【特集】新時代を創る?5つのマイクロフォンメーカーたち

2000年あたりから老舗マイクロフォンメーカーの音をリメイクし、製造コストを抑え、安く老舗サウンドを提供するメーカーがポツポツと誕生し、2010年前後からは続々と新時代のルーキーたちが誕生し、新戦国時代とも言える音響の新しい勢力図が描かれ始めました。

2020年代に突入し、なんとなく出揃った感が強くなり、新しい老舗を創っていくのはどこか?

という段階になります。

本日は次の時代の老舗マイクロフォンメーカーになるかもしれない新時代の音響メーカーと代表的なマイクロフォンをチェックしていきましょう!

 

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最後の章では筆者が調べてみて感じた感想を忖度なしでまとめていますので是非購入の際の参考にしてみてください。

Austrian Audio (オーストリアン・オーディオ)

2017年7月1日にオーストリアのウィーンで誕生したオーストリアンオーディオ。

AKGに在籍していた22名で創業した音響メーカーです。

現在でも日々AKGからの移籍が多いメーカーです。

後ほど紹介するLEWITTのCEOも元AKGですが、AKGからの独立はちょっとした流行りみたいになっているのかもしれませんね。

現在マイクロフォンは二種類ラインナップされており、現在同社で最高峰のマイクロフォンOC818と指向性限定版のOC18です。

Austrian Audio ( オーストリアン・オーディオ ) / OC818 Austrian Audio ( オーストリアン・オーディオ ) / OC18

二機種とも指向性に関しては同じ性能となっており、OC818は単一指向、超単一指向、無指向、双指向のマルチパターン切り替え可能機種となっています。

特徴としてはアプリを使って指向性パターンを切り替えることができます。

ポイント

伝説的なCK12カプセルと同じクリティカル・ディメンションでデザインしたCKR12セラミックカプセルを搭載しています。
オーストリアのウィーンにてすべてハンドメイドで製造されているというのも日本人の感覚的にはポイント高いですよね!

CK12カプセルの謎を解き明かす

Youtubeで比較動画がアップされていたのでシェアしていきます。

OC818, ORPHEUS, LCT-840, AKG 214, ARIA, STC-20 – 6 MIC!(Youtubeへ移動)

 

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素晴らしいですよね。
後述しますLEWITTのLCT-840も比較されていますが、こちらのマイクも素晴らしいですよね。

Lewitt LCT 640 TS vs Austrian Audio OC818

 

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こちらもLEWITTのLCT-640TSとの比較。
LEWITTもAKGからの独立メーカーということでやはり比較対象になりやすいみたいです!

Neumann TLM 103 vs Austrian Audio OC 18

 

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こちらはTLM103との比較。
やはりここを超えてこそ・・・というところがあるかと思います。
ただこちらの比較音源はあまりいいマイクアンプ、ADCを使っていないのかな?
と聞いていて感じました。

LEWITT (ルウィット)

LEWITT GmbH(ルウィット・ゲーエムベーハー)社 は、2009年にオーストリアのウイーンにて、(元AKG)音響エンジニアのRoman Perschon氏が設立。

オーストリアンオーディオよりも先に独立創業したメーカーになっています。

AKGは内部で派閥的なものがあったのでしょうか?

LEWITT創業で一緒についていくメンバーと、オーストリアンオーディオ創業でついていくメンバー。

このあたりの内部事情は是非一度取材してみると面白そうですね。

Roman Preschenさんについて。

ウイーン工科大学で 電気通信(オーディオ&ビデオ技術)を専攻。
卒業後にオーストリア ウィーンに本拠地を置くオーディオブランドAKGに就職。
プロジェクト・マネージメントや戦略的ソーシングの責任者を務めます。
その間、世界中のエンジニアや技術者から様々な要望を聞く機会に恵まれ、歴史と伝統を持つブランドではできないアイデアがあることを認識。
その後独立し、2009年に LEWITT GmbH を立ち上げました。
「よりイノベイティブ、より機能が豊富、そして何よりも重要な音が素晴らしいマイク」を世に出すこと、マイクに進化の余地があるという確信を持ち、その夢の実現に不可欠なパートナーKeng Yang氏と出会いました。
「マイクのデザインはアーティストに心理的な影響を与えます。
マイクの外観がアーティストにプロフェッショナルであることを感じさせ、本人が気持ちの良い状態になることは重要です。」とのRoman氏の言葉の通り、Lewitt製品はデザインに対して非常に強いこだわりを持って開発されています。

