Qobuzのすすめ:“聴けて、集められる!所有する喜び”ハイレゾ配信〜192khzからDSDまで

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Qobuzとは?─“配信”と“ダウンロード”の両輪

Qobuzは2007年フランス発の高音質ストリーミング兼ダウンロード・ストア。ストリーミングは16-bit/44.1kHz(CD)~最大24-bit/192kHz(FLAC)、ストアではハイレゾの購入・コレクションが可能です。

日本市場2024年から正式展開済み

提供地域

現在26か国でサービス展開。
日本、米国、欧州主要国、豪州、NZ、ラテン諸国など

Qobuzを選ぶ“技術的”な理由(制作・配信視点)

  1. 可逆コーデック中心(FLAC)
     録音~マスタリングで積み上げたSN・定位・倍音の情報をストリーミング段階で不可逆圧縮に戻さない運用がしやすい。最大24/192配信は発信側としてもかなり魅力的。
  2. DSD / DXD対応のダウンロード(ストア)
     ストリーミングはFLAC基軸ですが、ストアではDSD/DXDの配信を正式対応。金田式DC録音DSDのアーカイブ販売や“作品の最良形”を残す設計に向いています。
  3. “Sublime”プランでハイレゾ購入が割引
     年額のSublime加入者はハイレゾ購入が最大約60%オフ
    配信と“コレクション”の導線を両立でき、音源販売のLTV設計に効く。

Qobuzの“光と闇”(メリット/デメリット)

光(メリット)

  • 音質最優先の設計:CD~24/192のロスレス配信。作品の録音品質を損ねない。
  • ストア併設ダウンロード販売で“所有”を促進。DSD/DXDも扱え、最良版を作品として残せる
  • 価格設計の自由度:Sublime割引で“聴いて→気に入ったら買う”導線を作りやすい。

闇(デメリット/課題)

  • 対応デバイス/車載での認知が限定的:SpotifyやApple Musicほどの“どこでも再生”体験やプレイスメントは弱め。
  • プレイリスト文化の弱さ:一般層向けのキュレーション浸透は競合に劣る場面あり。
  • 国別ライセンスの差:日本参入は果たしたが、一部レーベルの国内権利状況によっては海外版との差分が出ることも。

Qobuzは“単独販売(ダウンロードのみ)”が可能

購入だけならサブスク加入も不要となります。

配信の導線を2本建て(ストア直販/ストリーミング)にするか、作品ごとに“ダウンロード専売(または先行)”を選ぶ設計ができます。

どういう形で実現される?

  • ダウンロードのみ解放:権利者がストリーミング許諾を付けない(または地域限定)と、Qobuzアプリ上は30秒サンプルのみ表示され、購入すればフルで入手できる状態になります(=実質“販売のみ”)。
  • サブスクなしで購入OKサブスク不要で曲/アルバムを買ってDLできます(Sublimeは“値引き”のためのサブスク)。
  • 購入品のアプリ再生:Qobuzアプリで購入品は再生可。ハイレゾでのアプリ再生にはStudio/Sublimeが必要(サブスクなしだとアプリ再生はCD品位まで/ただしファイルとしてDL再生は自由)。

配信者側としての運用ヒント

  • 作品の“核”はQobuzストアでDL販売(FLAC/ハイレゾ+必要に応じてDSD/DXD)を軸に。Spotify等は露出装置、Qobuzは“売上と所有”の器など、棲み分けが可能になります。
  • ウィンドウ運用:初月はダウンロード専売→後追いでストリーミング解放、など段階設計でLTV最適化。
  • 必ずバックアップ周知:Qobuzは良心的に通知するが、再ダウンロード権は権利変動で消える場合あり。購入直後の多重バックアップを推奨。

Spotifyの“近年の問題点”とアップデートを踏まえた比較

音楽配信といえばスポティアファイが有名です。

しかし近年さまざまな問題点が業界で露出するようになり、世界的なアーティストでもボイコットの波が発生しています。

筆者も過去のレーベル、また現在のヒーリング音楽レーベルであるCuranz Soundsをスポティファイからの配信を停止する流れをとっています。

  • ロイヤリティ閾値の導入(2024-)
    Spotifyは年間1,000再生未満の曲はロイヤリティ対象外とする方針を導入。長尾・ニッチ作品の初期収益化が難化。
  • Lossless(可逆)対応は2025年にようやく解禁
    2025年9月、Premiumにロスレス(最大24-bit/44.1kHz FLAC)を段階展開。ついに“音質の名目上の遅れ”を解消したが、ハイレゾ(>48kHz)級ではない点に注意。

