【金田式DCマイクの録音をDSDで残す喜び】オーディオの夢、その先へ

最終更新日

音楽家の朝比奈幸太郎です。
この記事は2025年11月23日にリライトしています。

朝比奈 幸太郎
MUSICIAN & RECORDING ENGINEER

朝比奈 幸太郎

音楽大学で民族音楽を研究。
卒業後ピアニストとして関西を中心に活動。
インプロビゼーション研究のため北欧スウェーデンへ。
ドイツ・ケルンにて Achim Tang と共同作品を制作&リリース。
ドイツで Stephan Desire、日本で金田式DC録音の五島昭彦氏から音響学を学ぶ。
帰国後、録音エンジニアとして独立し、プロデューサーとして芸術工房 Pinocoa を結成。
ドイツ、アルゼンチンをはじめ国内外のアーティストをプロデュース。
株式会社ジオセンスの小林一英氏よりC言語・GPS技術を学び、村上アーカイブスの村上浩治氏より写真と映像を学ぶ。
2023年よりヒーリング音響を研究する Curanz Sounds を立ち上げ、世界中に愛と調和の周波数を発信中。
2025年より神戸から北海道へ移住!
音の質感と空間にこだわり、デジタルとアナログの境界線を探求しています。

本日は金田式DCマイクのおはなし。

先日筆者の音響の師匠である金田式DC録音の五島昭彦氏(五島氏のタイムマシンレコードは世界で唯一金田式DC録音での音楽レーベルとし活動)とおはなしをさせていただき、金田式DCD録音システムについて聞かせていただきました。

2025年11月23日にリライトしていますが、現在は、五島先生から様々なオーディオの学びをいただいており、自身のプロジェクトとしてもRevoxo B77の修復が完了し、これからもっともっと、オーディオの神様:金田明彦氏の叡智を学び、次世代へと繋げていきたい、そして、その架け橋となれるような音楽家へと成長していくという使命を大切に活動していきたいと思います。

まずは、2025年11月に五島昭彦氏の監修でテストした、アナログとデジタルの比較動画がありますので、もしアナログを全く知らない世代の方がこの動画を見ていたら是非アナログオーディオの凄さ、そしてアナログ音源はPablo Recordsのベイシーオーケストラ、DENONの名機DL103MCカートリッジでRevox A77のオリジナルアンプで録音、Revox B77の再生ヘッドから直接金田式アナログバランス電流伝送録音再生システムの再生アンプに直結し、再生。

無線と実験2018年10月号から掲載のDCアンプシリーズ No, 261 {アナログバランス電流伝送録音再生システム}をタイムマシンレコードの録音エンジニア:五島昭彦氏のセッティングで再生していますので、金田式DCアンプのパワーを少しですが体験してもらいたいと願っています。

本当は金田式DC録音したアナログ音源を掲載したかったのですが、演奏者との権利の関係でベイシーになっています。

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0:00 Revox B77
1:38 DSD
2:17 Revox B77
2:57 DSD
3:57 Revox B77
4:52 DSD
5:33 Revox B77

DDCの意味

きっかけは筆者のDDCに対する素朴な疑問からでした。

素朴な疑問とは、DDCそのものの存在意義について、そして、変換自体は形状変換であるハードに依存するものだけか?というもの。

DDCは光デジタル(TOSLINK)から同軸デジタル(S/PDIF)への変換や、USBからのデジタル信号を伝達する手段を変換するためにもの。

一般的には形状変換、つまりハードだけ意識していればいいそうで、プロトコル変換もされるファームウェア的存在という認識で問題ないそうです。

このプロトコルというのは実はもともとは人間同士のコミュニケーションのために用語なんです。

そもそもは、手順という意味だけではなく、複数間におけるコミュニケーション言語、ルール、考え方、などをまとめて示す言葉であり、ある特定のグループでこれらが一致することを「プロトコルの一致」といい使われていたのが、戦後コンピューター用語になったというわけです。

古代ギリシャが語源

古代ギリシアでパピルスで作られた巻物の最初の1枚目を英: protokollon(古希: πρωτόκολλον)と呼び、巻物の内容などを記すためのページとして使われていたそうです。

プロトコルの「プロト」は「最初の」、「コル」は「糊」という意味で、表紙に糊付けした紙を表しています。

1968年に大型コンピュータを共有するために世界で最初に作られたインターネットであるARPANETが稼働、これが「プロトコル」という用語がインターネットで使われた最初となりました。

DSD録音への道のり

現在DSDレコーダーという存在は、ほとんど市販されていません。

一つ有名なものが、DA3000というTASCAMから販売されているものであり、現在は販売終了品となっており、中古市場でしか手に入りません。
DA3000の後継機が2025年に発売されていますが、結局スペック上はDA3000と近いものがあり、価格はかなり高いので後継機発売後も初代DA3000がだいたい2025年11月時点でオークションで10万円を基準に取引されています。

