【プロ厳選】XLRマイクの真価を引き出す!高音質オーディオインターフェイス&マイクプリアンプおすすめ10選【2025年版】
この記事の目次
「せっかく良いコンデンサーマイクを買ったのに、思ったほど音が良くない…」
そう感じたことはありませんか?
実はその原因の多くは、マイクそのものではなく、接続先の「オーディオインターフェイス」および「マイクプリアンプ」の性能にあります。
XLRマイクが出力する信号は非常に微弱です。
これを録音レベルまで増幅する「マイクプリアンプ(マイクプリ)」の質こそが、サウンドの密度、S/N比(ノイズの少なさ)、そして音の艶を決定づけます。
本記事では、スタジオグレードの録音環境を求める中級〜上級者に向けて、XLRマイクのポテンシャルを極限まで引き出すおすすめのオーディオインターフェイスと単体マイクプリアンプを厳選して10機種ご紹介します。
この記事を担当:朝比奈幸太郎
1986年生まれ
音大卒業後日本、スウェーデン、ドイツにて音楽活動
ドイツで「ピアノとコントラバスのためのソナタ」をリリースし、ステファン・デザイアーからマルチマイク技術を学び帰国
帰国後、金田式DC録音専門レーベル”タイムマシンレコード”て音響を学ぶ
独立後芸術工房Pinocoaを結成しアルゼンチンタンゴ音楽を専門にプロデュース
その後写真・映像スタジオで音響担当を経験、写真を学ぶ
現在はヒーリングサウンド専門の音楽ブランド[Curanz Sounds]を立ち上げ、音楽家, 音響エンジニア,として活動
五島昭彦氏より金田式DC録音の技術を承継中
当サイトでは音響エンジニアとしての経験、写真スタジオで学んだ経験を活かし、制作機材の解説や紹介をしています。
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【さらなる専門家の監修】録音エンジニア:五島昭彦
学生時代に金田明彦氏に弟子入り。
ワンポイント録音の魅力に取り憑かれ、Panasonic半導体部門を経て、退職後金田式DC録音の専門スタジオ:タイムマシンレコードを設立。
ジャズは北欧系アーティストを中心に様々な美しい旋律を録音。
クラシック関係は国内外の様々なアーティストのレコーディングを担当しており、民族音楽にも精通。
現在は金田式DC録音のDSDレコーディングを中心にアコースティック楽器の収録を軸に活動中。
世界で唯一、金田明彦氏直系の弟子であり、金田明彦氏自らが手がけた金田式DC録音システムを使用している。
失敗しない!高音質マイクプリ・インターフェイスの選び方
ランキングに移る前に、プロが重視する3つの選定ポイントを押さえておきましょう。
ゲイン(増幅)の余裕と「S/N比」
高性能なマイク(特にダイナミックマイクやリボンマイク)は、大きなゲインを必要とします。
安価なインターフェイスでは、ゲインを上げた際に「サーッ」というホワイトノイズが乗りがちです。
低ノイズでクリアに増幅できる「ディスクリート回路」などを搭載したモデルを選びましょう。
「色付け」か「透明感」か
マイクプリには大きく分けて2つの方向性があります。
- 色付け(カラー)系: NEVEやAPIに代表される、通すだけで音が太く、音楽的になるタイプ。
- 透明(クリア)系: マイク本来の音をありのままに収録するタイプ(RMEやGrace Designなど)。
自分のマイクの特性と、目指す音に合わせて選ぶのが上級者への第一歩です。
筆者個人としては、透明感を重視する傾向にありますので、RMEなどのマイクアンプは推奨しやすい傾向にあります。
AD/DAコンバーターの質
アナログ信号をデジタルに変換する「ADコンバーター」の質が低いと、いくら良いマイクを使っても解像度が落ちてしまいます。
今回はコンバーター性能にも定評のある機種を厳選しました。
組み合わせもOK!
例えば、変換効率のいいADコンバーター(オーディオインターフェイス機能といっても間違いではない)がついていてもマイクアンプはいまいちだな〜という場合や、マイクアンプはいいんだけどADコンバーターはこれがいい!なんて使い方ももちろんOKです。
筆者もサウンドデバイスのPremix-Dや302、702などマイクアンプだけサウンドデバイスを使って、ADCは別という使い方をよくやります。
例えばTascamのDA3000というDSDレコーダーは、マイクアンプが非搭載なので、コンデンサーマイクでのレコーディングの場合は別で用意する必要があります。
実際ADCに関しては時代とともに急速に進化しやすいですが、マイクアンプに関してはビンテージものだって負けてないなんてこともよくある話なので、いいマイクといいマイクアンプの組み合わせを見つけるのも宝探しみたいで楽しいですよ。
ちなみに後述しますが、個人的な最高のマイクアンプはサウンドデバイスの702Tだと思っています。
【インターフェイス編】マイクプリ性能が凄いおすすめ5選
まずは、これ一台でプロ品質の録音が可能になる、マイクプリ性能に優れたオーディオインターフェイスをご紹介します。
1. RME / Babyface Pro FS

