人類の起源はすべて同じ。
学術的には約20万年前のアフリカがルーツとされています。
インカ帝国やアステカ帝国、マヤ文明など、西洋史とは完全に切り離されて独自の文化を発展させていった南米の先住民たちのルーツはどこなのか?
この記事では人類史にまつわるお話をまとめていくコラムにしていきます。
コンキスタドールたちが中南米を侵略していきました。
インカ帝国の歴史や文化、生活などは、スペインのクロニカが残した資料のみとります。
それはなぜか?
それはインカ帝国が文字というツールを持っていなかったからです。
西洋史の価値観とは全く異なる文化だからこそ見えてくる人類の姿、歴史というロマンがあるのかもしれません。
南北アメリカ大陸に到達した人類
南北アメリカ大陸に人類が存在した痕跡は今から2万年〜3万年前であると言われています。
詳しくは後述しますが、1960年以前の通説では北米から南下していくルートを取っており、北米到達が今から1万6000年前という説を唱える説があります。

引用 / BBC NEWS
2021年には米ニューメキシコ州の研究チームが北米大陸の内陸で2万3000年前から2万1000年前の人類の足跡を発見したと発表したことから、これまでの1万6000年前説よりも2万年以上前からという説が有力になりつつあります。
10代の幼い子供足跡であるとされていて、バッファロー・ジャンプと呼ばれるネイティブ・アメリカンの文化に見られる狩猟の一種のようなものを手伝っていた可能性があると推測されています。
研究の共著者の英ボーンマス大学のサリー・レイノルズ博士は、仕留めた動物は「すべて短時間で処理されなければならなかった」とし、「10代の子供たちは、まきや水など必要なものを集めるのを手伝っていたのかもしれない」と説明した。
引用 / BBC NEWS
クローヴィス・ファースト仮説
さて、米ニューメキシコ州の研究チームはアメリカ大陸に2万3000年前から2万1000年前に人類がこの土地を踏んでいたという根拠を見出したわけですが、人類のアメリカ大陸及び南米大陸への移動に関しては触れられていません。
ここからは現在は否定されていますが、1960年代までは人類史として通説とされていたクローヴィス・ファースト仮説について紹介していきましょう。
クローヴィス・ファースト仮説のストーリーは次のようになっています。
ユーラシア大陸と北アメリカ大陸の間の海峡をベーリング海峡といい、18世紀にロシア人のベーリングが海峡であることを確認したことで名付けられました。
このベーリング海峡、氷河期には陸続きであったとされており、現在から約1万年前頃に海峡になったとされています。
1万6000年前説だと、氷河期の最終期となり、2万3000年前から2万1000年前説ですと、寒気が最も強まっていた時期に当たります。
地球上の水面を蔽っていました。
現在のベーリング海峡は水深が42m
氷期には海底まですべて氷になっていたと推察できます。
北米から1000年
地表がこのように各地で地続きとなっている時期にベーリング海峡を渡り、北アメリカ大陸へ。
そこから約1000年程度かけて最南端であるフエゴ島まで進出。
その歴史の中で各地域の過酷な自然環境に適応しながら生活拠点を構えるようになった人類を西洋史視点でインディオ(インディアン)と言われる人々の祖先となる。
これが1960年代まで通説だったクローヴィス・ファースト仮説です。
LGMの時期、地球の寒冷化に伴い、海水が氷雪として陸地に積み重なった結果、地球全体で海面が大きく低下した。
クローヴィス・ファースト仮説 / 引用:Wikipedia
これにより、ベーリング海の一部が陸地と化し、ユーラシア大陸北東部のシベリアと、アメリカ大陸北西部のアラスカとを陸続きで繋ぐベーリング地峡が形成された。
このベーリング地峡を通って、モンゴロイド系の人々がアラスカに到達した。
しかし、当時は現在のカナダが厚いローレンタイド氷床に覆われており、人々は数千年間行く手を阻まれていた。
氷期の終わりが近付いて地球が温暖化し始めた1.4万年前頃から、海面の上昇によってベーリング地峡は水没し、人々は退路を断たれたが、一方でローレンタイド氷床の一部が解けてカナダへ進出するための道(無氷の回廊)が開けた。
無氷の回廊を通って南下した人々は各地に広まり、一部の人々はさらに南下してやがて南アメリカ大陸まで到達した。
こうして、ベーリング地峡から来た人々はアメリカ先住民族の共通の祖先となった。
クローヴィス・ファースト仮説の矛盾点
1970年代からはクローヴィス・ファースト仮説を否定するための証拠が次々と見つかりました。