やはり音楽文化だったり、クオリティーを大切にしようという精神がほとんどない企業であることは間違いないので、音楽、芸術を愛する一人のアーティストとしては使いたくないというのが本音です。

サービス比較(要点早見)

項目QobuzSpotify
ストリーミング品質16/44.1~24/192(FLAC)~24/44.1(FLAC)(2025/9導入)
ダウンロード販売あり(FLAC/ALAC/WAV/AIFF、DSD/DXD対応なし(自社ストアなし)
モデルサブスク+購入サブスク中心
アーティスト収益ダウンロード売上+ストリーミングストリーミング中心(1,000再生閾値あり)
日本提供あり(2024/10開始)あり(既存)

高音質配信レーベル向けの実装プラン

1. 音源マスター設計

  • 制作:マスターを24-bit/96kHz or 192kHz FLAC準備。ストア用にDSD/DXDもエクスポート。
  • タグ&体験ノーマライズ前提のヘッドルーム、ライナーノーツPDF、録音方式を作品ページに明記

2. Qobuzでの配信&販売

  • Sublime前提で“聴く→買う”導線を設計(Qobuzアルバム内に“Buy”を明示)。
  • 日本+グローバル配信:日本発表と同時に海外向けPRを多言語で。

3. Spotifyは“露出装置”

Spotifyがいいかどうか、どう使うかはユーザーの自由だと思います。
もしSpotifyを上手に利用したいという方は、アルゴリズムをある程度想像しながら広告としてリリースするのがいいかもしれません。

  • Lossless対応後の音質訴求ポストで送客。ただし“フル・ハイレゾはQobuzで”を徹底。
  • 1,000再生閾値を超えるまでの短尺・プレイリスト戦略で初期トラクションを確保。

これからの音楽配信のあり方

生成AIが自動で音楽を作る時代、スポティファイの問題点としても生成AI音楽が散乱し、収拾が大変だとのことです。

実際AI作曲の音楽と人間の音楽の区別がつかない楽曲はかなりあり、プロの音楽家も騙されるというコピーライティングのAIもたくさん出てきましたよね。

これから音楽配信はどうなっていくのか?

おそらく一つ一つの作品に価値を置くスタイルに回帰していくと思います。

レコードで音楽を聴く若者も増えています。

20世紀にモノが大量生産大量消費され、現代ではリペアやレストア、DIYが流行り出しているように量産化されたモノに価値を感じなくなってきました。

21世紀にはデジタルコンテンツが大量生産大量消費されるようになり、また、AIの登場でさらに加速化していき、消費が追いつかない状況にまできています。
そして2025年あたりからSNS動画もほとんどがAI前提でつくられるようになり、かつて空撮が飽きられたように、生成AIも必ず飽きられると思うわけです。

そうなったときに、デジタルコンテンツとしての質が求められるようになります。

そういう意味でもDSDやハイレゾ中心の配信、ダウンロードで本当に質のよい音質、音楽を提供できるようになっていくというのは必然。

また、アナログレコードの回帰ブームも爆発的ではなく、水面下でじわじわ長く・・・という状況が続いているので、これからも長くアナログブームが続くと思います。

だって、本当に別次元の音楽体験ができるんだから。

そういう意味では、当スタジオでも取り扱っているRevoxなんかのオープンリールテープもまた再評価の流れが必ずやってくると思います。

実際にドバイや中国の富裕層は、オープンリールテープで音楽を購入する人も多いのだとか。
ましてや近年オープンリールテープの復刻専門のパーツ屋さんや、Revoxの代替パーツの業者など、海外では急速に増えています。

今後もしっかりと世界の流れを見ながらどうすればより質の高い芸術をみなさんに届けられるのか?

を考察していきますので、ぜひ朝比奈幸太郎はじめ、当スタジオのフォローお願いします。

実際に配信する方法

ステップ1|事業・契約の準備(対Qobuzの“取引主体”を作る)

  1. 法的主体の確認:法人/個人事業のいずれでも可。権利表記・請求書発行先・VAT/GST等を整理。
  2. 権利クリアランス:マスター権(原盤)・ライター/パブ権利ライン、サンプルのクリア。有償楽曲の世界配信ライセンス条項を明示。
  3. Qobuzへの“コンテンツ・パートナー”申請:レーベル/ディストリとして直接取引を希望する旨を提示。
    • QobuzはXandrie SAが運営。公式の編集・開発窓口やプライバシーポリシーにXandrieの連絡体系が明示されています。技術連絡はAPI/連携ガイドに掲載のが入口になることがあります(インテグレーション議題)。
  4. 相対契約の締結:配信地域(Qobuzは26か国)、ロイヤリティ分配、価格帯/プロモ施策、支払条件、返品・テakedown規約等を確定。