【透明感の最高峰】
プロのエンジニアやミュージシャンが「迷ったらこれ」と推す定番機。
独自技術「SteadyClock FS」による圧倒的な解像度と、極めて色付けの少ない透明なマイクプリが特徴。
マイク本来の音をモニター・録音したい場合に最適解となります。
- 原音忠実な録音を求める方、モバイル環境でも妥協したくない方
- とりあえずフラッグシップ機を買うのに失敗したくない方
2. RME ( アールエムイー ) / Fireface UCX II

Babyface Pro FSに比べると、入出力(最大20の録音チャンネルと20の再生チャンネル)も多く、シンプルなステレオペア録音や、非マルチトラック録音をする方にとっては、オーバースペックになりがちですが、これ一台あれば、ほとんどの録音業務は完璧にこなせます。
お値段張りますが、音楽を本格的にやる、音楽やオーディオで仕事をするという方は一台導入して間違いは起こらない白眉な機材です。
常設のスタジオなどにも最高の選択肢になります。
3. RME ( アールエムイー ) / Fireface UFX Ⅲ

USBレコーダーとしても使えるのは非常に便利。
このクオリティーでフィールドレコーディングができるとなると、どんな制作現場にも対応できますね。
4. AUDIENT ( オーディエント ) / iD24

プロデューサーやエンジニアの厳しい要求に応えるために設計された「iD24」は、デスクトップ型インターフェイスの常識を覆す実力派モデル。
この機種最大の特徴は、Audientのフラッグシップ・コンソール「ASP8024-HE」と全く同じディスクリート回路を採用した2基のClass-Aマイクプリアンプとなっている点。
単なる「クリアな音」にとどまらず、アナログ特有の温かみと立体感を保ちつつ、超低ノイズ・低歪みを実現しています。
音作りにこだわる中級者以上にとって最大の魅力は、背面に搭載された「バランス・インサート端子(センド/リターン)」です。
AD変換前のシグナルチェーンにお気に入りのコンプレッサーやEQなどの外部ハードウェアを物理的に接続可能。
最高のシグナルチェーンを通した「かけ録り」が、この一台で完結します。
ADAT入出力による最大8chのマイクプリ拡張や、ワードクロック出力も装備しており、ドラム録音や将来的な機材の増加にも柔軟に対応します。
さらに、ユーザー設定可能な3つのファンクションキーや、配信に便利なループバック機能も完備。
音質、拡張性、操作性のすべてにおいて、妥協のないスタジオクオリティを求めるクリエイターへの最適解です。
5. APOGEE ( アポジー ) / Symphony Desktop

Symphony Desktop for Mac and Windowsは、ラックマウントタイプのApogee Symphony I/O Mk IIと同一の、伝説的サウンドクオリティを備えたオーディオインターフェイスです。
インスピレーションをサポートする10in/14outの豊富な入出力にも関わらず、手軽にデスクに設置し 、バッグに収めることも可能なサイズを実現しました。
業界で長きに渡り信頼されるAD/DAコンバーターとマイクプリアンプを搭載するSymphony Desktopは、レコーディング、オーバーダビング、ミキシングを問わず、ミュージシャン、プロデューサーと、音楽制作シーンを強力に支えます。
Alloy Mic Preampによるマイクプリアンプ・エミュレーション、Symphony ECS Channel Strip プラグイン、ハードウェアDSPとネイティブでの動作に対応するApogee FXプラグイン、超低レイテンシー・レコーディングなどの新機能。
これらの優れたパフォーマンスの組み合わせにより、Symphony Desktopがスタジオや外出先、あらゆる場所で創造性を広げ、Apogeeサウン ドクオリティによるアドバンテージを与えてくれるでしょう。
6. MOTU ( モツ ) / UltraLite mk5

