骨が引っかかったライオン
ある日、ライオンののどに骨が引っかかった。
誰でも自分ののどから骨を取り出すことのできた者には大きなほうびをあげようとライオンが言います。
そこへ一羽のツルがやってきて、「そのライオンを助けてあげよう」と言い、ライオンに口を大きく開けさせた。
ツルは頭をライオンの口の中に突っ込み、長いくちばしを利用して骨をうまく取り出した。
そのあと、「ライオンさん、あなたはどんなほうびをくれるのか?」と尋ねます。
ライオンはそのツルの口のきき方に立腹します。
ライオンは「私の口の中に頭を突っ込んで生きて出られたということが、ほうびなのだ。そういう危険な目にあっても生きて帰ったということは自慢できることだし、それ以上のほうびはない。」と言いました。
きつねとブドウ園
あるとき、一匹のキツネがぶどう園のそばに立って、何とかその中に入り込もうとしていました。
しかし、防犯のため柵があり、もぐりこむことができずにいました。
そこでキツネは3日間の断食をして体を細くし、やっとの思いで柵の間をくぐり抜けることに成功します。
ぶどう園に入り、キツネは思う存分ぶどうを食べます。
帰り道・・・
大満足のキツネでしたが、満腹のまま『さて、ぶどう園から抜き出そう』とする際、満腹のお腹が引っ掛かり同じ柵を抜けることができませんでした。
そこでやむを得ず再度3日断食し体を細くしてからやっと抜け出すことができました。
その時のキツネ曰く「結局、腹具合は入ったときと出る時と同じだったな。
恋の強み
ソロモン王にはたいへん賢い、美しい娘がいた。
彼はある日夢を見て、娘の未来の夫が娘にふさわしくない悪い男だということを予感した。
そこでソロモン王は、神のしわざがどんなものか見てみようと考えた。
そして娘をある孤島に連れていき、そこにある離宮に監禁し、まわりには高い塀をめぐらして、番兵をたくさん置いた。
そしてカギを持ってそのまま帰ってきてしまった。
王が夢を見た相手の男は、どこかの荒れ地を一人さまよっていた。
彼は夜寒かったので、ライオンの死体があるところに潜り込んで寝ていた。
すると大きな鳥が来て、ライオンの毛皮ごと男を持ち上げ、姫が閉じ込められている王宮の上でそれを落とした。
彼はそこで姫に会い、二人は恋に落ちた。
心の準備
王が召使いを晩餐に招いた。
しかし、いつ晩餐会が開かれるかは言わなかった。
賢い召使いは、「王の事だから、いつでも晩餐会は開かれるだろう。
私はその晩餐会のために準備をしよう」と、晩餐会がいつ開かれてもいいように王宮のとびらの前へ行って待った。
愚かな召使いは、晩餐会は用意するのに時間がかかるだろうから、開かれるまでにはまだまだ時間があると思って、何の用意もしなかった。
晩餐会が開かれたとき、賢い召使いはすぐとびらをくぐり抜けて晩餐会に臨めたけれども、愚かな召使いはついに晩餐会のごちそうにありつけなかった。
語るに落つ
商人が一人町にやってきた。
数日後にバーゲンセールがあることを、彼は知った。
そこで彼は仕入れを数日待つことにした。
しかし彼はたくさんの現金を持ってきたので、それを手元に置いておくのは心配だった。
そこで静かな場所に行って彼は自分のあり金を全部埋めた。
翌日そこに戻ってくると、お金がなかった。
彼はいろいろ考えてみたけれども自分が埋めているところを見た人はいなかったから、どうしてお金が無くなったのかわからなかった。
ところが遠くのほうに一軒の家があって、家の壁に穴があいていることに気がついた。
おそらくそこの家に住んでいる人が、彼がお金を埋めているところを穴から見て、あとで掘り出したに違いないと思った。
彼はその家に行って、そこに住んでいる男に会った。
「あなたは都会に住んでいるから非常に頭がいいでしょう。
私はあなたにお知恵を借りたいことがある。
実は私はこの町に仕入れにやってきたのだが、二つさいふを持ってきた。
一つは500個銀貨が入っていた。
もう一つのほうには800個銀貨が入っている。
私は小さい方のさいふをひそかにあるところに埋めた。
これから大きい方もうめておいたほうがいいか、それとも誰か信頼できそうな人に預けたらいいか」と尋ねた。
男は、「もし私があなただったら、私は誰も人を信用しない。前の小さなさいふを埋めたと同じ場所に大きなさいふも埋めるだろう」と答えた。
欲ばりじいさんは商人が家から出ていくと、自分のとってきたさいふを前に埋めてあったところに戻した。
商人はそれを見ていて掘り出し、無事自分のさいふを取り戻した。
魔法のリンゴ
王さまが一人の娘を持っていた。
娘は重い病にかかって死にそうだった。
医者は妙薬を飲ませない限り、見込みはないと言った。
そこで王は、自分の娘の病気を治したものには娘をめとらせ、次の王さまにするであろうと布告を出した。
遠い地方に三人の兄弟がいた。
一人が望遠鏡でそのおふれを見た。
そして彼女に同情して、なんとか三人で王女の病気を治してやろうと相談した。
一人は魔法のじゅうたんを持っていた。
もう一人は魔法のリンゴを持っていた。
魔法のリンゴを食べるとどんな病気でも治る。
そこで三人は、魔法のじゅうたんに乗って王宮に出かけ、王女にロンゴを食べさせると、王女の病気はけろっと良くなって、みんな非常に喜び、王さまは宴会を開いて新しい王子を発表しようと思った。
すると一番上の兄弟は、「私が望遠鏡で見なかったら、われわれはここに来られなかった」と言い、二番目は「魔法のじゅうたんがなかったら、とてもこんな遠いところには来られなかった」と言い、三番目は「もし、リンゴがなかったら、治らなかったではないか」と言った。
あなたが王だったら、この三人の誰に王女をめとらせるだろうか。
(この王の)答えは・・・
「リンゴを持っていた男」である。
じゅうたんを持っていた男はまだじゅうたんを持っているし、望遠鏡をもっていた男もまだ望遠鏡を持っている。
リンゴを持っていた男は、リンゴを与えてしまったので、何も持っていない。
彼はあらゆるものを娘のために与えてしまった。
タルムードによれば、「何かをしてあげる時には、すべてをそれにかけるものが一番尊い」ということである。