録音の受注もなしに導入するには少々ハードルが高すぎるお値段になっています。

そこで、これらのマイクの廉価版という位置付けのシリーズがあります。

DPA2006

DPA ST2006A ステレオペア をサウンドハウスでチェック

こちらは4006の廉価版的な位置付けの2006A。

DPA2006は金田式DC録音の初期型のテストで何度も録音してもらっているのでよく知っています。

4006よりも随分安く買えますが、4006に迫る勢い。

すごく厳密にいうと、コーラスなどの録音では低域の抜けがあっさりしすぎている印象があり、低域と中域の切り替わりのグラデーションが荒い印象があります。

もちろんかなりプロ目線でのお話。

4006と同じレベルじゃあ4006買った人が報われない。

そんなマイクです。

DPA ST2006A ステレオペア をサウンドハウスでチェック
ポイントMMP-A プリアンプを組み合わせたマイクロホンで上位機種である「4000」シリーズのカプセル(別売)と交換してマイクロホンのアップグレードも可能なモデルです。
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カプセル交換はできませんが、より軽量でコンパクトなCタイプもあります。

DPA ST2006C ステレオペア をサウンドハウスでチェック

DPA2011

DPA ST2011A ステレオペア をサウンドハウスでチェック

こちらも名称の通り、4011の廉価版モデルとなります。

DPA ST2011A ステレオペア をサウンドハウスでチェック

こちらも2011Cという交換できないモデルがあります。

DPA ST2011C ステレオペア をサウンドハウスでチェック

AタイプとCタイプの選び方

これらの廉価版シリーズはカメラで例えるとフルサイズのレンズ一本分くらいの感覚ですので導入のハードルは一気に下がります。

とはいえ高級マイクのラインになりますので、カプセル交換ができるAタイプにするのか、より、軽量でコンパクトなCタイプにするのか慎重に検討しましょう。

MMP-Aなどのプリアンプに各種カプセルを揃えるとなると機材コストもかなりかかってくるのと、カメラで言うところのマウント縛りのような状態でDPAに骨を埋める覚悟が必要になってきます。

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DPAは確かに素晴らしいマイクロフォンメーカーですが、ショップスやノイマンなど他にも優秀で気になるメーカーがあるのであればなおさら慎重な検討が必要です。
音の好みもやっぱり変わりますので、オーディオ製品もリセールバリューをしっかり考慮する必要があります。
その場合はカプセルやプリアンプをバラバラに整理するよりもCタイプの方がリセールバリューは高いです。

DPAの真骨頂ミニチュアマイク

DPA4060はDPAを代表するミニチュアマイクです。

小型ですが、とんでもないマイクです。

ただし弱点がありますので、シェアしていきます。

DPA4060

DPA4060をサウンドハウスでチェック

五島昭彦氏の録音作品リスト

こちらの録音作品リストでもシェアしていますが、五島先生はDPA4060をバウンダリーマイクとして使用することが多いです。

こちらはお馴染みSound Devices 702Tを使っています、4060のステレオワンポイント録音。

これだけで4060がどれだけすごいマイクか伝わります。

DPA4060をサウンドハウスでチェック

ただし、弱点というか、実際に使ってみて弱点に感じる点が3つあります。

  1. MicroDotコネクターである。
  2. ケーブルが細くて怖い。
  3. 他の無指向性マイクに浮気したくなる。

MicroDotコネクターは良し悪しで、MicroDotコネクターだからこそ、ワイヤレスシステム化することができ、舞台や役者の仕込みマイクとしてもより一層使いやすくなります。

ただし、音楽スタジオでのセッション収録などをする場合はワイヤレスにする必要はありませんから、MicroDotコネクターにイラッとすることもあります。

加えてケーブルが細くて断線リスクが高い点が挙げられます。

4006や4011のようなペンシルボディタイプですとケーブルの替えはいくらでも効きますが、4060のケーブルが断線すると基本的には入院です。

また、例えばカントリーマンのBシリーズなどDPA4060の後発ミニチュアマイクロフォンなどの性能も非常に高いため、より安価なミニチュア無指向性マイクに浮気したくなるのが難点。

【コスパ最高】 COUNTRYMAN ( カントリーマン ) / B3 を無指向性ペアマイクとして試してみて!