プロの現場で長年愛用されるMOTUの最新モデル。ESS Sabre32 Ultra DACテクノロジーを採用し、この価格帯では異次元のダイナミックレンジ(125dB)を叩き出します。
RME Babyfaceと同様に「色付けのないクリアな音」ですが、より入出力数が多く、バンド録音やシンセサイザーを多用するクリエイターに好まれます。
質実剛健なスペックを重視する層に響く一台です。
【単体マイクプリ編】音質を劇的に変えるおすすめ5選
既にインターフェイスをお持ちの方へ。XLR入力に「単体マイクプリアンプ」を接続することで、サウンドは劇的に進化します。
マイクアンプの場合は、古い製品でも十分な効果が得られるケースも多いため、いろいろな選択肢の中から宝探しをしてみてください。
7. Rupert Neve Designs / Portico 511 (500 Series)

レコーディング界の巨匠、ルパート・ニーヴ氏の設計哲学を、API 500シリーズ・フォーマットのコンパクトなボディに凝縮したマイクプリアンプ・モジュール。
フラッグシップ機「Portico II Channel」の心臓部を受け継ぎ、プロフェッショナルが求める「太く、音楽的なサウンド」を省スペースで実現します。
最大の特徴は、独自の倍音コントロール機能「Silk Red」です。
この回路をアクティブにすることで、単なるクリーンな増幅だけでなく、ヴィンテージ機器特有の中高域の倍音(サチュレーション)を自在に付加可能。
Textureノブを回すだけで、ボーカルに艶を与えたり、オケの中で埋もれない存在感のある音を作り出せます。
現代的なクリアサウンドから、濃厚なヴィンテージトーンまで、この一台で表現可能です。
マイクゲインは0〜66dBまで6dBステップで正確に設定でき、±6dBのトリムで録音レベルをさらに微調整可能。
また、20〜250Hzまで連続可変する高性能なハイパスフィルター(HPF)を搭載しており、空調ノイズやマイクの吹かれなど、不要な低域を狙った帯域で的確にカットできます。
スタジオクオリティの整音処理が録音段階で行える強力なツール。
※本製品の使用には別途、API 500シリーズ互換の電源ラック(ランチボックス等)が必要です。
8. Grace Design / m101

「m101」は、一切の色付けを排し、マイクが捉えた音をありのままに増幅する「トランスペアレント(透明)系」マイクプリアンプの世界的スタンダードモデルです。
精密な0.5%メタルフィルム抵抗を採用した最高品位の回路は、楽器の繊細な響きや、ボーカルのブレス、部屋の空気感までをも鏡のように正確に再現します。
10dBから最大75dBという広大なゲインレンジを誇り、感度の低いダイナミックマイクでもノイズレスに増幅可能です。
特筆すべきは「リボンマイク・モード」。
入力カップリング・キャパシターをバイパスし、DC電圧を完全に遮断することで、インピーダンス特性を最適化。
繊細なリボンマイクの本来のパフォーマンスを、安全かつ最大限に引き出します。
旧モデルからの大きな進化として、リニア電源を本体に内蔵しました。
ACアダプター駆動では得られない、クリーンで強力な電源供給が、広いダイナミックレンジとスピード感のあるサウンドを支えています。
また、ゴールド接点のステップ式ゲインコントロールにより、常に正確な設定の再現(リコール)が可能。
確実な仕事が求められるプロの現場で、長きにわたり信頼され続けるリファレンス機です。
9. Warm Audio / WA73-EQ

ロックやポップスの歴史そのものである伝説の名機「Neve 1073」。
そのサウンドを、回路設計からパーツ選定に至るまで、執念とも言えるこだわりで再構築したのが「WA73-EQ」です。
ヴィンテージ機材特有の、音が前に張り出す「太さ」と「艶」を求めるユーザーにとって、最もコストパフォーマンスに優れた本格的な選択肢となります。
本機のサウンドの心臓部には、オリジナル同様、英国Carnhill社製のカスタムトランスフォーマーが採用されています。
これにより、ゲインを上げた際に生じる、音楽的で甘美なサチュレーション(倍音歪み)を忠実に再現。
デジタルプラグインでは到達できない、有機的で密度の高いアナログサウンドを実現します。
大量生産の基板とは異なり、職人の手作業による「ハンドワイヤード(手配線)」で組み上げられています。
さらに、タンタル・コンデンサやBlore Edwards製のスイッチポットなど、信号経路のパーツも徹底的に厳選。
80dBという余裕あるゲイン幅を持ち、低出力なダイナミックマイクやリボンマイクであっても、そのポテンシャルを限界まで引き出します。
ただ増幅するだけでなく、音楽的な効き味を持つ3バンドのインダクターEQを搭載しています。
録音段階で不要な帯域をカットしたり、高域の煌びやかさを足したりと、ミックスを見据えた積極的な音作り(かけ録り)が可能。
「録り音」のクオリティを一段階引き上げる、強力なツールです。
WA273-EQ
2チャンネル版のWA273-EQもあります。
音質に違いはありませんが、WA73-EQを2台個別に買うよりも、WA273-EQを1台買う方が、一般的に価格は割安に設定されています。
「ステレオ録音をする」のであれば、最初からWA273-EQを買う方がトータルの出費は抑えられます。
10. FOCUSRITE ( フォーカスライト ) / ISA One /DI