ステップ2|技術方式の確定(DDEX/アセット配送)

  1. メタデータ:DDEX ERNを採用
    • ERN(Electronic Release Notification)は、レーベル/ディストリ→DSPの作品・音源・条件を通達する業界標準。QobuzはDDEXメンバーに名を連ねており、DDEX規格での納品前提が自然です。
  2. 販売・使用レポート:DDEX DSR想定
    • DSR(Sales/Usage Reporting)はDSP→供給側の明細返却の標準。運用上、月次でDSR/CSV等の形式合意を行います。
  3. オーディオ/アートの実体ファイル配送
    • DDEXは“メタデータ規格”であり、音源やアートのファイル仕様はDSPと個別合意が原則。ハイレゾFLAC/WAV、アートは正方JPG/PNG(高解像度)等、“納品仕様は相手先と取り決める”**のが標準運用です。

ステップ3|インジェスト(入稿)基盤の構築

  1. DDEX生成ワークフロー
    • リリース管理DB(作品・トラック・ISRC・UPC・クレジット・地域/日付・価格)→ERN XML生成メッセージ署名/バリデーションQobuz受信点へ送達
  2. ファイル転送
    • Qobuzと合意した転送手段(例:SFTP等)にて、音源・アート・ブックレットPDFを所定のファイル命名規則/階層で送る。
  3. 整合チェック
    • ERN内リソースID(音源ファイル)と実ファイルの1:1整合サンプル率/ビット深度無音先頭の扱い等をQC。
  4. 受領応答/取り込み通知
    • 受信後のキュー処理→取り込み→QC差し戻しのフローが発生。差分修正はパッチERNまたは訂正CSVで再送。
    • (一般論としての運用像。“Qobuzはレーベル/ディストリから直接受領する”ことは公言されています)

ステップ4|メタデータ設計(ハイレゾ/所有価値を最大化)

  • 音質タグ24-bit/96〜192kHzの明記。録音方式、機材、会場、ノーマライズ方針(不要/推奨)も解説的に
  • 識別子:ISRC(トラック)/UPC(リリース)を必須セット。
  • 言語/ジャンル/参加者:クラシック/ジャズ系は作品/楽章/指揮/オーケストラなどDDEXでの古典系拡張も丁寧に。
  • アート/ブックレット:高解像度(多くのDSPは3000×3000px以上を推奨)、ライナーノーツPDF併売で“聴けて、集められる”UXに寄与。

ステップ5|価格・リリース設計(配信+ダウンロード)

  • Qobuzは“ストリーミング&ダウンロードストア”併設。サブスクSublimeではハイレゾ購入割引が効くため、“聴いて→気に入れば購入”のLTV設計が可能。
  • ウィンドウ運用:先行でダウンロード販売のみ解放→後からストリーミング解放、国別解禁など。
  • 提供地域26か国を意識し、日本/北米/欧州の権利・価格帯を調整。

ステップ6|編集露出・連携

  • Qobuzは編集主導/マガジン型のキュレーションが強み。録音哲学・制作記録(例:金田式DC)を“読み物”として提出。マガジンの編集主旨は公式に明記。
  • 外部連携/API:プレイヤー/ハード連携や自社サイト統合ではQobuzアプリ/UXガイド・API連絡先を参照。

ステップ7|会計・レポート・テイクダウン

  • DSP→ディストリの明細DDEX DSRやCSVで月次処理が一般的(契約で確定)。
  • テイクダウン/訂正DDEXのUpdate/TakeDownメッセージ、または合意した補助フォーマットで回す。
  • 日本展開の強化:Xandrieはe-onkyo musicの買収を発表(2025年10月)。日本でのハイレゾ市場に積極姿勢。

実装チェックリスト

  • Qobuzとの直取引:コンテンツパートナー申請(レーベル/ディストリ契約)
  • DDEX ERN生成系(社内ツール or 既存SaaS)を構築。
  • 音源/アート納品仕様をQobuz側と取り決め(ハイレゾFLAC/WAV、アート大判)。
  • 24bit/96–192kHzでマスター統一、ISRC/UPC採番。
  • 価格/地域/発売日をERNのDealTermsに正しく反映。
  • 編集向け資料(録音方式・機材・会場・哲学)とブックレットPDFを用意。
  • 売上レポート受領(DSR/CSV)→会計仕訳→レーベル/参加者精算の自動化。

まとめ

  • 音質・所有の両立=Qobuz
  • 露出と発見=Spotify(Lossless時代でも“可逆だがハイレゾではない”点を認識)