今は専門学校がある時代ですから
親方について現場仕事を覚えるという時代ではないかもしれません。

専門学校などにはいかずに独学で現場仕事を覚える方もいらっしゃるかと思います。
そんな時にわからない言葉が続々登場して困らないように
Kotaro Studioではよく使う舞台用語や業界用語についてシェアしていきます。
主に昭和時代に使われていた言葉が多く、現在は死語となっている現場もたくさんあるかと思います。
そんな時は昭和の制作現場文化としてエンタメ的に楽しんでください。
ア行
煽る
照明やPAなどで角度をつけることを煽るといいます。
音響の世界ではモニタースピーカー関係で使われます。
『煽って』『そのライトもうちょい煽って』など言われた場合は角度をつけましょう。
明転
明るいまま舞台上が展開、転換していくことを『明転(アカテン)』するといいます。
反対語として暗転となると、舞台上は真っ暗になります。
映像収録では照明の調整が必要なため、しっかりと把握しておきましょう。
あご足
あご足のあごは顎から来ており、飲食代のことを指します。
一般の世界でも足代というのは交通費として広く使われていますが、あご足ありかなしかというのは現場仕事ではよく使われていました。
弁当が出るよりもあご足が出る方が嬉しいですよね。
当たり合わせ
照明の機材を操作して、光の当たる位置を調整する作業です。
音響さんは関係ないかもしれないですが、例えばバウンダリーマイクを仕込む場合などは当たり合わせでしっかりと照明の範囲を確認して、役者に踏まれないように注意しましょう。
板付き
舞台や演劇で最初から役者が舞台上にいた状態で芝居が始まることを指します。
音楽の場合は幕が上がると奏者がすでにステージ上にいたまま演奏が始まることを板付きスタートなどと呼ぶこともあります。
ステージにぞろぞろ出てくる姿を見せたくない場合の演出。
大入り・大入り袋
満員状態のことを指します。
大入り(おおいり)の場合は主催者やプロデューサーから配られる袋を大入り袋と言います。
縁起担ぎもこめて5円玉が入っている場合も多いです。
関係者としては金額じゃなく嬉しいものです。
オス・メス
音響では間違えると大変なことになります。
XLRなどで刺す側をオス、刺される側をメスといいます。
コンサートホールやステージでは数十メートルや数百メートル走り回ることもあるため間違えないようにしましょう。
カ行
介錯
物を動かしたりはけさせたりするための手助けのこと。
介錯して〜といわれたら手伝いましょう。
外タレ
外国人の演者のことを外タレ(ガイタレ)と呼びます。
音楽界でもメンバーに外国人が入っていると『今日外タレ入ってる』などと言い合います。
返し
モニタースピーカーのことをそのまま指したりしますが、モニターのこと。
演者がミキサー(PA)に音を送って、その音を演者に返すので『返し』と言われます。
『返し大きくして』なんて使われます。
陰アナ・影アナウンス
観客に対しての注意事項などを開演前のオフステージで流してもらうアナウンスのことを陰アナウンスと言います。
上手・下手
客席からみて右側が上手(かみて)、左側が下手(しもて)です。
上手からものを出すことを上手出し、下手からだすことを下手出しとも言います。
客電
観客の天井に設置してある照明。
通常公演中はオフになります。
リハーサルなどでよく客電消して、つけて、なんていったりします。
禁止行為解除の申請
主に演劇などの舞台で使われます。
コンサートホールなどの舞台では基本的に火を使うことはできません。
ただし演出上どうしても喫煙シーンがあったり、ろうそくを使いたい場合、その他少量の火薬を使いたい場合などは禁止行為解除の申請を出す必要があります。
各コンサートホール、会場に相談の上必要な手続きを取りましょう。
ゲネプロ
本番を想定してすべて通しで行うこと。
ドイツ語のGeneralprobe(ゲネラールプローベ)の略。
照明や音響などすべてのスタッフが本番と同じ動きをするため音楽だけの通し稽古はゲネプロとは呼びません。