「ISA One」は、レコーディングの歴史そのものと言える伝説的コンソール「Focusrite Forte」の心臓部を、デスクトップサイズに凝縮した名機です。
そのサウンドの核となるのは、プロの現場で信頼されるLundahl製「LL1538」トランスフォーマー。
オーディオインターフェイス内蔵のマイクプリでは再現できない、シルキーな高域と芯のある中低域、いわゆる「コンソール・サウンド」を自宅スタジオにもたらします。
最大の特徴は、4段階の入力インピーダンス切り替え機能です。
「Low」から「High」まで設定を変えることで、同じマイクでも「あたたかい音」から「抜けの良い音」へとキャラクターを変化させることが可能。
手持ちのマイクの隠れたポテンシャルを引き出します。
マイクプリとは独立したDIチャンネルを搭載し、ギターのライン録音とマイク録音を同時に行えるため、弾き語りやアンプの空気感を混ぜた音作りにも最適です。
さらに最大80dBのハイゲイン設計により、感度の低いリボンマイクやダイナミックマイクもノイズレスにドライブ。
背面のインサート端子を使えば、コンプレッサーなどの外部機器も接続可能です。
「いつかは単体マイクプリを」と考えるすべての人にとって、最初の、そして一生モノの選択肢となる一台です。
番外編3選
現役ではありませんが、サウンドデバイスの702Tは本当に素晴らしいマイクアンプです。
現状中古でも20万円以上のものになりますが、設備投資としては大変価値のある投資であると思います。
ただし、一度内部でデジタル出力になっているため、マイク入力からそのままアナログ出力できないのがちょっとだけ残念。
筆者のようにRevoxでアナログ録音したり、例えばDA3000(マイクアンプなしのDSDレコーダー)などを使う場合は、どんなアナログを抽出するか?は大変重要なポイントになります。
また、サウンドデバイスとしては、Premix Dや、302なども素晴らしいマイクアンプ性能を誇ります。
ただし、入力感度が現代ではとても扱いづらいので、上級者向けの機種といえます。
いずれも国内外のオークションサイトなどで入手可能。
ポータブル編
スタジオ常設タイプでも素晴らしいものがありますが、筆者のレコーディングスタイルはライブ録音だったり、フィールドレコーディングだったり、そのままの姿を丁寧にトレースしていくやり方なので、基本的にバッテリードライブはもちろん、すべて速やかに移動できることを前提としています。
ここからはポータブル編ということで、実際こちらを選択する人も多いのではないでしょうか。
まずは、やはりサウンドデバイスからいきましょう。
Sound Devices / MixPre-3 II

映画やドラマの収録現場で絶大な信頼を得るSound Devices社。
そのサウンドを小型筐体に詰め込んだのがMixPre IIシリーズです。
独自開発の「Kashmir(カシミール)」マイクプリアンプは、理論値限界に近い-130dBVの超低ノイズフロアを実現。
静寂の中の微細な衣擦れから、爆音のドラムまで、一切の歪みなく、かつアナログの温かみを持って収録できます。
USB接続でオーディオインターフェイスとしても機能するため、「最強のポータブルIF」としても人気です。
シンプルなステレオペアやワンポイント録音、ほとんどの制作において、MixPreシリーズでOK、そんな機種です。
ただし、現在は入手困難になっていますし、ZOOMやTASCAM等日本国内メーカーのクオリティーがかなり高く、この値段出して取り寄せまたは海外から購入するなら後述するZOOM / F8n Proなどの方が圧倒的におすすめです。
SOUND DEVICES ( サウンドデバイス ) / MixPre-3 II ポータブルミキサー&レコーダーをサウンドハウスでチェックZOOM F3
小さな巨人といっていいでしょう。
この小さなレコーダーの中にはサウンドデバイスと戦える?と思うほど優秀で有能なマイクアンプが入っており、かなりの水準に達しています。
当サイトでもサンプルがたくさんあります。
当サイトで取り扱っているミニXLRマイクとこのF3とのシンプルな組み合わせ、最高の無指向性マイクの哲学を味わえますよ。
ZOOM / F8n Pro

