【2026年版】音圧を上げてもYouTubeで音が小さい原因は?「ラウドネスノーマライゼーション」の罠と3つの解決策

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「マキシマイザーで限界まで音圧を突っ込んだ(海苔波形にした)から、これで誰よりも目立つ爆音になるはずだ!」
そう信じてYouTubeに曲をアップロードした瞬間、絶望した経験はありませんか?

  • 自分の曲: 音が小さく、奥に引っ込んでいて、迫力がない。
  • プロの曲: 音量は揃っているのに、ドラムが前に飛び出し、太く聴こえる。

実は2026年現在、YouTubeやSpotifyなどの配信プラットフォームにおいて「音圧(波形の太さ)」と「再生される音量」はイコールではありません。

むしろ、音圧を上げすぎることが、逆にあなたの曲を貧弱に聴かせている原因になっているのです。
この記事では、そのメカニズムである「ラウドネスノーマライゼーション」の仕組みと、配信時代に「勝つ」ための具体的な対策を解説します。

Profile

この記事を担当:朝比奈幸太郎

1986年生まれ
音大卒業後日本、スウェーデン、ドイツにて音楽活動
ドイツで「ピアノとコントラバスのためのソナタ」をリリースし、ステファン・デザイアーからマルチマイク技術を学び帰国
帰国後、金田式DC録音専門レーベル”タイムマシンレコード”て音響を学ぶ
独立後芸術工房Pinocoaを結成しアルゼンチンタンゴ音楽を専門にプロデュース
その後写真・映像スタジオで音響担当を経験、写真を学ぶ
現在はヒーリングサウンド専門の音楽ブランド[Curanz Sounds]を立ち上げ、音楽家, 音響エンジニア,として活動
五島昭彦氏より金田式DC録音の技術を承継中
当サイトでは音響エンジニアとしての経験、写真スタジオで学んだ経験を活かし、制作機材の解説や紹介をしています。
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原因:「ラウドネスノーマライゼーション」という強制執行

なぜ、頑張って上げた音圧が無駄になるのでしょうか?
それは、プラットフォーム側が「すべての動画・音楽の音量を一定に揃える機能(ラウドネスノーマライゼーション)」を強制的に働かせているからです。

YouTubeの基準値は約「-14 LUFS」

YouTubeには「-14 LUFS」という基準(ターゲット)音量があります。
もしあなたが、CD時代の感覚で「-6 LUFS」という超爆音のデータを作ってアップロードしたとしましょう。

YouTubeのAIはこう判断します。

「おっと、この曲は基準(-14 LUFS)より 8dBもうるさい な。他の動画とバランスが悪いから、再生時に強制的に8dB下げておこう

これが「ラウドネス・ペナルティ」です。

「音圧が高い曲」が下げられるとどうなるか?

ここが最大のポイントです。

  • A. 適度なダイナミクスを残した曲(-10 LUFS):
    • 4dBだけ下げられる。波形の山(ドラムのアタックなど)が残っているため、音量が下がっても「パンチ感」がある。
  • B. 限界まで潰した海苔波形の曲(-6 LUFS):
    • 8dBも下げられる。もともとマキシマイザーでピークを潰して平坦にしているため、音量を下げられると**「ただ全体が小さいだけの、平面的で迫力のない音」**になる。

つまり、「音圧の上げすぎ」は、YouTube上では「音質の劣化」と「迫力の低下」しか生まないのです。

【2026年最新】主要プラットフォームのターゲット値

対策を立てる前に、敵(プラットフォーム)の仕様を知りましょう。
※数値は目安であり、変更される可能性があります。

プラットフォーム基準値 (目安)挙動の特徴
YouTube-14 LUFS基準より大きい音は強制的に下げられる。小さい音は上げられない(そのまま)。
Spotify-14 LUFS基本設定。有料会員は設定でノーマライズをOFFにできるが、多くのユーザーはONのまま聴いている。
Apple Music-16 LUFS他より少し基準が低い。Apple独自の高音質エンコード(Apple Digital Masters)がある。

「じゃあ、マスタリングでピッタリ-14 LUFSで作ればいいの?」
答えはNOです。 
それでは、ノーマライズ機能がない再生環境(CDやSoundCloudの一部など)で聴いた時に「音が小さすぎる」と感じてしまいます。

次章で、プロが実践する「最適解」を教えます。

YouTubeで「音が大きい」と思わせる3つの対策

数値を下げるだけではなく、人間の耳の錯覚(聴感上の音量)を利用するのがコツです。

対策① ターゲットは「-9 〜 -10 LUFS」を狙う

現代のポップスやロックにおいて、最もバランスが良い「スイートスポット」です。

  • 理由: -14 LUFSで作ると、市販の曲に比べて「音の密度(スカスカ感)」が足りなくなりがちです。
  • 戦略: -9 LUFS程度で作っておけば、YouTubeで5dBほど下げられますが、「音の密度」は保たれたまま再生されるため、結果的に「太い音」としてリスナーに届きます。-6 LUFSまで突っ込むのはやめましょう。

対策② 「トゥルーピーク」を -1.0 dBTP に抑える

マキシマイザーの天井(Ceiling/Output)を「-0.1dB」にしていませんか?
YouTubeなどの配信サイトでは、アップロード時に音声が圧縮(エンコード)されます。
この時、天井ギリギリで作っていると、圧縮時の誤差で0dBを超えてしまい、「歪みノイズ」が発生します。

  • 設定: マキシマイザーのOutput設定は 「-1.0 dB」 に設定し、必ず 「True Peak」 モードをONにしてください。これだけで音がクリアになり、抜けが良くなります。

対策③ EQで「聴感上の音量」を稼ぐ

「メーターの数値(LUFS)」は低いのに、「耳では大きく聴こえる」魔法があります。

  • 低域(30Hz以下)をカット: 耳に聴こえない超低音は、メーターの数値だけを跳ね上げます。これをカットするだけで、その分のエネルギーを他の帯域に回せます。
  • 中高域(2kHz〜5kHz)をサチュレーション: 人間の耳は、この帯域を「大きな音」として認識します。マキシマイザーで潰すのではなく、サチュレーターなどでこの帯域に倍音を足すと、YouTubeで音量を下げられても「音の存在感」は消えません。

ただし、EQは楽曲の印象を決める非常に重要な要素ですので、フォームと数値だけで決定するのではなく、必ず耳で慎重に聞き分けながら設定しなければいけません。

まとめ:良いマキシマイザーで「余裕」を持たせる

YouTubeで音が小さい原因は、マキシマイザーで「音を詰め込みすぎていること」でした。

  1. 音圧戦争から降りる: ターゲットは -9 〜 -10 LUFS
  2. 隙間(ダイナミクス)を作る: 潰しすぎないことで、ノーマライズ後もパンチ感が残る。
  3. 天井を下げる: Outputは -1.0 dB

この絶妙なコントロールを行うためには、「音が歪まず、視認性が高い」高品質なマキシマイザーが不可欠です。
「どのプラグインを使えばいいかわからない」「プロと同じようにコントロールしたい」という方は、ぜひ以下の記事で紹介している最新のマキシマイザーを導入してみてください。
道具が変われば、音作りへの意識も劇的に変わります。

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