光源の種類
タングステン、ハロゲン、シールド・ビーム、メタルハライド、LED、それぞれ種類がありますので覚えましょう。
サ行
地がすり
舞台上を黒くしたいときに床に敷く黒い布。
バウンダリーマイクは機能しなくなりますし、地がすりが入ると反響音が全く想定していない音響に変わるため『地がすりはいります』と言われたら必ずマイクセッティングを見直しましょう。
尺
昔の採寸の単位で、音楽や舞台、ほとんどの業界で使われています。
例えばこのセリフの尺どれくらい?とか、ソロの尺どれくらい?とか。
この場合普通に分数で返答すればOKです。
『ここのセリフはゆっくりなので15秒くらいかかります』など。
純パラ
純粋なパラレル。
信号をコンソール(卓)に入れずにマルチボックスなどを使って分けます。
モニターにも直接パラレルすることになりますし、インピーダンスの調整が必要。
積載荷重
現場では安全のために常に確認しましょう。
機材は重いです。
搬入の際に搬入エレベーターと、サブのエレベーターがあり、通常サブエレベーターは積載荷重が小さく設計されています。
この場合もちろん付き添う人の体重も計算しますので、各楽器のだいたいの重さを把握しておく必要があります。
ピアノC2でこれくらい、C5だとこれくらい。
フルコンだとこれくらい。
ティンパニは2台でこれくらい。
ドラムセットはこれくらいなど。
現場以外でもエレベーターに乗ったらすぐに積載荷重と同乗者の体重を推測して『これならあの楽器とあの楽器が積めるな・・・』などと勝手に計算をはじめたら一人前!?
現場で『ごめん、君だけダッシュで上がって』なんて言われてもいじめられているのではありません。
千秋楽
長期公演の最終日。
芝居やミュージカルでよく使われます。
芝居やミュージカルの長期公演は演者や裏方ともに時には楽屋で一緒に寝たりと24時間一緒に生活する家族のような存在になっていることも少なくありません。
外オペ
外部オペレーターのことを指します。
タ行
駄目黒
客席から袖幕の奥が見えてしまうようなセットの場合、見切れている場所を隠す目的で袖幕の外に貼る黒幕のことを駄目黒と呼びます。
鉄管結び
ひもの結び方。
これらは別記事で特集予定です。
ロープ自体が切れない限りほどけたり外れたりは絶対に物理的にありえないまさに鉄のような結び。
鉄管でやっといてなどと言われたりします。
出囃子
今では漫才用語として定着している出囃子ですが、元は歌舞伎の世界が由来になっています。
演技等が始まる前に開始の合図となるような音楽を出囃子といいます。
でべそ
基本の舞台よりも客席方向に出ている舞台。
音響、録音、映像の場合はでべそのライトや反響をしっかりチェックしましょう。
床山
床山さんはかつら専門のスタッフ。
時代劇では床山さんがいなければ何も始まらない。
トラ
代役のこと。
舞台でも音楽でも使います。
替えの効くポジションで使われます。
メインの演者が変更になるようなときには使いません。
例えばバックステージの音楽でドラマーが入り時間になっても連絡がつかなかったりする場合は『もういいわ急いでトラ探して』なんて指示がでます。
ナ行
奈落
奈落の底の奈落。
舞台の下の部分にある空間です。
現代では倉庫になっていることも多いです。
抜き稽古
芝居やミュージカルでの稽古のやり方。
一部分だけ集中的にする稽古。
ハ行
箱
会場のことを総称して箱と呼ぶことが多いです。
小屋という言い方もありますが、基本的には失礼にあたる単語ですので、総称してホールもライブハウスもスタジオも箱と呼んだ方が波風立ちません。
バミリ
ビニールテープやその他テープなどで道具や椅子、立ち位置などをメモすること。
筆者は在宅介護でも初期の頃は滑り止めマットや車椅子の位置をよくバミっていました。
バラシ
本番終わりに片付けることを指します。
撤収や撤去。
アシスタントがいる場合は本番終わりでゆっくりめ(お客さんにはわからない程度の速度で)でばらしはじめといて〜などと言われたりします。
ギャラや隠語
