ドキュメンタリー制作:インタビュー音声の録音方法
ドキュメンタリー制作でインタビューは情報の核となります。
映像がいくら素晴らしくても、音声が不明瞭では説得力がありません。
ここでは、一般的な録音方法と、当スタジオが提案する無指向性AB方式によるステレオ収録のメリットを比較しながら、最適なインタビュー録音の方法を解説します。
この記事を担当:朝比奈幸太郎
1986年生まれ
音大卒業後日本、スウェーデン、ドイツにて音楽活動
ドイツで「ピアノとコントラバスのためのソナタ」をリリースし、ステファン・デザイアーからマルチマイク技術を学び帰国
帰国後、金田式DC録音専門レーベル”タイムマシンレコード”て音響を学ぶ
独立後芸術工房Pinocoaを結成しアルゼンチンタンゴ音楽を専門にプロデュース
その後写真・映像スタジオで音響担当を経験、写真を学ぶ
現在はヒーリングサウンド専門の音楽ブランド[Curanz Sounds]を立ち上げ、音楽家, 音響エンジニア,として活動
五島昭彦氏より金田式DC録音の技術を承継中
当サイトでは音響エンジニアとしての経験、写真スタジオで学んだ経験を活かし、制作機材の解説や紹介をしています。
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一般的な録音方法

ながらくテレビ放送では、視聴者がモノラル受信であることが前提とされていたため、ショットガンマイクや指向性のマイクでのモノラル収録が一般的でした。
ただし、昨今は高性能なイヤホンや、ヘッドホン、また、スピーカーもステレオペアで購入する方も多く、ステレオでの試聴環境が標準的になってきています。
収録も是非ステレオでトライしてみるとこれまでとは違った世界が見えます。
ただし、自主制作ならとにかくクオリティー優先、音質優先で制作できますが、クライアントによっては昭和のモノラル収録に耳が慣れているため、前時代的な収録の方が好まれることも多いですので、一般的な収録方法についても少し見ていきましょう。
- ショットガンマイク
強い指向性を持ち、被写体の正面に向けて狩い撃ちするタイプのマイクです。
背景のノイズを抑えられるためテレビや映画で多用されますが、大きな箱体が目立ち、インタビュイーに心理的な圧迫感を与えがちです。
またマイクと口元の距離が離れると音が細くなりがち。 - ラベリアマイク(ピンマイク)
胸元に取り付ける小型マイクで、被写体の動きに追従しやすく視覚的にも目立ちません。
距離が一定なので音量は安定しますが、衣服と触れるとノイズとして入りやすく、モノラル収録のため空間の至まり感は失われます。 - ハンドヘルドマイク
リポーターや対談で使われる手持ちマイクで、音質は良好ですが手に持つ必要があり、映像に入れたくない場合には不向きです。
こうした一般的な方法は状況によって使い切りが必要ですが、どれも空間の広がりや至まり感が不足しがちです。
そこで、無指向性マイクのステレオペアをセットしてインタビュー録音をしてみるというのを提案したいと思います。
無指向性AB方式の提案
無指向性マイクのステレオペアを使用するAB方式は、ドキュメンタリー制作において臨場感あふれる音場を再現するための有効な方法です。
左右2本のマイクを平行に設置し、約20cmから60cmの間隔を空けることで、実際の人間の耳に近い広がりを持つステレオ録音が可能になります。
距離を広げるほど音像の幅が広がりますが、部屋の反射音も多く取り込みます。
この反射音の影響で、木材の部屋なのか?コンクリートの部屋なのか?
