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※この記事は2020年10月2日に更新されました。
不確実性下における意思決定モデルの一つです。
選択の結果得られる利益もしくは被る損害および、それら確率が特定の状況下において、人がどのような選択をするか記述する行動心理学モデルです。
1979年にダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーによって展開された行動心理学理論です。
ダニエル・カーネマンは2002年、ノーベル経済学賞を受賞しています。
プロスペクト理論の実験例
質問1
あなたの目の前に、以下の二つの選択肢が提示されます。
- 選択肢A:100万円が無条件で手に入る。
- 選択肢B:コインを投げ、表が出たら200万円が手に入るが、裏が出たら何も手に入らない。
質問2
あなたは200万円の借金を抱えています。
そのとき、同様に以下の二つの選択肢が提示されたものとする。
- 選択肢A:無条件で借金が100万円減額され、借金総額が100万円となる。
- 選択肢B:コインを投げ、表が出たら支払いが全額免除されるが、裏が出たら借金総額は変わらない。
みなさんはそれぞれどちらの選択肢を選択しますか?!
プロスペクト理論によると、質問1は多くの人が選択肢Aを選択します。
質問2では多くの人が選択肢Bを選択します。
質問1では、堅実な選択をする人でも借金となると、質問2では選択肢Bを選択します。
なぜでしょうか?
これを投資の世界では通称「損失回避」心理と呼ばれたりしています。
投資家にとっては基礎連のように理解する
この損失回避の心理は特に投資の世界では必ず理解して、バイアスがかからないようにしないといけない行動心理学です。
しっかりとこのバイアスをコントロールしないと損切りができなくなり、状況によっては深刻な事態を招きかねない非常に重要な項目です。
損失時にリスクを取り、利益時に確実を取る
普通に考えて逆が理想ですよね。
投資での例1
例えばA社の株を1000円1000株100万円分購入したとしましょう。
1株900円になったときに評価額は90万円になります。
この時に人は損切りができません。
しかし、1株1100円になり、評価額110万円になると、人は10万円儲かったと喜んで利確します。
投資での例2
例えばA社の株を1000円1000株100万円分購入したとしましょう。
1株750円になり、評価額75万円になりました。
ここまで落ちても自分に言い聞かせていませんか?
「いつか上がる」
そして1年かけて1株1050円になり、評価額105万円になりました。
すると、こんな風に思いませんか?
「救われた。。。5万円でもプラスになるなら確実に確定しておこう・・・」
数字や期間は置いておいて、投資を始めると誰もが経験することなんじゃないでしょうか?
これらの例で見ても分かる通り、プロスペクトバイアスにかかった投資家は、1株750円になるのをいくらでも時間をかけて待つことができるのに、1株1250円になるのを待つことができない。
リスク発生時により大きなリスクを取り、リスクが発生していない時に堅実性、確実性を取ります。
プロスペクト理論でいうところの、「表が出たら200万円が手に入るが、裏が出たら何も手に入らない。」→「(50%の確率で)また下がるかもしれない」心理が働きます。
重大な損失→機会損失
ここで重要な点が機会損失にあります。
投資での例2のように、結局5万円儲かったからいいじゃないの?!
と思われる方は危険。
1年間その投資額である100万円は評価額がマイナスのままホールドされているわけです。
他に良い投資先があったとしてもそこに資金を回せません。
こんな重大な損失があるでしょうか?!
例えば失われた30年と言われる日本の平均株価を見てみましょう。

マックス37000円を超えていた日経平均ですが、仮にここで買っていたとして、まさに30年経った今でも、ここには戻っていないわけです。
1990年に資産フルスイングで日経平均にかけた人は30年の間じっと耐え続けているわけですが、そう考えると機会損失の恐ろしさがわかるでしょうか。
30年間含み損を抱え続けるなんてありえません。
しっかりと損切りできていれば30年の歳月があればいくらでも再起できたはずです。
極端な例ではありますが、規模の大小関わらず気を抜くと誰でも起こり得る現象であると言えます。
例えば投資家:ウイリアムギャンの提唱するギャンの価値ある28のルールでもこれら損失回避に関する記述があります。
ウィリアム・ギャン (William Gann)(ギャンの価値ある28のルール)
2、常にストップロス注文を使う。(毎回置く)
4、利益を損失にしない。(含み益が出たら、ストップロス注文等でそれが含み損に陥らない状態にする。)
13、損失を平均化しない。(ナンピンはしない)
16、ストップロス注文を置いたらキャンセルしない。
この辺りは特にこの損失回避バイアスに囚われないようにする方法であると考えられます。
損失が膨れ上がれば膨れ上がるほどナンピンのハードルが下がっていく経験はあるのではないでしょうか。
プロスペクト理論を使った販売促進例
1、期間限定特価
期間限定割引などの販売方法はまさにプロスペクト理論と言えます。
期間限定50%割引という表示によって、(この期間に決断をすると)50%分の金額を確実に利益にできる心理が働きついつい購入してしまう訳です。
2、ポイント10倍サービス
こちらも確実にもらえる利益を安全に享受するための決断をしてしまいます。
このバイアスに囚われることにより、購入対象になっているモノそのものの価値を判断する目が曇ってしまう訳です。
購入商品の価値の損益よりも、確実にゲットできる10倍のポイント利益を優先させてしまうわけです。
まとめ
投資はもちろんですが、上記の販売促進例なども含め、日常でもこのバイアスには非常に囚われやすい行動心理学です。
何かを判断するときに「今、プロスペクト理論バイアスがかかっていないか?」「プロスペクト理論バイアスにかからないために非常線を張る」など、しっかりと対策を取っていきましょう。
営業マンに「今買えば、○○お得です」と言われれば確実にプロスペクト理論の罠を張られています。
みなさんの参考になれば幸いです。
バイアスに関して学ぶ場合はこちらの書籍が激しくオススメです。