【音源あり】プロの結論 Earthworks QTC30, 40, 50 徹底比較|「時空を超えるマイク」の選び方
この記事の目次
音楽家:朝比奈幸太郎 Kotaro Studio/Curanz Sounds代表
1986年神戸生まれ。
音大卒業後、ピアニストとして関西を中心に活動、その後渡欧(スウェーデン・オランダ・ドイツ)。
ドイツにてAchim Tangと共に『ピアノとコントラバスのためのソナタ』をリリースし、ケルンの名門ライブハウス:ロフトにて、ステファン・デザイアー氏よりマルチマイク技術を習得。
帰国後、ピアノソロアルバム作品制作を機に金田式DC録音の巨匠・五島昭彦氏に弟子入りし、ステレオペア録音や音響学の真髄を学ぶ。
現在はCuranz Soundsにてヒーリング音響を研究しながら、「演奏家の呼吸」まで切り取る自作マイクP-86Sを開発。
2025年よりビンテージオーディオのRevoxのレストア技術を習得し、オーディオ文化の保全継承にも尽力している。
EARTHWORKS(アースワークス)は、1979年にデヴィッド・ブラックマー氏によって設立されました。
レコーディングマイク、測定用マイクなどを手掛ける、アメリカのオーディオメーカーです。
アメリカ発のマイクロフォンメーカーということで、多くのジャズミュージシャンが愛用していることでも有名です。
結論
QTC40, 50を検討中の方。
買いです!
間違いない価格に見合った音響効果を実感できると思います。
QTC30を検討の方はぜひ最後まで読んでみてください。


一般向けマイク

「まるで、スピーカーの存在が消えたようだ。」
初めてEarthworksのマイクを通した音を聴いた時、多くのエンジニアがそう漏らします。
無指向性マイクは数あれど、Earthworks QTCシリーズが別格とされる理由は、単に周波数特性がフラットだからではありません。
その真価は、「時間軸(タイム・ドメイン)」の圧倒的な正確さにあります。
QTCとは “Quiet Time Coherent” の略。
つまり、「時間的な滲みが一切ない」ということ。
このマイクで録ると、楽器の立ち上がり(トランジェント)が恐ろしいほどリアルに記録され、再生した瞬間に「そこに楽器がある」ような錯覚を覚えます。
しかし、ラインナップには「QTC30」「QTC40」「QTC50」が存在し、価格差も大きいため、どれを選ぶべきか悩む人が後を絶ちません。
本記事では、この3機種の違いを明確にし、「QTC50を買うべき人」と「QTC30を買うなら別の選択肢を検討すべき理由」について、プロの視点で解説します。
1. QTC 30 / 40 / 50 の決定的な違い
見た目はほぼ同じこの3本。
でもどれを買ってもいいというわけではありません。
最大の違いは「高域の周波数特性(どこまで高い音が録れるか)」にあります。
| モデル名 | 周波数特性 | 市場価格(目安) | プロの評価 |
|---|---|---|---|
| QTC 30 | 6Hz – 30kHz | 一本約11万円(2026年時点) | 入門機だが高価 |
| QTC 40 | 4Hz – 40kHz | 一本約16万円(2026年時点) | 標準モデル |
| QTC 50 | 3Hz – 50kHz | 一本約20万円(2026年時点) | 究極のハイレゾ |
人間の耳には聴こえない「50kHz」の意味
「人間の可聴域は20kHzまでなのに、50kHzなんて意味があるのか?」
そう思うかもしれません。
しかし、Earthworksの哲学は違います。
なぜ超高域が必要なのか?
可聴域外の超高域まで正確に捉える能力があるからこそ、可聴域内(20kHz以下)の波形が一切崩れず、「位相のズレ」が極限までゼロに近づくのです。
つまり、QTC50の価値は「高い音が録れること」ではなく、「目に見えるほどリアルな波形(インパルス応答)が録れること」にあります。
これこそが、Earthworksが「時空を超えるマイク」と呼ばれる所以です。
Earthworksを買うならQTC40、50にしてください。
2. 実機検証と音質レビュー
それでは、ここからはQTC30を使用した実際の録音データを検証していきましょう。
(※以下は、私が実際に所有していたQTC30で収録した、龍笛とピアノの録音データです)
著作権上当記事に添付できる音源はQTC30しかないのですが、QTCのニュアンスを感じることができるとともに、QTC30を検討しておられる方は、なるほど、「これなら他の無指向性を検討してみようかな?」という意見に立ち返る可能性もあります。
他の無指向性を検討している方は、当スタジオのクラフトマイクも後ほどご紹介させていただきます。
また、DPA4006やゼンハイザーとの聴き比べも用意していますので、ぜひヘッドホンや自慢の音響システムでブラインドテストしてみてください。
ちなみにこちらのテストで採用しているものは、当スタジオのX-86Sのプロトタイプモデルであり、現在モデルはよりDPAに近い音質や性能向上を遂げています。
こちらの動画では、4種類の無指向性マイクをブラインドで聴き比べできます。
みなさんはどれがQTC30かわかりますか?
ゼンハイザーMKE-2や当スタジオのクラフトマイク、DPA 4006の音も含まれています。
※ 公平性を保つため、音量差やEQなどの後処理は行っていません(可能な限り同条件で収録)。
Microphone A : DPA4006(約80万円)
Microphone B : Sennheiser MKE-2(約14万円)
Microphone C : スタジオオリジナルマイク:miniXLR版のX-86S(3万6900円)
Microphone D : Earthworks QTC30(約28万円)
改めて、Earthworks QTC30の音のみピックアップ