1974年にはブラジル南東部のベロオリゾンテ付近から約1.1万年前の人骨(ルジア・ウーマン)を発見。
1975年には、チリ南部で発見されたモンテヴェルデの遺跡からは約1.5万年前から人類が定住していた証拠が発見されました。
これらはクローヴィス・ファースト仮説である、氷河期の後期には南アメリカ大陸に人類が定住していたことの証拠となり、北米大陸のローレンタイド氷床が解けてから人類が南下していったとするクローヴィス・ファースト仮説の時系列に矛盾を生じさせました。
21世紀の仮説否定
2003年にはブラジルセラ・ダ・カピバラ国立公園にあるペトラ・フラダの遺跡にて今から約4万年前(年代には異論、諸説ある)にここで人類が火を使用した痕跡が見つかったとの調査結果も発表されました。
2010年代に入り、クローヴィス・ファースト仮説を支持する学者も少なくなり、1960年代以前のような通説ではなくなり、現在は学術界では否定されています。
新しい仮説
現在は南北アメリカ大陸の先住民はどのようなルートでいつ進出したのかについては謎に包まれたままになっています。
一部の学者は、ローレンタイド氷床によってカナダが封鎖されるより前、つまり氷河期に入る前には最初の人類がアメリカ大陸に到達していたとする仮説を唱える人もいます。
その後第二波としてクローヴィス・ファースト仮説が有効なのではないかとする説も有力視されています。
他にもクローヴィス・ファースト仮説のストーリーの大枠を残したまま一部を修正した説を唱える学者等様々な意見が交わされています。
海路説
移動ルートは謎に包まれていますが、船で移動したとする海路説も有力視されています。
ヨーロッパから大西洋を横断したとするソルトリアン仮説もありましたが、遺伝子調査によって否定的な見解が強くなっています。
まとめ
各地域のルーツやルートに関しては謎に包まれた民族もたくさんいます。
もちろん日本のルーツに関しても完全に解明されたわけではなく、列島に住み着いていた縄文人とそこへやってきた弥生人が混合した二重構造モデルが通説となっています。
日ユ同祖論と呼ばれるイスラエルの失われた10支族がルーツとなっているという説もありますが、こちらは都市伝説的なお話。
人類は元は一つであるという説は未だ覆ることはないため仮説自体はどうとでもできます。
今事実としてわかっていることは以下。
・ブラジル南東部のベロオリゾンテ付近から約1.1万年前の人骨(ルジア・ウーマン)が発見された。
・チリ南部モンテヴェルデの遺跡から約1.5万年前から人類が定住していた証拠が発見された。
・ブラジル・ペトラ・フラダ遺跡にて今から約4万年前(年代には異論、諸説ある)に火が使用された痕跡を発見。
謎が多い分野で今後も考古学的な研究は日進月歩であると予想できますが、やはり南米史、南米文化を深めていくためにはこういった考古学的な側面と歴史的事実と、伝承、そして現存する文化から推察と考察を繰り返しながらストーリーを積み上げていく必要があります。
みなさんの参考になれば幸いです。
プロフィール

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音大を卒業後ピアニストとして活動。
日本で活動後北欧スウェーデンへ。
アーティストLindha Kallerdahlと声帯とピアノによる即興哲学を研究。
その後ドイツ・ケルンに渡りAchim Tangと共にアルバム作品制作。
帰国後、金田式DC録音の第一人者:五島昭彦氏のスタジオ「タイムマシンレコード」にアシスタントとして弟子入り。
独立後音楽レーベル「芸術工房Pinocoa(現:Kotaro Studio)」を結成。
タンゴやクラシックなどアコースティック音楽作品を多数プロデュース。
大阪ベンチャー研究会にて『芸術家皆起業論~変化する社会の中、芸術家で在り続けるために』を講演。
その後、秋山庄太郎氏後継の写真スタジオ「村上アーカイブス」でサウンドデザイナー兼音響担当として映像制作チームに参加。
村上宏治氏の元で本格的に写真、映像技術を学ぶ。
祖父母の在宅介護をきっかけにプログラムの世界に興味を持ち、株式会社 ジオセンスの代表取締役社長:小林一英氏よりプログラムを学ぶ。
現在はKotaro Studioにて『あなたのためのアートスタジオ』音と絵をテーマに芸術家として活動中。
2023年より誰かのための癒しの場所『Curanz Sounds』をプロデュース。
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