サウンドデバイスがハリウッド御用達といいますが、もしかするとZOOMに鞍替えしている制作会社も多いのではないか?と思います。
ZOOMはいち早く32bitフロートの導入を進めましたし、マイクアンプ性能も非常に素直で、RME的な雰囲気を存分に味わえます。
現状最高レコーダーとして超おすすめです!
TASCAM ( タスカム ) / Portacapture X8

シンプルなステレオペア録音を極めるなら、こちらも選択肢の一つとしておすすめです。
ディスクリート形式 HDDAマイクプリアンプ搭載し、192khzの32bitが可能。
最大8トラック(6トラック +2ミックス)のマルチトラック録音も可能なので、コンパクトにさまざまな形態の録音に活かせます。
注意して欲しい点は、もう少し安いPortacapture X6 がありますが、全くの別物。
同じマイクでも違う音になりますので、音にこだわる方は必ずPortacapture X8を選択してください。
高性能アンプでこそ使いたいマイク選びの重要性
多くの録音愛好家が誤解している事実があります。
それは、「良いマイクプリアンプを使えば、どんなマイクでも良い音になる」という神話です。
録音エンジニアの視点から正しく言い換えるならば、「高性能なアンプほど、マイクの真の実力(あるいは粗)を残酷なまでに暴き出す」が正解です。
今回ご紹介したRMEや、Sound Devicesといったトップクラスの機材を導入することは、いわば曇ったガラスを「磨き上げられた光学レンズ」に交換するようなものです。
アンプ自体のノイズや歪みが極限まで取り払われた結果、そこで露わになるのは、入力ソースであるマイクが捉えた信号そのものです。
ここで重要になる技術的指標が「トランジェント(過渡特性)」への追従性です。
高性能なディスクリート・プリアンプは、音の立ち上がり対して極めて高速に反応します。
しかし、肝心のマイク側の振動板(ダイヤフラム)が重く、反応が鈍ければ、アンプに届く前の段階で波形のピークは丸まり、音の「輪郭」や「スピード感」は失われてしまいます。
どれだけ解像度の高いアンプで増幅しても、失われたアタック感は二度と戻りません。
また、電気的な「S/N比(信号対雑音比)」の観点からもマイク選びはシビアになります。
近年のハイエンド・インターフェイスは、ノイズフロアが聴感上の限界近くまで低く抑えられています。
ここで自己ノイズの多いマイクや、微弱信号の伝送ロスが大きいマイクを使用することは、アンプが持つダイナミックレンジというキャンバスを無駄に塗りつぶす行為に他なりません。
つまり、優れたアンプを手に入れた時こそ、マイクには以下の要素が不可欠となるのです。
- 高速なレスポンス: 繊細な波形を瞬時に電気信号へ変換する、軽量かつ高精度な振動系。
- 純度の高い伝送: 接点ロスを排し、アンプの入力段までエネルギーを減衰させないコネクタ品質。
- 位相の正確さ: アンプの位相特性を活かしきる、フラットで乱れのない周波数特性。
筆者は自身の録音には、基本的に無指向性マイクを使い、中でもDPAかゼンハイザーあるいは、自分自身で制作したKotaro Studioの「mini XLRマイク / X-86S」を選択肢を推奨する理由も、まさにここにあります。
不必要な筐体の共鳴を排除し、振動系を軽量化することで得られる俊敏な反応速度は、高性能なプリアンプと組み合わせた時に初めて、その真価を発揮します。
「アンプは音を大きくする機械」ではなく、「マイクが捉えた世界を拡大する顕微鏡」です。
そのレンズの下に置くべきは、ぼやけた像ではなく、情報量の詰まった鮮明な原石でなければなりません。
機材のグレードが上がるほど、マイク選びの妥協は許されなくなるのです。
マイク選びに関しては、こちらの記事も是非参照してほしいと思います。
【永久保存版】プロが選ぶ本物の最高級マイク6選また、音にうるさい筆者が納得して制作し、使っている当スタジオのオリジナルマイクロフォンも是非一度試して見てほしいと思っています。
スタジオのマイクを試聴してみるまとめ
XLRマイクの音質は、マイク単体ではなく「マイク+プリアンプ+インターフェイス」のトータルバランスで決まります。
今回ご紹介した機材は、どれもあなたの声を、楽器の音を、ワンランク上のレベルへと引き上げてくれる名機ばかりです。
そして、その環境が整った時こそ、マイクロフォンが真価を発揮します。
最高の録音環境を整えて、あなたの音を世界に届けましょう。