Piano + Cello + CL教会録音
Piano + ソプラノ歌手 教会録音
現在(2022年8月時点)だとF6やF3などもおすすめです。
こちらの教会収録の分は以下の記事で指向性マイクKM184の音源を掲載していますので、是非比較試聴してみてください。
龍笛ソロ:吉備楽
意外でしたが、日本の古楽器などとの相性はいいように感じました。
他に笙の収録などをしましたが、やはり笙などの空間を演出する楽器には無指向性マイクが合いますよね。
QTC30の次にKM184も聞いてみてください。
結論:Earthworksの「凄み」を買うか、賢く「音」を手にするか
ここまで、Earthworks QTCシリーズの驚異的な性能を解説してきました。
特に上位機種である「QTC40」や「QTC50」が持つ、40kHz〜50kHzまで伸びる超広帯域な特性は、まさに「時空を超えるマイク」と呼ぶにふさわしいものです。
Earthworksファンの方:迷わず「40」以上を検討してください。
もしあなたがEarthworksというブランドの哲学に惚れ込み、その真価を体感したいのであれば、妥協して中途半端に「QTC30」を選ぶべきではありません。
30kHz止まりのQTC30も素晴らしいマイクではありますが、Earthworksの真骨頂は、さらにその上の帯域にあります。
予算が許すなら、迷わずQTC40、あるいはフラッグシップのQTC50を選んでください。
それは一生の財産になります。
あなたには、もっと賢い「1/10の価格の選択肢」があります。
Earthworksの真髄。40kHz〜50kHzまでの超広帯域で、空気の粒子まで記録する。予算度外視で最高の結果を求めるならこれ一択。
P-86S / X-86S
無指向性AB方式にてDPA4006とブラインドでわからない人多数。
特にX-86Sは、XLR変換アダプターを使用することで、ファンタム電源駆動のプロ機材としても運用可能です。
妥協のない広帯域録音には QTC40/50 を。
そして、QTC30クラスのリアルな音質を、驚くべきコストパフォーマンスで手に入れたいなら P-86S / X-86S が正解です。
QTC無指向性フラッグシップマイクロフォンの中でも最も安価で入手できるモデル。
音は間違いなくQTC。
セッティング次第で音が化ける可能性を秘めたシリーズの中でも最もお手軽価格で体験できるモデルですが、検討中の方はKotaro StudioのX-86Sをぜひ比較検討してほしい。
QTC30ステレオペアの価格比較
フラッグシップシリーズの中では中間に位置するQTC40は30と比較しても圧倒的な音の差があるため、少し高くてもそれだけの価値は十分にあります。
ジャズサキソフォーンのブランフォードマルサリスもこのQTC40が好みであるという噂を聞いたこともあるほど、確かにサキソフォーンの音とかなりマッチするように感じます。
サックスをよく録音する方やサックス奏者の方はかなり有力な選択肢となります。
QTC40ステレオペアの価格比較
フラッグシップシリーズの中では頂点に君臨するQTC50
お値段しっかり、音質もしっかりです。
ただし、この辺りにお値段になってくるとDPAやショップスなど他の選択肢も十分に考慮するべきで、QTCの音質に対して、自分はどこに惚れているのか?じっくり検討する必要があります。
QTCの音に惚れているのであれば一生涯のパートナーともなりえる存在です。
QTC50ステレオペアの価格比較
この記事を書いた人:朝比奈 幸太郎
音大卒業後ピアニストとして活動後、渡独。
帰国後タイムマシンレコード・五島昭彦氏に師事し、究極のアナログ録音「金田式DC録音」の技術を継承。
Revox等のヴィンテージ機材のレストア技術を持ち、マイク、アンプ、スピーカーに至るまでシステムを根底から自作・設計する録音エンジニア。
物理特性と芸術性が融合する「本物の音」を追求・発信している。

