【唯一無二の名機復活】TASCAM DA-3000SD / DSD対応のマスターレコーダー

DSDレコーダーとしての名機が復活します。

TASCAMから、SDHC/SDXCカードを記録媒体に用いるステレオマスターレコーダーDA-3000SDが2024年8月下旬発売。

当スタジオの音響顧問である、金田式DC録音の五島昭彦氏は、金田式DSDのマスターレコーダーとしてDA3000を愛用しており、その優れた性能ゆえ数々の金田式DSDの名作が誕生してきました。

今回はDA3000SDということで、この新しい名機について詳しくみていきましょう。

Profile

この記事を担当:こうたろう(音楽家)

1986年生まれ
音大卒業後日本、スウェーデン、ドイツにて音楽活動
ドイツで「ピアノとコントラバスのためのソナタ」をリリースし、ステファン・デザイアーからマルチマイクREC技術を学び帰国
金田式DC録音のスタジオにて音響学を学ぶ
独立後芸術工房Pinocoaを結成しアルゼンチンタンゴ音楽を専門にプロデュース
その後写真・映像スタジオで音響担当を経験し、写真を学ぶ
現在はヒーリングサウンド専門の音楽ブランド[Curanz Sounds]を立ち上げ、ピアニスト, 音響エンジニア, マルチメディアクリエーターとして活動中
当サイトでは音響エンジニアとしての経験、写真スタジオで学んだ経験を活かし、制作機材の解説や紹介をしています。
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Profile

【さらなる専門家の監修】録音エンジニア:五島昭彦

学生時代に金田明彦氏に弟子入り。
ワンポイント録音の魅力に取り憑かれ、Panasonic半導体部門を経て、退職後金田式DC録音の専門スタジオ:タイムマシンレコードを設立。
ジャズは北欧系アーティストを中心に様々な美しい旋律を録音。
クラシック関係は国内外の様々なアーティストのレコーディングを担当しており、民族音楽にも精通。
現在は金田式DC録音のDSDレコーディングを中心にアコースティック楽器の収録を軸に活動中。
世界で唯一、金田明彦氏直系の弟子であり、金田明彦氏自らが手がけた金田式DC録音システムを使用している。

高性能AD/DAコンバーターを搭載マスターレコーダー

画像引用:TASCAM公式画像引用:TASCAM公式

レコーダー部は、PCM 192kHzによる録音、さらにこの機種の最大の特徴であるDSD 2.8/5.6MHzによる録音に対応しています。

記録メディアは最大512GBのSDXCカードに対応。

SDXCですので、データ管理ややり取り、持ち運びも簡単です。

複数台での同期走行が可能となっており、同期走行を実現しています。

この同期走行により、複数台によるDSDマルチトラック録音環境を構築することも可能になっています。

水晶振動子

DA3000SDは高品位なオーディオ回路を搭載しており、EIコアトランスを採用することでノイズの混入を抑えています。

出力側のオーディオ回路も高音質設計が施されており、デュアルモノーラル構成にすることで左右のチャンネル干渉を排除しています。

発振子は精度1ppm以下のTCXO(温度補償型水晶発振器)を採用。

クロックジェネレーター単体機に迫る高精度なクロックを実現しています。

DSD信号は非常に高いサンプリングレート(通常2.8224 MHz)で動作するため、複数のトラック間でのタイミングの同期が重要です。これにより、オーディオの位相のずれやジッターを防ぎます。

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TCXO(温度補償型水晶発振器)とは、水晶振動子を使用した発振器に温度補償機能を加えたもので、温度変化に伴う周波数の変動を抑制するために設計されています。

通常の水晶振動子は、温度が上がると周波数が減少し、温度が下がると周波数が増加するという特性を持っていますが、この特性自体がデバイスやシステムの精度に悪影響を与えることがありました。

TCXOではこの問題を解決するため、温度センサーと補償回路を組み合わせて、温度変化による周波数の変動を最小限に抑えることができます。

TCXOは高い周波数安定性を提供するため、オーディオ機器の音質向上に大きく貢献します。

音楽や音声の再生において、クロックの精度が音質に直接影響を与えるため、安定した周波数を供給できるTCXOの導入は、ノイズや歪みを最小限に抑え、クリアで高品質なサウンドを実現します。