また独特の材質の部屋なのか?など部屋の材質や、大きさ、空間の広がりまですべて収音されますので、やはり視聴者に伝える情報量に圧倒的な差が生まれます。
無指向性AB方式のメリット
- 空間の広がりと臨場感: 無指向性マイクは360度から音を拾うため、部屋の大きさや残響をありのままに記録し、インタビューの臨場感を高めます。
- 演者の自然な表情を引き出す: ショットガンマイクのように指向性が強くないため、マイクによる威圧感が少なく、演者の緊張を和らげ、自然な会話を引き出します。
- 柔軟な設置: マイクを離して設置できるので、カメラフレーム内に機材を入れたくない場合でも対応しやすく、別々の位置から音を収録することで編集時のステレオ感調整がしやすくなります。
無指向性AB方式のデメリット
- 低周波ノイズの混入: 周囲の雑音を拾いやすく、特に屋外や空調の音が目立つ環境ではノイズ対策が必要です。
- 設置場所の制約: 2本のマイクを適切に配置するためにはある程度のスペースが必要で、狭い場所や動きの多い場面では設置が難しい場合があります。
- 後処理の難易度: 無指向性で収録した音は反射音も多く含むため、不要な響きを抑えるためのEQやノイズリダクション処理が必要になることがあります。
当スタジオの無指向性AB方式ラベリアマイクのご提案
当スタジオでは、無指向性のラベリアマイクをステレオペアとして販売しています。
これにより、演者に威圧感や緊張感を与えることなく、簡単にAB方式のステレオ収録が可能になります。
小型で目立たないためカメラに映り込みにくく、ショットガンマイクよりも自然な収録ができるのが特長です。
無指向性ラベリアマイクで広がる録音の自由度
無指向性のラベリアマイクを使用する最大の利点の一つは、その「設置自由度」にあります。
ラベリアマイクは一般的にモノラルで胸元などに取り付けることも多いですが、無指向性タイプの場合、マイクの向きに依存しないため、部屋の壁面やテーブルの上などに置いて「バウンダリーマイク(境界面マイク)」として運用することも可能です。
バウンダリーマイクとは?

バウンダリーマイクとは、テーブルや床、壁といった平面(境界面)に密着させることで、音の反射を最小限に抑え、自然で明瞭な音を収録できるマイクのことを指します。
反射音による位相のズレを防ぎつつ、直接音と間接音をバランスよく取り込むため、会議や対談、ナレーション収録などでもよく使用されます。
また、舞台などマイクを目立たせたくない場合や、子供のピアノ発表会のような、マイクの存在で極度に緊張する演者の方のために音楽収録でも積極的に使われています。
AKG ( アーカーゲー ) / C562CM バウンダリーマイク無指向性ラベリアをバウンダリーマイク的に使うメリット
当スタジオの無指向性ラベリアマイクは、小型で軽量、かつノイズの少ない高感度設計のため、テーブル上や床面などに置くだけで、臨場感のある自然なサウンドが得られます。
この方法を用いると、インタビュー時にマイクスタンドを目立たせずに済み、且つインタビュー対象者にピンマイクをつけてもらう必要もないため、被写体に心理的圧迫感を与えないという利点は非常に大きいです。
特にドキュメンタリー撮影の場合、映像の構図や、何を映して何を映さないか?の選択は非常に重要になってきますので、機材を画面に入れないというのは大切な要素の一つになってくるでしょう。
また、バウンダリーマイクをメインの空間用マイクとして、補助マイクとして、指向性のショットガンマイクなどを併用すると、いろいろな音響が想定できます。
セッティングのポイント
- 平面との距離をゼロに近づける:マイクカプセルを境界面に密着させることで反射を抑え、明瞭な音を得られます。
- テーブルの共振を防ぐ:柔らかいクロスを1枚敷くと、不要な低音共振を防止できます。
- ステレオ収録との組み合わせ:AB方式のステレオペアで設置すれば、バウンダリー効果を生かした広がりあるサウンドを再現可能です。
このように、無指向性ラベリアマイクは「衣服に付けるマイク」としてだけでなく、クリエイティブな録音ツールとして柔軟に活用できます。
収録環境に合わせて設置方法を工夫することで、あなたの作品の音響表現が一段と豊かになるでしょう。
まとめと次のステップ
ドキュメンタリー制作のインタビュー録音では、一般的なショットガンマイクやラベリアマイク、ハンドヘルドマイクの長所を理解したうえで、状況に応じて使い分けることが大切です。
しかし、より臨場感や自然な会話を重視したい場合には、無指向性AB方式が大きな力を発揮します。
部屋の響きや演者の感情まで包み込むこの方法を、ぜひ一度試してみてください。
興味をお持ちいただけた方は、当スタジオ自慢の無指向性ラベリアマイクステレオペアのページをご覧ください。