ポイント実際にカントリーマンのB3マイクなどはDPA4060と比較しても値段ほどの大差は感じないこともあり、舞台・ドラマ用マイクとしてはより安価なB3の方が需要は高まっているのは現実だと思います。

もちろん突き詰めてマイクセッティングすればDPA4060の優位性を発揮できます。

弱点は弱点としてしっかりシェアしておきます。

バウンダリーマウント

 DPA ( ディーピーエー ) / BLM6000-B をサウンドハウスでチェック

4060や後述する6060、カントリーマンのBシリーズなどのラベリアマイクと呼ばれるミニチュアのマイクロフォンをバウンダリーにマウントするにはこちらのようなバウンダリーマウンターを使用します。

DPA ( ディーピーエー ) / BLM6000-B をサウンドハウスでチェック
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ただしめちゃくちゃ要注意してください。
舞台の録音などの場合は音響さんというのは一つのパートに過ぎません。
大道具さん、映像さん、照明さん含めて実に様々な業界の人が出入りしており、舞台セッティングでは舞台を駆けずり回ります。
バウンダリーマウントを使用するとそれはそれは簡単に、そして頻繁に踏まれます。
まず誰かに踏まれると思っておいて問題ありません。
そのためセッティングには非常に気を遣いますし、本番中でも事故にならないように、プロデューサーの方と入念な打ち合わせの上、役者のコンテなどで立ち位置を随時把握しながらセッティングしなければいけません。

DPA6060

DPA6060をサウンドハウスでチェック

4060の弱点である耐久性への不安を解消してくれた後継機種となるのが6060です。

DPA6060をサウンドハウスでチェック

4060とケーブルの直径は同じですが、ケプラー素材を使用しており、高い耐久性が期待できます。

ポイント筆者は現在スピーカーを使ったマスタリングなどはしませんが、ケプラーコーンを採用したスピーカーは素晴らしい音を鳴らしてくれます。
KRKのケプラースピーカーなんかはもちろんアンプ次第ですが、とんでもない感動を体験できます。

さらに、マイク本体は撥水性ナノコーティング、アンプ部にはハーメチック・シーリング加工を施しており、IP58規格に適合する高い耐久性を獲得しました。

  1. 防塵5級:有害な影響が発生するほどの粉塵が内部に入らない
  2. 防水8級:継続的に水没しても内部に浸水しない

これは安心です。

ヘッドセットもDPA

ヘッドセットは旧機種や後継機種など型番がややこしいので追って特集記事としたいのと、ワイヤレスシステムなどを考慮すると、一概にサウンドハウスさんでの購入がベストというわけではないので、商品だけシェアします。

楽器屋さんなどでも在庫ありとなっている同名(同名っぽい)の機種でも実は旧機種だったというのもありますので、在庫があるからと飛び付かないように注意してください。

CORE 4088

DPA日本正規代理店の公式ページ

CORE 4488

DPA日本正規代理店の公式ページ

このあたりになってくると、舞台だと役者がつけていてもわかりません。

コンテと立ち位置によっては仕込みマイクじゃなくてヘッドセットでOKなんてことも多々あるかと思います。

音楽ライブなんかはマイクパフォーマンスが必要なためジャンルによっては厳しいかもしれませんが、ダイナミックレンジの狭いジャンルの歌だったり、講演会なんかでは最高級の音でお届けできます。

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ライブパフォーマンスにはこちらのハンドタイプのマイクを選択しましょう!

まとめ

DPAはデンマークの多国籍企業であるBrüel & Kjærのプロオーディオ部門が独立してできたブランドです。

Brüel & Kjær自体が測定音響や測定用のマイクの開発企業だったこともあり、色付けされていない透明感のある音が特徴。

ここを悪く言ってみれば個性の少ないマイクという見方になります。

DPAの芸術的な側面に価値を感じる方であれば一生に一度は使ってみたいメーカーになりますし、マイクロフォンにそういうところは求めていない場合はゼンハイザーやノイマンがいいかと思います。

カメラでいうと、DPAはライカ的な存在なのかもしれません。

高い。

高いから高画質というわけじゃない。

でも芸術的価値がそこにあるからわざわざ選択する。

そんな感覚でしょうか。

DPAの本質はそんな物理次元を超越したところにあるのかもしれません。

みなさんの参考になれば幸いです。