【永久保存版】偉大なる映画監督4選 / 黒澤手法まで徹底解説

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執筆:朝比奈 幸太郎 / 音楽家・宗教文化研究家

音楽大学で民族音楽を研究。
卒業後ピアニストとして活動。
インプロビゼーション哲学の研究のため北欧スウェーデンへ。

ドイツにて民族音楽研究家のAchim Tangと共同作品を制作リリース。
ドイツでStephan Schneider、日本で金田式DC録音の五島昭彦氏から音響学を学ぶ。

録音エンジニアとして独立し、芸術工房Pinocoaを結成。
オーストリア、アルゼンチンなど国内外の様々なアーティストをプロデュース。

写真家:村上宏治氏の映像チームで映像編集&音響を担当。

現在はヒーリング音響を研究するCuranz Soundsを立ち上げ、世界中に愛と調和の周波数を発信中。

アンドレイ・タルコフスキー

引用:Wikipedia

筆者が最も大好きな映画監督の一人です。

Andrei Arsenyevich Tarkovsky 1932年4月4日 – 1986年12月29日)54歳没。

筆者が初めて彼の作品に出会ったのは、彼の遺作となった「サクリファイス」。

彼の作風でもありますが、冒頭部分のシーンで一気にその作品の世界観を演出し、引き込みます。

サクリファイスも冒頭のシーンで一気に心を奪われてしまいました。

すべての映像が、すべてのカットが抒情的で、一枚の芸術作品が連なってストーリーとなっていくよう。

一枚のカットそのものに抒情的な芸術が感じられるため、1コマ1コマ常に脳が刺激され、楽しむことができます。

サクリファイスも冒頭のシーンの映像美だけでお腹いっぱいになってしまいます。

もちろん内容も非常に哲学的要素が満載。

他には、惑星ソラリスなど数々の代表作がありますが、ノスタルジアが非常におすすめ。

こちらも、冒頭からあまりにも美しいノスタルジックな映像美にノックダウンさせられてしまいます。

日本の映像業界でもタルコフスキーのファンは多く、例えばこちらの「雨音はショパンの調べ」 のMVはこのノスタルジアのシーンの一部をカバーしたものになります。

それにしても小林麻美さんは美しいですね。

「雨音はショパンの調べ」は1984年リリースですから、このとき31歳です。

この印象的な寝室の構図。

ノスタルジアにも同じ構図のシーンが登場しますので、是非タルコフスキーが撮影した同じ構図で比べてみてください。

タルコフスキーの凄さ・・・が分かると思います。

ポイントサクリファイスはエンディングのシーンで家屋が全焼するシーンがあり、途中でカメラが止まってしまったため、すべてのセットを作りなおしたそうです。
タルコフスキー作品のポイント彼の作品には、劇中のBGMが登場しません。
決して無声映画ではありませんが、ここに彼の映像美へのこだわりが感じられます。

小津安二郎

引用:Wikipedia

1903年(明治36年)12月12日 – 1963年(昭和38年)12月12日)60歳没。

筆者が初めて小津監督の作品に出会ったのは今や伝説とも言える代表作:東京物語。

完璧主義とも言える小津美学が感じられる作品です。

小津監督は、すべてのシーンカットで、しっかりとファインダーで覗き、そこに映るすべての物、小道具なども細かく数センチ~数ミリ単位で微調整しながら撮影したと言われています。

小津作品の映像も1コマ1コマどこか不思議な違和感を感じるのはこのため。

自然な日常を撮影したシーンでも一つの小道具を動かしただけでもすべてが崩壊してしまいそうな緊張感と一種の恐怖のようなものを感じながら視聴することになります。

日常という自然に対して、すべての小道具や日常が完璧なまでに計算された異世界さをみるのも小津作品の楽しみ方の一つ。

俳優への演技指導も徹底しており、立ち位置はもちろん、身体の細かい角度、動きなどのコンテ、さらに視線なども細かく決められていたと言われています。

少しでも俳優と、小津監督とのイメージにずれがあると、何度でもNGを出すことで有名です。

スタイル俳優が自由に「演技」をすることを好まなかったそうです。
東京物語にも出演している笠智衆( りゅう ちしゅう )は『父ありき』の撮影前に小津から「ぼくの作品に表情はいらないよ。表情はなしだ。能面で行ってくれ」といわれたと述べています。

ローアングルとローポジション

小津監督はローポジションの名手とも言われています。

ここで注意したいのは、ローアングルとの違い。

ローアングルは下から煽っていくスタイルですが、ローポジションは決してあおりません。

カメラを低い位置にすえて、ごくわずかにレンズを上にあげる程度。

基本的にはカメラを大人の膝位置より低く固定し、50ミリの標準レンズで撮っていたそうです。

スタッフは「ロー・ポジ」用に特別に極低の三脚を作り、小津の好きな赤に塗って「蟹」と呼んだ。

また、家屋内での撮影の際のフレームに注目してみてください。

その部屋のフレームが写っていることに気付きませんか?

このフレームを入れることにより、部屋だけでなく、家屋の中の部屋というものを定義することができるのと同時に、視聴者は箱庭的な非日常を感じることができます。

是非小津安二郎監督の完璧主義的なセットと演技、そして、ローポジションを伝説の映画:東京物語で体験してみてはいかがでしょうか?