そんなLEWITTのマイクロフォンラインナップは非常にわかりやすく、またそれぞれ値段相応の性能をしっかりと住み分けて提供してくれています。

筆者が個人的にコスパ最強だと感じているのがLCT440PUREです。

LEWITT ( ルウィット ) / LCT440PURE

また、同社のフラッグシップ機と言えばLCT 940。

LEWITT ( ルウィット ) / LCT 940
真空管マイク

こちらは真空管とFETを切り替えて使えたり、それぞれの要素をミックスして使えたりする新感覚の真空管マイクロフォンになっています。
ちょうどオーストリアンオーディオのフラッグシップ機と同価格帯となっています。

次に今筆者が最も気になっている機種がLCT640 TS。

LEWITT ( ルウィット ) / LCT640 TS
マイク一本でステレオ収録

こちらはデュアル出力でマイク単体でステレオ収録が可能となっており、収録後にプラグインを使ってパターンの切り替えも可能なモデルとなっています。
デュアル出力自体は珍しいものではなくなってきていますが、やはり一本でステレオ収録ができるというのはセッティングを簡略化する面でも大変助かります。

公式の紹介デモはこちら

WARM AUDIO (ウォームオーディオ)

2011年にアメリカ・テキサス州でBryce Youngさんがガレージで創業しました。

良いオーディオ製品を程よい価格で提供することにフォーカスしており、伝統的なマイクサウンドを研究し、マイクロフォンの名称も伝統的なマイクロフォンをかなり意識した名称になっています。

上記のヨーロッパ系のメーカーとの違いはマイクアンプやケーブル、イコライザーなどミュージシャンが必要とするアイテム全般を取り扱っている点です。

WARM AUDIOのフラッグシップと言えばやはりWA-251とWA-47という二種類の真空管マイクロフォンになります。

WARM AUDIO ( ウォームオーディオ ) / WA-251 WARM AUDIO ( ウォームオーディオ ) / WA-47

Telefunken 251が現在受注生産でお値段が120万となっていますので10分の1の価格になっていますよね。

Telefunken U47も受注生産で121万円となっています。

まずは非常におもしろい比較音源をシェア。

Mic Shootout – Neumann U67, Neumann U47, AKG C12, Telefunken ELA M 251

Telefunken 251も登場していますね。

このあたりのクラスのマイクロフォンを意識しているわけですが、WARM AUDIOの方はどうでしょうか!?

Warm Audio // Elle Sera “Beautiful Girl” – WA-251 Tube Condenser Microphone

Warm Audio // Elle Sera “Here Goes” – WA-47 Tube Condenser Microphone

いろいろググっていたらこんな記事を見つけたのでシェアさせていただきます。

WARM WA-47 tube microphone vs Telefunken U47 original(日本語ブログです。)

個人的感想

幸宗の徒然写真でおっしゃられていた「WARM社のYOUTUBEではいい音でデモしてます。私はYOUTUBEで視聴して購入したのですが、買ってみたらあんな音は出ません。パワーサプライ電源を変えて、真空管を変えて、マイクヘッドアンプのイコライザーでローブーストとハイの減衰をしてオリジナルのU47に近づきました。」という点。
個人的にもYoutubeを視聴する限り、Youtubeのデモ演奏はかなり本気の加工というかメイクアップが凄まじいと感じます。
新興オーディオメーカーとしてアメリカではグングン伸びていっている感じがしていますが、個人的にはチェックするだけに留まり、購入はしないと思います。
同社のWA-87はもちろんU-87を意識したマイクロフォンになっていますが、デモ音源を聞いていても到底許容できる範囲ではないなというのが正直な感想でした。

LAUTEN AUDIO (ローテンオーディオ)

ハンドメイド感が凄まじいですよね。

家族経営ということで少数精鋭の運営メンバーがホームページに掲載されていますがこのプロモーションで作っているお兄さんはどこに・・・?