具体的には、ジッター(信号のタイミングの揺れ)を低減できることなどが挙げられます。

ジッターが少ないと、デジタルオーディオの信号処理において時間軸の揺らぎが減り、結果として音楽再生の精度が向上します。

これにより、特にハイファイオーディオ機器やプロフェッショナルな音響設備において、非常に精細な音質が求められる場合に、TCXOはその効果を発揮します。

総じて、TCXOの導入により、オーディオ機器の音質が向上し、信頼性が高まり、長期間にわたって一貫したパフォーマンスを提供することができます。

これにより、オーディオ愛好家やプロフェッショナルのミュージシャン、音響エンジニアにとって、より満足度の高い製品を提供することが可能になります。

入出力端子

オーディオ機器の接続仕様

オーディオ機器の接続仕様

タイプ 接続端子
アナログ入出力 XLR、RCA
デジタル接続 S/PDIF RCA COAXIAL、AES/EBU XLR端子
DSDデジタル接続 BNC SDIF-3入出力

BNC SDIF-3とは、デジタルオーディオ信号の伝送に用いられる接続規格の一つで、特にDSD(Direct Stream Digital)フォーマットに対応しています。

SDIF-3(Sony Digital Interface Format 3)は、Sonyが開発したデジタルオーディオのインターフェース規格で、ステレオおよびマルチチャンネルのDSD信号を伝送する能力があります。

マイクアンプについて

DA3000も同様ですが、マイクアンプが搭載されていないモデルになります。

ですので、本当に純粋なマスターレコーダーとして機能、取り扱いができる理解が必要になります。

金田式DCシステムによるDSD録音の場合はもちろん金田式のマイクアンプを使用しますが、市販のものになりますと、やはりRMEやサウンドデバイスのものが理想となるでしょう。

DSDのマルチトラックレコーダー

画像引用:TASCAM公式画像引用:TASCAM公式

DSD(Direct Stream Digital)は、従来のPCM(Pulse Code Modulation)と異なる1ビットのデータを高いサンプリングレートで記録するフォーマット故に、一般的なファイル形式のようなコンテナ化はできません。

そのためマルチトラックレコーディングを行う際、各トラックのデータは個別のファイルや信号として扱われます。

これにより、データの混在や信号のクロストークを防ぐための物理的・論理的な分離と理解が必要です。

DA3000SDはモノラル × 2録音も可能ですので、8台接続の使用例で16トラックのマルチトラックレコーダーとなります。

接続はCOAXIAL端子を使用。

一般用途からプロ仕様まで

もちろんアナログ盤のデジタル化にも最高ですし、1Uの設計で、持ち運びも楽ですので、フィールド録音、ロケにも重宝します。

マイクアンプもラック設計のものにすれば、かなりコンパクトにまとまりますよね!

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DSDは音楽業界でも採用されることは少ないとはいえ、DSD録音を残すということに価値を見出すミュージシャンはDSD録音での収録を積極的に採用しています。

視聴環境もまだ一般的とは言えないですが、やはり高音質、そして音にこだわりのある方の理解は年々深まっています。

なにより、アナログの質感を求める方にとっては、DSDは最高の選択肢でしょう。

DA3000の復活、DA3000SDの登場がDSDの広い普及に繋がることを願っています。

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排熱問題

最後にDA3000SDの使い勝手について、DA3000のレビューとなりますが、この排熱問題がどのようにクリアされているかが楽しみであります。

DA3000も同様の1Uのラックケース対応でしたが、どうしても熱がこもるという問題があり、結局のところ2Uラックでの運用となっていました。

それはそれで1U分のスペースにマイクケーブルなどを整理したり、小物を置けるので便利は便利でしたが、排熱のために1U分あけなかれば不安が残るというのは、DA3000SDで解消されているでしょうか。

DSDマルチトラックのシステム構築

もちろんDA3000SDを複数台繋げてDSDの1bitマルチレコーディングも可能ですが、もう少し予算を抑える方は、コルグのDSDプレーヤーを駆使する方法も見出せます。

こちらはなんと、DACだけではなく、ライン入力が確保されており、ADCもしっかり質のいいものが搭載されているわけです。

金田式DC録音の五島昭彦氏曰く、これを改造して、マルチレックにする方が安く済むのではないか?(金田式DSD録音システムでのおはなし)というアイディアがありましたので、シェアしておきます。

確かに、 DS-DAC-10Rを3台購入しても10万円そこそこのお値段ですから、知識があって、ハンダできる方であれば、こちらの ​DS-DAC-10Rを複数台繋げるという方法もあるのかもしれません。

もちろん改造は自己責任でお願いします。

昨今は32bitでのマルチトラックレコーディングもできるようになりましたので、どちらの路線でいくか?

というのが、オーディオマニアとしては難しいところですよね。

音鉄さんや、自然音のフィールドレコーディングの方からすると、やはり1bitでヒヤヒヤしながら録音するよりも自分自身も楽しみながら32bitで録音する方が楽しいかもしれません。

もちろんDSDレコーディングでしか味わえない質感は間違いなくあるでしょう。

DSD VS 32bitといったところでしょうか。

面白い世界になってきました。