黒澤明

引用:Wikipedia

最初に紹介したアンドレイ・タルコフスキーが最も尊敬していたと言われる黒澤 明氏。

世界的な映画監督の中でも黒澤 明のファンは多数おり、世界のクロサワという異名を持っています。

2020年2月現在は、Amazonのプライムビデオで視聴できるみたいなので、Amazonの会員の方は是非みてみてください。

撮影へのこだわりと完璧主義的な部分は世界的にも有名で、数々の伝説的なエピソードが残されています。

例えば、この羅生門も、実際に羅生門を建設してしまいました。

間口18間(約33メートル)、奥行12間(約22メートル)、高さ11間(約20メートル)で、柱は周囲4尺(約1.2メートル)の巨材18本を使い、「延暦十七年」と彫られた瓦を4000枚焼いたそうです。

7人の侍でも使われた雨のシーンは、モノクロカメラで迫力のある雨の映像を撮るため、水に墨をまぜてホースで降らせたそうです。

カメラには写っていない大道具や小道具のディティールにもこだわりを尽くしました。

他にも、『蜘蛛巣城』のクライマックス、三船演じる鷲津武時が城兵の裏切りで、全身に矢を浴びハリネズミのようになって最期を遂げるシーンで、黒澤監督は、本物の矢がを使おうとし、三船は黒澤に「俺を殺す気か!!」と怒鳴ったというエピソードもあります。

黒澤監督なら本当に使いそうですから怖いですよね。。。

メインストーリーをトレースする黒澤手法

また、ロケでの撮影では、理想的な雨が降るまで何日でも待機、理想的な雲の形になるまで何日でも待機といったことは日常的だったと言われています。

エピソードや伝説はあまりに多いのでここでは割愛します。

黒澤映画で世界のクロサワを感じてみてはいかがでしょうか。

クロサワスタイルを楽しむコツ彼の映画を見ているとカメラの枠外での世界観がカメラの枠内の世界観とリンクしていることがわかります。
これはシークエンスを徹底的に追求したクロサワ映画ならではのスタイルと言えます。
映画の中そのものの世界観がカメラの中だけに留まっていない点が私たち視聴者に無意識のうちにその世界の一員となることを許されたような感覚に陥ります。
現代の映画制作などではなかなか再現できないスタイルとなっていますので、非常に貴重な概念であると言えます。
各シーンの移り変わりのシークエンスを意識して視聴してみてください。
世界は決して途切れることなくカメラの枠外でも続いていることがわかると思います。
ポイントわかりやすい例を挙げると、例えば三谷幸喜作品や、踊る大捜査線の前半部分などでも採用されている移動しながら他の世界観がうごめいていく手法。
軸となるメインストーリーをカメラは追うわけですがその軸の輪郭をはっきり出させるために他のストーリーが同時に展開していく様子を映します。
あれらは黒澤手法をデフォルメした感覚であると言えます。
視聴者は独特の没入感を味わうことができ、作品の世界観に呑み込まれていきます。

ちなみに黒澤監督は脳卒中により、88歳で亡くなりました。

酒もタバコも大好きで、大酒飲みだったそうです。

親友の淀川長治さん( 映画評論家)は黒澤監督の通夜に参列した際、棺の中の黒澤監督に向かって「僕もすぐに行くからね」と語りかけていたそうです。

淀川長治さんはその二か月後、腹部大動脈瘤破裂に伴う心不全で89歳でこの世を去ることになりました。

スタンリー・キューブリック

引用:Wikipedia

Stanley Kubrick, 1928年7月26日 – 1999年3月7日)70歳没。

筆者が初めて彼の作品に出会ったのは、彼の遺作となった「Eyes Wide Shut」

中学生の頃、初めて購入したDVDだったかもしれません。

当時かなり衝撃を受けた記憶があります。

その映像美と、採用されている音楽などなど。

当時はただ漠然と、映像と、音楽を垂れ流してみる印象でしたが、成人してからも3回は見ました。

非常に印象的で怪物キューブリックが遺憾なく発揮された作品であると言えます。

この映画では某組織の某儀式がそのまま再現されているとして話題になりました。

実はキューブリックは当初ジャズドラマーを目指して音楽に没頭していたそうです。

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写真雑誌『ルック』誌1945年6月25日号に自身の写真が売れ、見習いカメラマンとして在籍するようになり、写真・映像の世界へ進むことになります。

当時はローライフレックス・スタンダートというカメラを使い、6×6で撮影していたそうです。

ギネス記録

アイズ ワイド シャットは、キューブリック自ら「この作品が私の最高傑作だ」と語っています。

この映画はなんとギネスブックに世界記録として残っっています。

どんな世界記録?「撮影期間最長の映画」という部門で認定されています。
なんと総撮影時間は、46週=休暇を含めて400日(1年以上)2022年2月現在、未だにこの記録は破られていません。

それほどまでに没頭し、最高傑作だとも豪語するアイズ ワイド シャット。

なんと撮影終了後、編集などは監督自ら一人で行ったそうです。

これはもうYoutuber的な感覚ですよね。

そういう意味でも現代的な映像作家だったのかもしれません。

1999年3月2日、監督のキューブリック、出演者のクルーズとキッドマン、他スタッフの計4人による極秘の0号試写が行われますが、なんと公開を待たずして、5日後の1999年3月7日にキューブリックは心臓発作で急死することとなりました。

是非その映像美と音楽、そして、一度だけではなく、何度か見ることで見えてくる彼のメッセージなどを感じてみてください。

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