公式サイトのメンバーページはこちら

同社のフラッフシップ機と言えば、FC-387 Atlantis, 他にはFC-357 があります。

LAUTEN AUDIO ( ローテンオーディオ ) / FC-387 Atlantis LAUTEN AUDIO ( ローテンオーディオ ) / FC-357 Clarion

こちらは先ほど登場したWARM AUDIOのWA-87との比較。

Warm Audio WA87 vs Lauten Audio Atlantis FC387 – Lead Male Vocals (Versus Video)

 

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この二つの比較だとただただWA-87の粗が目立つという感じになっています。
FC387が日本円で20万円くらいなのに対し、WA-87は日本円でも6万円程度ですから価格差がありすぎますよね。

女性ボーカルでのLautenAtlantisFC-387の3つのMulti-voicing™モードのデモンストレーション

音源が少ない

現状では他にアップされている音源はギター系の音源(ギター系は参考にできません)だったり、かなり処理が施されているものだったりが多いのであまり参考になる音源は見つけられませんでした。
ギター系が多いと言う点と無処理、無加工では出しにくいと言うあたり、取り扱いが難しいのか処理が必要なマイクということになるのでしょうか。
第一印象としてはそんな感じでした。

TOWNSEND LABS ( タウンセンド・ラブズ )

Townsend Labsは、ChrisTownsendとErikPappによって設立されました。

ErikPappは、Blue Microphonesに買収される前に、CEO兼オーナーとして10年間SummitAudioを率いていました。

SummitAudio

1979年、マイケル・パップによって創立された真空管オーディオ機器の代表的メーカー。

SummitAudioでエリックはローテンのマイクラインやブリカスティリバーブなど、さまざまな製品開発に携わってきました。

共同設立者のChrisTownsendはAvid(Digidesignの親会社)で13年間、ProToolsおよび関連するソフトウェアプラグインのDSPプログラミングを担当しています。

Townsend Labsの中でもSPHERE L22は発明とも言われるこれまでになかった画期的なマイクロフォンになっています。

TOWNSEND LABS ( タウンセンド・ラブズ ) / SPHERE L22

お値段がかなり張っているように見えるのですが、見方によっては安く感じるかもしれません。

というのも過去伝説的名機としてマイクロフォンの歴史に名を残してきたマイク特性を収録後にプラグインでそのままシュミレートできるわけです。

  • LD-47K
  • LD-12
  • LD-67
  • LD-49K
  • Sphere Linear
  • LD-251
  • LD-800
  • LD-67 NOS
  • LD-87
  • LD-87 TK
  • LD-414 Brass
  • LD-414 Nylon
  • LD-414 US
  • LD-414 T2
  • LD-563
  • LD-017T
  • SD-451
  • SD-416
  • RB-4038
  • RB-77DX Satin
  • RB-77DX Umber
  • DN-57
  • DN-7
  • DN-409N
  • DN-409U
  • DN-421N
  • DN-421S
  • DN-421B
  • DN-12A
  • DN-12E

こちらがその特性をシュミレートできる機種のリスト。

商標権の関係だと思いますが、一部イニシャルが変更されていますが、音楽関係者なら誰でも見たことがあるであろう数字がちらほら見え隠れしていますね。

プラグインではマイクの画像も出ているようですので見れば一発でわかるようになっています。

さて、こちらの比較は大変興味深い比較になっています。

SPHEREのノーモデリングがすでに結構いい音ですが、本物のU87と比べるとU87のヌベーとしたドイツ車のような質感が光っています。

そのあとSPHEREの87〜順番に各種モデリングで特性を変更した音源が公開されていますが、みなさんはどう感じるでしょうか?

個人的な感想はまとめにて総評しております。

Which is better? Virtual Neumann U87 or Real Neumann U87

ちなみにこちらのモデリング特性に関してはマイクロフォンを買わずにプラグインとサンプル音源で体験することができます。

プラグインとサンプル音源のダウンロード

忖度ゼロの総評

忖度ゼロのまとめ

いかがだったでしょうか?

新時代のマイクロフォンメーカー。

インターネットの発達によって個人でのビジネスが加速してきた昨今。

老舗のノウハウを独立で創業するケースが目立っていますが、みなさんはどう感じますか?

ここでまとめとして個人的な総評を忖度ゼロで順番にしていきたいと思います。(筆者個人の感想ですのでご注意ください!)

