Moog Messenger 徹底解説 – クラシックMoogと最新機能を融合した次世代モノシンセ
Moog Messenger(モーグ・メッセンジャー)は、2025年にMoog社から登場したモノフォニック(単音)・アナログシンセサイザーです。
往年のMinimoogをはじめとするクラシックMoogシンセの設計思想を受け継ぎつつ、ウェーブフォールディングやマルチモード対応フィルターなど現代的な機能拡張を盛り込んだ次世代機となっています
32鍵のコンパクトなセミウェイテッド鍵盤を搭載し、ベロシティ(力度)やアフタータッチにも対応した本格仕様でありながら、価格は約12万円(税込)とMoogとしては手の届きやすい設定に。
プリセットメモリーも256音色分内蔵しており、電源を入れてすぐにクラシックなリードや厚みのあるベースサウンドを鳴らすことができます。

この記事を担当:こうたろう
1986年生まれ
音大卒業後日本、スウェーデン、ドイツにて音楽活動
ドイツで「ピアノとコントラバスのためのソナタ」をリリースし、ステファン・デザイアーからマルチマイクREC技術を学び帰国
金田式DC録音のスタジオにて音響学を学ぶ
独立後芸術工房Pinocoaを結成しアルゼンチンタンゴ音楽を専門にプロデュース
その後写真・映像スタジオで音響担当を経験し、写真を学ぶ
現在はヒーリングサウンド専門の音楽ブランド[Curanz Sounds]を立ち上げ、ピアニスト, 音響エンジニア, マルチメディアクリエーターとして活動中
当サイトでは音響エンジニアとしての経験、写真スタジオで学んだ経験を活かし、制作機材の解説や紹介をしています。
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主な仕様一覧
イケベ楽器に在庫あり!Messenger (極少数在庫あり!) モーグ メッセンジャー アナログシンセサイザー
項目 | 内容 |
---|---|
シンセタイプ | モノフォニック(単音)アナログシンセサイザー |
鍵盤 | 32鍵セミウェイテッド(ベロシティ&アフタータッチ対応) |
オシレーター | アナログVCO×2基(連続可変波形、ウェーブフォールディング機能搭載)、サブオシレーター(連続可変波形)、ノイズジェネレーター内蔵 |
フィルター | トランジスタ・ラダー式フィルター(4極ローパス、2極ローパス、バンドパス、ハイパスの4モード切替);Res Bassスイッチにより高レゾナンス時の低音減衰を補償;外部入力/フィードバック用ノブ搭載(後述) |
エンベロープ | ADSRエンベロープ×2基(フィルター用・アンプ用)搭載;ループ機能付きでLFO的動作も可能;マルチトリガー対応(レガート演奏時の再トリガー設定) |
LFO | LFO×2基搭載:可変波形LFO1(PWMやフィルターFMなど複数の変調先に割り当て可能)、三角波固定のLFO2(モジュレーションホイールにハードワイヤード連動) |
シーケンサー | 64ステップ・シーケンサー内蔵(各パッチごとに1パターン保存可能、最大256パターンまでメモリ;ステップごとのパラメータ値記録(モーションシーケンス)対応;確率設定やノートプールによるランダム生成機能搭載 |
アルペジエーター | 内蔵(複数のパターンモード、オクターブ範囲設定、リズム即興入力機能をサポート) |
プリセットメモリ | 256音色(16バンク×16パッチ)を保存可能。出荷時にクラシックリード、ベース、パッド、ドラム音色など240種以上をプリロード済み |
音声入出力 | メインアウト(モノラル標準フォーン)、ヘッドホンアウト(ステレオ標準)、オーディオ外部入力(モノラル) |
コントロール端子 | MIDI In/Out(DIN5ピン)、USB Type-C(USB-MIDI)、CV In/Out(各3.5mmミニ)、Gate In/Out(ミニ)、Clock In/Out(ミニ)、サステインペダル入力、エクスプレッションペダル入力 |
サイズ・重量 | 幅約66cmのコンパクト筐体、重量約4.95 kg(Moogシンセとしては軽量) |
発売時期・価格 | 2025年6月発売(国内定価 ¥119,800〈税込〉)※米国定価 $799(2025年6月時点) |
音源構成:オシレーターとミキサー
Messengerの基本構成はオーソドックスな2VCO方式。
本体左側のパネルにオシレーター(OSCILLATORS)セクションとミキサー(MIXER)セクションが配置されています。
2基のメインVCO(OSC1/OSC2)はいずれも波形連続可変に対応しており、三角波からのこぎり波、矩形波までつまみ操作で連続的に波形を変化させることができます。
通常のアナログシンセで見られるパルス幅変調(PWM)は矩形波の幅を変える機能ですが、Messengerでは全ての波形領域を滑らかにモーフィング可能なため、LFOやエンベロープでこの波形をモジュレーションすることでより多彩で有機的な音色変化を作り出せます。