現状ではDSDレコーディングを実現するためには、フィールドレコーダーとしてはDA3000が一択、またPC環境を持ってすればKORGの10Rというものがあり、これは、主にレコードやカセットのDSD化をする方向けのもので、ラインでDSDレコーディングが実現するわけですし、そのお値段たるや、3万円を切っていますので、現状最も気軽にDSDの世界に踏み込める機材であると言えます。

ただし、このKORGの10R、ADC自体はそこまで悪くないのですが、DAC部分、特にヘッドホンアンプはちょっと残念なところがあるので、再生環境はかなり考えて構築しないと、大変です。

筆者は、レコードのDSD化を行い、再生は全く別環境でという形でDSDを楽しんでいました。

もちろんDSDを再生するだけならDSDDACの環境はかなり整っているわけであります。

録音環境はフラッグシップだとDA3000一択になってしまって何年も経ちますので、まだまだハードルが高いわけです。

DSD=非コンテナ

ここでDSDについて少し触れておきたいと思います。

DSDファイル規格というのは、コンテナ化という概念がなく、ファイルの取り扱いが非常に面倒であるということがあげられると思います。

主な規格としては、DSF(DSD Stream File): ソニーが開発した形式で、メタデータを含むことができるもの、DFF(DSD Interchange File Format)というメタデータを含めないものなどがあります。

現状ではやはりPCMに一度変換してからEQなどの編集に進むというのが一般的ではあります。

ただし、当スタジオでも何度も申し上げているわけですが、録音業務というのは、編集ありきというものではありません。

ピークノーマライズのみが理想であり、個人的には編集と加工が必要なものを【録音の失敗】という認識を持つようにしています。

これは筆者の個人的な考え方であり、いろんな考え方がありますので、筆者の考え方以外を否定するものではありません。

筆者は最高の刺身包丁でカットしたお刺身も好きですし、フェラン・アドリアのエルブジも大好きですが、筆者はお刺身を採用しているというだけのお話でございます。

ADCからDSDレコーダーへ

通常デジタル録音に必要なものは、マイクロフォン、マイクアンプ、アナログからデジタルに変換するコンバーターそしてデジタル記録部ということになるかと思います。

録音初心者から中級者までは一体型になったものを使用することがほとんどだと思います。

基本的に中級者の方まではこの二つの記事を参照してもらえればあとは感性と耳で、最高の録音が見えてきます。

【プロ厳選】XLRマイクの真価を引き出す!高音質オーディオインターフェイス&マイクプリアンプおすすめ10選 【永久保存版】プロが選ぶ本物の最高級マイク6選

通常はPCMに変換してなんらかのレコーダーにXLRで送り記録するわけですが、DSDの場合はDSDに変換し、BLCプラグ(Balanced Line Cable Plug)でDA3000(DSD対応)に送ります。

BLCプラグ(Balanced Line Cable Plug)は通常、アナログオーディオ信号の伝送に使用されますが、デジタル信号の伝送にも使用することが可能です。

ポイント

AES/EBUではDSDのビットストリームデータの伝送はスピード不足などがあり、できません。
通信用に使用する3C3Vや5C2Vの同軸ケーブルで伝送するため75Ωとなります。

SDIF-3フォーマット

元々はソニーが開発した規格となる、SDIF-3フォーマットのデジタルインターフェースは、DSD機器間でのDSD信号交換に使用されます。

このインターフェースは、75Ω BNC、アンバランス伝送、1チャンネル1ケーブル、および外部ワードクロック(WCK)に基づいています。

ビットレートは5.6448Mbps(fsdsd = 2.8224Mbps)または11.2896Mbps(fsdsd = 5.6448Mbps)で、伝送は1チャンネルのアンバランス伝送であり、同期技術としてワードクロックを使用します。

  1. 75Ω BNCコネクタおよびケーブルを使用
  2. 機器の出力は、単一の75Ω BNCメスコネクタで提供
  3. 機器の入力も同様に75Ω BNCメスコネクタで提供

SDIF-3形式のDIOインターフェースは、WORD CLOCKとDATAを異なるBNCケーブルで送信するため、遅延時間の差が生じる可能性があります。

金田式DCマイクの録音をDSDで残す喜びとこれからの音の世界

言葉にできない喜びがあります。

特に五島昭彦氏のようにステレオペア録音、ステレオワンポイント録音がベースになる場合には、まさにタイムマシンのような状態であるといえます。

記憶は情報ですし、オーディオは情報ですから、論理的に考えてもタイムマシンという意味合いはかなり現実的な感覚になってくるかと思います。

さらに電流伝送であることも、個人的にはよりタイムマシン感を感じてワクワクするわけであります。
電流伝送での録音、試聴体験というのは、やはり一般的な電圧でのオーディオ体験とは全く違う別次元の体験を味わうことが可能になるわけです。