Austrian Audio (オーストリアン・オーディオ)

質実剛健さが音にも表れている印象。
あまりにも新しすぎてマイクのラインナップも実質一種類しかなく評価がしずらい印象。
個人的にBluetoothで特性や帯域カットの操作ができる機能はいらないし、必要性がいまいち理解できませんでした。
質実剛健なコンセプトを持った人が無理矢理新しい価値観を取り入れているようにも写りました。
伝統を守り抜くスタイルをコンセプトにするのであれば振り切って欲しいと感じます。
マイクロフォン自体は価格に見合った確かな性能を感じるので今後のラインナップに期待。

LEWITT (ルウィット)

個人的には最も好きなメーカー。
早い段階でAKGから独立しただけあって、音響に関してはかなりの自信があるようでマイクロフォンにもそういった自信が感じられます。
マイクロフォンの音自体もまるで「聴いて貰えばわかる」といっているかのよう。
AKGの良いところだけを引き抜き、派手ではないジャーマンサウンドはすっきりと新しい時代にマッチした設計になっており、AKGを感じさせないがDNAはしっかりと根を張っているという印象。
現在は一通りのラインナップも揃っており今後も期待。
個人的にはLCTシリーズは揃えていきたい。

WARM AUDIO (ウォームオーディオ)

個人的には名前を知っておく程度の印象。
真空管マイクに関しても決して伝説の名機を口に出してはいわないが、プロモーションでも値段を伝えることによってほのめかしており、名称から見て取れるが、オリジナルと比べても全くの別物。
「似ているとは言っていない」と言われればそこまでではありますが、プロモーションのやり方が少し引っかかります。
他のマイクアンプなども内部の基盤がYoutubeなどで公開されていますが、あまりにも雑。
個人的にはお値段以下の性能であり、ブランド力もないため、価値を見いだせない。
おそらく未来に老舗として残ってはいないだろう。

LAUTEN AUDIO (ローテンオーディオ)

ハンドメイド感は素晴らしく、そういったコンセプト、目的で購入するのはロマンがあっていいと感じます。
ただ、純粋にマイクロフォンの音質を聞いていると特に特徴もなく、個性も感じないため、これであればサポート体制の整っている既存の大手メーカーのマイクでいいんじゃないか?と思いました。

TOWNSEND LABS ( タウンセンド・ラブズ )

みなさんは特性変更プラグインの性能はいかがだったでしょうか?
個人的には「まあこんなもんか」と感じました。
そのものの質自体は決して悪くないマイクロフォンだと思いますが、特性を変更する際の独特のデジタル処理感はどうしても表れていると感じます。
映像や写真の世界でいうところのシュミレーションLUTのようなものだと思いますが、許容できる人と許容できない人は明確にわかれると思います。
筆者は個人的にはシュミレーションサウンドはいまいちな印象でした。

以上個人的な感想を辛口で忖度なしで総評してみました。

みなさんの参考になれば幸いです。

この記事を書いた人

こうたろう

元ピアニストでフォトグラファー&サウンドデザイナー
ミュージシャンだった父の音楽スタジオと、モデルだった母の仕事場であるフォトスタジオの現像ルームが子供時代の遊び場という恵まれた環境で育つ。
音楽大学を卒業後ピアニストとして活動。
自身のピアノトリオで活動後北欧スウェーデンにてシンガーアーティストLindha Kallerdahlとセッションを重ね声帯とピアノによる即興哲学を研究。
その後ドイツへ。
ドイツから帰国後ピアノソロ作品アルバムと共に同時リリース。
金田式電流伝送DC録音の第一人者である五島昭彦氏のスタジオ「タイムマシンレコード」にアシスタントとして弟子入りし、サウンドデザイナーとしての活動を開始。
独立後、音楽プロデューサーとして音楽レーベル「芸術工房Pinocoa(現在はKotaro Studioに統合)」を立ち上げ、タンゴやクラシックを中心としたアコースティック音楽作品を多数プロデュース。
現在は元ピアニストの経験を生かしたミュージシャンのライブフォトを得意としながら、肖像写真、動物写真、自然写真を中心にミュージックビデオの制作などオーディオ技術も得意とするフォトグラファーとして活動中。