さらに本機の大きな特徴としてウェーブフォールディング回路が各オシレーターに内蔵されています。
これは波形を折りたたんで倍音を生成するもので、シンセモジュールの世界では珍しくありませんが、Moogシンセとしては初搭載の機能です。
ウェーブフォールディングにより、従来のMoogには無い複雑で鋭いトーンの音作りも可能になっています。
フィルター:ラダー回路と多彩なモード
Moogと言えば定番のトランジスタ・ラダー式ローパスフィルターですが、Messengerではそのラダーフィルターが大きく強化されています。
パネル右側のFILTERセクションには4つのフィルターモード切替スイッチがあり、伝統的な4極(24dB/oct)ローパスに加えて、2極(12dB/oct)ローパス、そしてバンドパスとハイパス動作にも切り替え可能です。
Moogシンセでマルチモード対応は珍しく、このポールミキシング構造により多彩なフィルターサウンドが得られます。
レゾナンス(共鳴)も高く設定すれば自己発振するほど鋭く効きますが、Messengerには**「Res Bass」スイッチ**が搭載されており、レゾナンスを上げた際に失われがちな低音域をブーストして補ってくれます。
この機能のおかげで、従来のラダーフィルターでは難しかった「高いレゾナンスによる尖った音色と厚みある低音」を両立させることができます。
さらにMessengerのフィルター部には外部入力/フィードバック用ノブ(FB/EXT IN)が設けられています。
背面のオーディオ入力端子(EXT IN)に外部音源をつなげば、その音声をフィルターに通してアナログ処理することが可能。
また何もつながない状態では内部回路が自己フィードバックし、出力を再入力して回すことで音色にドライブ(歪み)を加えることができます。
これはいわばヴィンテージのMinimoogで行われていたヘッドフォン端子からのフィルターフィードバック技法を手軽に再現できる機能で、音に荒々しさと迫力を加えることができます。
加えて、OSC2 → CUTOFFというノブも用意されており、2基目のオシレーターOSC2をモジュレーターとしてフィルターのカットオフ周波数を高速変調することができます。
通常のLFOよりも高速(オーディオ帯域)な振動でフィルターを揺らすことで、まるでエフェクターのワウペダルを超高速で踏みまくったような独特の効果音や金属的な質感を得られます。
このようにMessengerのフィルターは、クラシックなMoogサウンドから過激な現代的サウンドまで対応する柔軟かつ強力な音色変化の要となっています。
入出力・外部接続
背面端子も充実しており、現代のあらゆる音楽環境にスムーズに統合できます。
オーディオ出力はモノラル仕様ですが、そのぶん潔くシンプルで外部エフェクターとの相性は抜群です。
とくにリバーブなど空間系エフェクトを組み合わせればモノラル音源でもリッチな広がりが得られるため、Messengerにはあえてエフェクトを内蔵しない設計になっているとも言えます。
実際、エフェクト非搭載のおかげで手持ちのギター用ペダルなどを気軽に繋いで音作りできる点は魅力です。
先述の通り外部入力端子も備えているため、たとえばギターや別のシンセの音をMessengerのラダーフィルターとエンベロープで加工するといった使い方も可能です。
MIDIは5ピンのDIN端子(IN/OUT)に加え、USB Type-C端子も装備しており、パソコンとUSBケーブル1本でMIDIの送受信が可能。
PCのDAWからMessengerを演奏したりシーケンスパターンを同期させたりといったことが容易に行え、宅録環境との親和性も高くなっています。
またCV/Gateの入出力端子(各ミニジャック)も搭載しており、モジュラーシンセや他のアナログ機材との電圧信号による同期・連携ができます。
例えばMessengerのシーケンサーのクロックアウトをヴィンテージのリズムマシンに送ってテンポ同期したり、その逆にモジュラーからのCV信号でMessengerのピッチやフィルターをコントロールする、といった拡張も思いのまま。
加えて、サステインペダル端子とエクスプレッションペダル端子も備えており、フットペダルによる演奏制御(例えばフィルターカットオフを足元で操作など)も可能です。
イケベ楽器に在庫あり!Messenger (極少数在庫あり!) モーグ メッセンジャー アナログシンセサイザー
使用シーン:ライブから宅録まで
Moog Messengerはライブステージからホームスタジオまで幅広い環境で活躍します。
日本円で約12万円という破格の価格設定となっており、はじめてのシンセサイザーに、ビンテージサウンドを求める方に、ライブパフォーマンスにと、多くの方におすすめの一台になっています。