Revox レストアサービス
B77とA77、音の魂を再生する
▪️序章:時を越えて回り続ける、二つの名機
半世紀を越えた今も、Revox A77 と B77 は、世界中のスタジオや愛好家の手で静かに回り続けています。
それどころか、2025年には、B77の最新モデルであるMKⅢが日本でも発売になりました。
この発売が意味するところ、それは、この先何十年もRevox のオープンリールテープレコーダーは音響業界で現役であり続けるということです。
オープンリールテープレコーダーは単なる「古い録音機」ではなく、録音という文化の象徴であり
音の本質を問う哲学的存在でもあります。
そしていま、これらの名機を再び蘇らせることそれが、Kotaro StudioのRevox Restorationの使命です
スイスが生んだ音の芸術 ― RevoxとStuderの血統

Revoxは、スイスの天才エンジニア ウィリー・シュトゥーダー(Willi Studer) によって1950年代に設立されました。
Studerブランドはプロフェッショナル用途、Revoxは民生用高級機として展開されましたが、両者の設計思想はまったく同じものでした。
Studerは放送局・マスタリングスタジオ・レコード会社の録音現場で使われ、Revoxはオーディオファイルや作曲家、大学の音響研究所に導入されました。
つまり、家庭に届いた唯一の“プロ機”だったのです。
Revoxはスタジオ機の弟ではなく、兄と同じ魂を持つ双子。
これが他の民生用オープンリールデッキと決定的に異なる点です。
A77 ― アナログ録音の黄金比
1967年に登場したRevox A77。
このモデルは、アナログ録音の歴史を塗り替えたと言っても過言ではありません。
その静寂性・安定性・音質の透明度は、当時のどの家庭用機材とも一線を画し、“録音機という工芸品”の地位を確立しました。
完成度が高く、整備された個体は今なお現行デジタル機を凌駕する音の純度を保っています。
A77の音は、優雅で柔らかく、しかし芯がある。
それはまるで、真空管アンプのように「電流の呼吸」が聴こえる音です。
筆者はDACされた音を聞くのにもわざわざA77をプリアンプとして使い視聴するほど。
あまりにも違うその質感に本当に驚かされますよ。
B77 ― 精密さと芸術性の融合
1977年に登場したB77は、A77の進化版でありながら、単なる後継ではありませんでした。
より精密なサーボ制御、強化されたトランスポート系、モジュール化された回路設計。
そして何より、録音音質の緻密さと音像の立体感が飛躍的に向上しました。
B77は、“完全主義者のための機械”とも呼ばれました。
実際、現在でも世界中のプロエンジニアがこのB77を愛用しています。
B77がいかに完全なレコーダーであるか?は2025年にB77 MKⅢとしてほとんど設計が変わらずに発売されたことで証明されたと言えるでしょう。
Revoxを再生するという文化的ロマン
半世紀を経た今も、A77やB77は修理すれば完璧に蘇る。
これこそが、アナログ録音機の文化的価値の根源です。
そしてドイツで生産された機械は、半永久的にパーツが供給されており、現在でもRevoxオンラインにて、当時のパーツ、部品を入手することができます。
また、世界中に愛好家が存在している関係で現在中国でもこのRevoxのパーツを取り扱う流れができてきました。
この先も長い年月をかけてアナログテープレコーダーの第一線を担う存在であり続けるでしょう。
それは単に「古い機械を直す」ことではなく、
“音の歴史を保存し、再び未来へ手渡す”という文化的行為になります。
Revoxを再生するということは、
演奏家が楽器を調律するのと同じ。
エンジニアが回路を調整し、モーターを整え、
音の呼吸を取り戻す。
この作業のひとつひとつが、音の哲学を体現する祈りのような行為なのです。
アナログブームの中で・・・
昨今は、カメラもあえてフィルムを使う人。
音楽もレコードを聴く人。
若い世代の中でも増えてきています。
それは、アナログにしか表現できない確かな質感に魅了されたから、デジタルでは決して表現できない領域を感じられるからでしょう。
生成AIがブームとなり、ほとんどのデジタルワークは今後AIが担っていくことになります。
音楽もAIが作る時代。
でもアナログテープレコーダーの修復や、録音業務そのものは芸術活動。
AIが真似できるものではありません。
これからRevoxのテープレコーダーを所有するということの価値はどんどん高まっていくことでしょう。
芸術への投資としてこれほど文化的且つ知的なことはありません。
Revox Restoration ― 「修理」ではなく「蘇生」
私たちは、Revoxを修理するのではなく、「再生(Restoration)」します。
- 経年で劣化したコンデンサを、
当時の音色を尊重した部品選定で交換する。 - メカ機構の摩耗を整え、テープテンションを再校正する。
- 必要であれば、金田式バランス電流伝送対応への改修も行う。
それは単に技術的な整備ではなく、音の魂をもう一度呼び起こす儀式です。
作業を終えたB77やA77が初めて電源を入れた瞬間、テープが静かに走り出し、その場の空気が変わります。
まるで生き物が呼吸を始めたかのように響くのです。
Revoxと金田式DC録音 ― 二つの純粋主義
当スタジオでは、金田式アナログバランス電流伝送DC録音のためにRevoxをレストアしていましたが、ノウハウと叡智が蓄積してきましたので、一般の方に向けてレストアのサービスも行っております。
金田式アナログバランス電流伝送DC録音の依頼はこちら一台でも多く次の世代へ繋ぐ、破棄されるRevoxのないように。
音楽家として大切な活動であると確信しています。