【シネマサウンド講座】たった一つのペアマイクだけで創る映画音響

こんにちは、音楽家の朝比奈幸太郎です。
こういうスタイルでブログを書くのは久しぶり?かもしれません。
普段はnoteやオーディオアカデミーで記事を書いています。
今日はスタジオのオリジナルマイクとシンプルなプラグインパワー対応レコーダーZOOMのH1essentialだけを使ってシネマサウンドを作ってみようと言う企画でございます。
組み合わせるパーツを確保する

今回のモデルは筆者が2025年から住んでいる北海道の足寄町での鹿狩の音。。。
といっても、鹿狩ってとっても繊細な活動なので、ハンティングど素人の筆者がマイク構えて録音というわけにはいきません。
ただし、今回地元のハンターさんの協力で、スコープの調整といってもちゃんと実弾を使った射撃の録音をさせていただきました。(もちろん免許を持ったこの道50年のベテランハンターさんの監督の元、法律を守って収録させていただいております)
ウインドスクリーンは必須

基本的に屋外での収録はどんなに風がないと感じてもウインドスクリーンは必須アイテムです。
ちなみにウインドスクリーンは特にこだわりがない限りは、もふもふタイプがおすすめ。
より強い風にも耐えられます。
パーツ撮り
さて、シネマティックサウンドを作成するにあたり、まず知っておいて欲しいことは、リアルを制作するという意識をしっかり持つこと。
それぞれのパーツの音は無指向性のAB方式で収録したシンプルな録音が最高であると当スタジオは考えています。
今回は、トヨタのハイラックスというハンターさん御用達の車のエンジン音と、環境音、それにライフルの発射音を組み合わせて、リアルなハンティングの様子を再現しようというものです。
実は別の現場で・・・
実は別の現場で、実際に狩された直後の鹿の鳴き声も収録してあります。
さすがにちょっと厳しいと感じる方が多いと思いますので、割愛させていただきますが、別日別シーンでの音も何かに使えるかもしれませんので、必ずラベリングして管理しておくといいですよ!
まずは、ライフルそのものの音を聴いてみましょう。
※(苦手な方はご注意&音量設定にご注意ください。)
弾をロードする音、マガジンの設置発砲そのものの音、無指向性ならではのあまりにもリアルな音ですね。
さすが本物のライフルは違います。
また、さすが32bit録音といったところで、仮に24bitでの録音なら音割れは仕方ないですし、サンプルの数が違っていたことでしょう。
なにせライフルの弾は一発940円、最後にお聞かせする180というサイズのものだと1500円が弾とともに飛んでいきます。
信号ラッパを吹くように「もう一回お願いします!」なんてとてもじゃないけど言えません。
次にこの発射している場所の空間音響を録音します。
こちらも32bit録音ですので、基本的にあとから調整でOKですが、さすがKotaro Studioのマイク。
まるでその場にいるかのよう。
で、的付近の音も録音しましょう。
木の板にこのような紙のターゲットを貼り付けて計測していきます。

こんな音になります。
※音量に注意
この音源は的の真下。
紙の音が聞こえるのがわかるでしょうか。
今回は50m離れた場所での的、弾は時速700mから800mほど、音速が340mほどですから、音速の倍の速さで飛んでいきます。
ディレイタイム
発射してから着弾音が発射地点に届くまでの遅延 = 弾が50 m飛ぶ時間 + 音が50 m戻る時間 です。
つまりだいたいですが、0.217 秒(約0.22秒)ほど。
この時間は後ほど今ご試聴いただいた音源をミックスする際の参考値として機能します。
次にトヨタハイラックスのエンジン音を混ぜていきます。
ハイラックスやそれクラスのオフロード車じゃないととてもじゃないけどいけない場所ですので、旅行で気軽に山の方に入らないように・・・
クマの通り道があったりと、土地勘がないと厳しいですし、草むらから急に崖なんて場所もあったりしますし、こういうライフルの試射ができるということは、、、当然人間を目にすることはありません。
それぞれを混ぜてみると・・・?
もちろん現場で的の音がこんなに聞こえることはありませんが、ライフルの音はかなりリアルに感じられるようになりました。
ちなみに弾の種類を変えるとこんなに音が違います。
威力の強い180。
大人の鹿や、熊の対応時にはこちらを使います。
実際森の中で打った音はよりリバーブがかかり、響きがすごいことになるわけです。
すべて当スタジオのオリジナルマイクだけで
収録しています。
工夫次第で映画音響
ステレオペア録音としてのAB方式はそのままで素晴らしい音が録音できます。
こんな感じで工夫してみるのもいいかもしれませんし、もちろん、Kotaro Studioのオリジナルマイクを軸にして、ショットガンマイクや指向性のマイクを駆使してシネマティックサウンドを制作してみるのもいいでしょう。
スタジオのマイク、その他の音源はこちらから!
マイクロフォンの参考音源さいごに

今回はスコープの調整の発射音を録音させていただきましたが、実際に狩をする時の音と圧倒的に違いを感じたため、何が違うのか?考えてみました。
一つは、やはり森の響きというものがあります。
圧倒的にリバーブ感が違いますし、これをデジタル処理でかけられるものではないので、なかなか再現するのは難しいでしょう。
的打ち自体は相当開けた場所でやっていますので、音はかなり抜けていってしまうと言う具合です。
もう一つ圧倒的な違いが、ハンターさんの殺気であることがわかりました。
鹿を打つ時のハンターさんの殺気、そして目は圧倒的なパワーを持っています。
それは確実に弾にエネルギーとして注がれており、音に影響しています。
的打ちの際はそういった殺気を感じなかったので音にもそれが現れていたのだと思います。
録音というのは、写真と同じ、シークエンスも表現できますし、そういう人の殺気とか、想い、感情も確かに残してくれます。
音に含まれている情報というのは、単に人間の可聴範囲で可視化された周波数の連続というものではなく、そういう次元を遥かに超えた総合芸術としての概念がそこにあるわけです。
もっと深く音のことを知りたい方は、オーディオアカデミーのサイトも遊びに来てください。
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