デーマン、チェーオクターブ
これも現代では芸能界でよく使われる言葉。
元々はジャズの世界から派生しました。
ジャズのライブハウスは基本的にお客さんと同じ位置で待機、演奏、飲食などするので、お客さんと常に一緒にいることも少なくありません。
そんなときにギャラの話をするのに金額を音楽用語で表すようになったのが始まりです。
各音名に由来していて、C,D,E,F,G,A,と、これは英語読みの場合とドイツ語読み音名と分かれています。
C,D,G,はドイツ語読みでチェーマン、デーマン、ゲーマンそれぞれ、Cは一万円、Dは二万円、Gは5万円。
Eだけ、エーマンとは呼ばずにイーマンと呼びます、Aがアーマンと呼ぶ人とエーマンと呼ぶ人の二種類いることから、Eはイーマンと区別されています。
報酬型の場合
報酬型の仕事の場合は、オクターブが出ることもあります。
1オクターブは8万円。
これは5万円だと少ないけど10万円は多い・・・といった場合にちょうどいい交渉値段となり得るわけです。
じゃあもう1オクターブにしとこうか。
となるわけです。
2オクターブ(これも音名でデーオクターブという人もいる)は16万、3オクターブは24万円。
この辺りを超えてくると、また先ほどの音名に戻ります。
30万円はE10(イージュウ)。
40万円はF10(エフジュウ)。
50万円はG10(ゲージュウ)。
などになります。
以降はC100となればチェーヒャクで100万円、ゲーヒャクは500万円となっていきます。
チェーヒャクやゲーヒャクなどはダウンタウンとか明石家さんまクラスの会話で出てくる感じでしょうか。
その他の隠語
その他芸能人がよく使う、反対言葉もジャズ屋(ジャズミュージシャン)から派生した文化です。
そう考えると舞台用語はやはり歌舞伎から由来のものが多く、タレントやミュージシャンなどの演者さんは20世紀の西欧やジャズ文化からの由来が多いのかもしれません。
例えば、味噌汁は『ルーミーシーソー』。
ベースはスーべ、ピアノはアノピ。
あのぴのさんおつそいおーやな。は『ピアノの人遅いよな』になります。
そんなこんなでいろいろ日常的に変えていきます。
慣れてくると、すぐわかるようになります。
ややこしいのが、昭和世代のミュージシャンなどは上記で紹介した業界用語や専門用語を隠語でいってきたりします。
腕のある人ならしっかりついていって学んでください。
もう腕のないのに業界にしがみついている人ならほっておきましょう。
全部対応してたら大変です。

プロフィール

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音大を卒業後ピアニストとして活動。
日本で活動後北欧スウェーデンへ。
アーティストLindha Kallerdahlと声帯とピアノによる即興哲学を研究。
その後ドイツ・ケルンに渡りAchim Tangと共にアルバム作品制作。
帰国後、金田式DC録音の第一人者:五島昭彦氏のスタジオ「タイムマシンレコード」にアシスタントとして弟子入り。
独立後音楽レーベル「芸術工房Pinocoa(現:Kotaro Studio)」を結成。
タンゴやクラシックなどアコースティック音楽作品を多数プロデュース。
大阪ベンチャー研究会にて『芸術家皆起業論~変化する社会の中、芸術家で在り続けるために』を講演。
その後、秋山庄太郎氏後継の写真スタジオ「村上アーカイブス」でサウンドデザイナー兼音響担当として映像制作チームに参加。
村上宏治氏の元で本格的に写真、映像技術を学ぶ。
祖父母の在宅介護をきっかけにプログラムの世界に興味を持ち、株式会社 ジオセンスの代表取締役社長:小林一英氏よりプログラムを学ぶ。
現在はKotaro Studioにて『あなたのためのアートスタジオ』音と絵をテーマに芸術家として活動中。
2023年より誰かのための癒しの場所『Curanz Sounds』をプロデュース。
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