やはり特筆するべきはそのスピード感と、スピード感ゆえの時間感覚の変容。
本当にその時、その時代の時間にいるかのような錯覚に脳全体、感性全体が陥っていくのです。

また、筆者の場合は、Revox A77, B77を用いたアナログ録音をメインとするくらいアナログをしっかり触っているわけですが、DCアンプシリーズNO261のアナログバランス電流伝送録音再生システムなどを体験すると、まさに言葉がでないほどの衝撃を受けます。

実際Revox などのアナログレコーダーの場合は、電圧で来た情報を記録自体はヘッドを通して電流で記録されるわけですが、NO261などのアナログ録音の場合は、マイクロフォンの素子のすぐあとで、一度電流に変換し、電流のまま光速で移動し、テープに記録するわけで、逆も然り、これは感覚的に言うと、まさに時間を磁気テープの中に閉じ込めておくような感覚です。
一般的にはアナログテープであっても電圧のままレコーダーまで送られますからね。。。それは電流の一瞬性とは全く違うわけです。

さて、金田式に完成はない?という概念を師匠の五島先生から日々教えられています。
実際金田明彦氏は現在も無線と実験で連載を続けており、常に新しいアイディア、可能性、発見を発明し続けています。

はっきりいって、無線と実験でも金田氏が言及されているように、究極のハイレゾ録音とは、アナログ録音のことであるわけで、デジタルの世界がどれだけ進化しても、どれだけAIが発達したとしてもデジタル録音がアナログ録音を情報量として超えることはありえません。

アナログのレコーディングという意味で金田式バランス電流伝送録音が実現している現代において、この先のオーディオ、どんな究極の音があるというのでしょうか??・・・と個人的には本気で思ってしまいます。

この辺りを五島先生に尋ねてみたところ、やはり次のテーマとしては、金田式ドライブでB77を回すということ。

これはターンテーブルの金田式ドライブの音がこれまたあまりにも別次元の音になった経緯がある、と聞いているので非常に興味深い技術なのであります。

また、現在は五島昭彦氏が、金田式アナログバランス電流伝送録音再生システムを使用しているわけですが、ダビングができるようにはなっていないため、B77を用いて金田式のダビングシステムがあればこの時空を超えた究極のハイレゾ音源をそのままみなさんにアナログソースとしてリリースすることもレーベルとして叶うといった世界観になります。

現在当Kotaro Studioでは3台のRevox B77を常備しており、細かいパーツの管理や、レストアのスキルを溜め込んでいるわけです。

生成AIの時代の音楽

AIブーム、AIバブルがまだ終わりを見せない昨今、2026年にはチャットGPTのオープンAIが米国市場に上場するなどさらなるバブルがはじまろうとしています。

現在音楽もAIが生成し、マスタリングもAIがこなす音楽音響業界において、この先どんなコンテンツになっていくでしょうか。

筆者は個人的にドローンが登場した時と同じ匂いを感じています。

空撮がでたばかりのころは、珍しいのでこぞってSNSでもシェアされ、注目されていましたが、時と共にそれは飽きられ、今の時点では空撮という光景がさほど珍しいものではなくなりました。

生成AIコンテンツはもう少し息が長いでしょうが、現在でも誇張されたAIコンテンツは飽きられ始めているように、よりリアルに人間がつくったものと似せて生成されるコンテンツも飽きが来るのだろうと思います。

特に音響や音楽の世界はまだまだ人間が必要。
そして、いよいよ人々は本格的にアナログを求める時代が来るのだろうと感じているわけです。

デジタルを追求し、目に見えない世界に様々なものを転送してきたデジタル時代でした。
実際は本やレコード、CDなどをデジタル化しただけのミニマリストが注目されはじめたり、シェアリングサービスなど、間接的にデジタル化されたものが流行ったりしましたが、突き詰めると、人間はなんのために生きているのか?という釈迦的哲学の局地に辿り着くわけです。

アナログの喜びというのは、まさにこの地球に誕生し、この物質的な世界、ある程度固定化されたルールの中で縛られて生きる喜びのようなものが人間には必ずあり、そのルールの中でどれだけ三次元、つまり物理次元を楽しめるか?にかかってくるわけです。

金田明彦氏は確かに時空を超えた音楽を私たちに届けてくれました。
これは人類が三次元で楽しめる音楽、音というのを次の次元に連れて行ってくれるまさにタイムマシンであると言えるわけですが、このタイムマシンに乗車するためのチケットとしてアナログの世界というのが存在しているような気がします。

筆者は決してデジタルを否定しているわけではありません。
しかし、やはり時空を超えた音、そしてその次の世界へ、思考を巡らせたいと一人の芸術家としてそう思うわけであります。