ボクはやっと認知症のことがわかった【感想】

※この記事は2020年2月6日に更新されました。

みなさんは認知症という言葉は聞いたことがありますか?

若い世代、特に筆者と同世代、昭和のギリギリ終わりから平成生まれの人にとってはあんまりピンとこない症状かもしれません。

しかし、2012年の段階では、約462万人、(65歳以上の人口の有病率は15%)7人に一人がなんらかの認知症が発症していると言われています。

これが2025年になると、団塊の世代が75歳以上となり、推定で700万人、5人に一人が認知症に悩まされる時代が来るとも言われています。

長谷川和夫医師は、長年認知症に関する幾多の研究や臨床の現場にて活躍されてきた方で、認知症を測定する長谷川式スケール(長谷川式簡易知能評価スケール)という評価測定を作った方としても有名です。

認知症の診断を受ける際は必ずこの長谷川式評価スケールというものが使われますので、長谷川先生の名前を必ず耳にすることになると思います。
※現在は改・長谷川式簡易知能評価スケール。
※また、近年では、長谷川式ではなく、「CANDy 日常会話式認知機能評価」を採用する病院も増えてきています。

この本は、そんな認知症研究の第一人者である長谷川先生自身が認知症になり、やっと認知症の研究が一周したと言えるような内容の本になっています。

ここまで説得力のある認知症の解説本があるでしょうか。

そういえば昔、聖マリアンナ医科大学に勤めていたときに先輩から、「あなた自身が同じ病気にならないかぎり、あなたの研究は本物じゃない、認めない」といわれたことがありました。
その先輩に向かって、いまなら「ボクも本物になりました」といえますね。

ボクはやっと認知症のことがわかった 長谷川先生の言葉

長谷川先生の大きな功績

長谷川先生の最も大きな社会的影響と言えば、なんといっても認知症という言葉を作ったことでした。

認知症という言葉が使われる以前は痴呆(痴呆症)と社会的には認識されていました。

長谷川先生が研究に携わられた当時は、痴呆といえば、近所の人にも言えない、納屋などに閉じ込めたり、ベッドに縛り付けたりといったことが当たり前に行われていた時代。

認知症の全容も全く見えず、医療としては治せないし、全容がわからない、介護としてもどう対応していいかわからない。。。といった日々が続いていたそうです。

しかし、長谷川先生の研究や、海外からの様々な論文や介護手法などによって近年、日本の認知症介護は飛躍的な先進性を保っています。

先生が伝えたいこと

現役を引退された先生ですが、本の中では生涯学者であるという強い想いが伝わってきました。

第7章でも登場しますが、「だんだんお迎えが近づいてきていると思います。」とおっしゃりながらも、しっかりと、仮設を立て、検証、そして結果を出すという人生のルーティンを忘れません。

年をとれば認知症が悪くなっていく一方ではなく、多少はよくなっている部分もあるのではないか。
脳はじつに神秘的で、神経細胞が障害を受けたところを補うばかりか、成長する可能性もあるかもしれません。
何より認知症には、まだわかってないところがたくさんあります。
そう思って、また診断を受けるのを楽しみに行こうと考えたのです。

ボクはやっと認知症のことがわかった 第7章日本人に伝えたい遺言

この生涯学者魂は本当に素晴らしく見習っていきたいと思いました。

他にも認知症に関する歴史や、長谷川スケールの解説など、詳細な専門知識もしっかりと記述されています。

それとは、別にご自身が認知症になってわかる想いや気持ちについて綴っておられました。

こういう想いを知ることによって、家族が発症した際、認知症初期の対応は変わってくるのではないか?と感じました。

BPSD「認知症の行動と心理症状」 の部分も一部記述されています。

筆者が重度のアルツハイマー型認知症の介護をしていて、かなり初期の段階での当時の不可解な行動など、こういったBPSDについて深い理解があれば、今ならもう少し適切な対応ができたのにな~とも感じます。

これから5人に1人が認知症になる時代です、数ある認知症の種類の中でも、長谷川先生のタイプである嗜銀顆粒性認知症( しぎんかりゅうせいにんちしょう )に関しては加齢が大きく影響しているとのことですので、本当に他人事ではありません。

著書の中でもおっしゃっていましたが、「自分は認知症である」ということを周囲に気軽に伝えることができる社会になっていくことで、怖い病気ではなくなります。

認知症に関する知識をつけることで、どのように感じているのか?

どんなことを想っているのか?

少しでも見えると、「よくわからない怖い病気」というイメージも払拭されるのではないでしょうか?

「よくわからない怖い病気」というイメージが現実の医療現場でも蔓延しているため、認知症の高齢者が入院したりすると、ドラッグロックという身体拘束が当たり前のように行われています。

→ドラッグロックに関連する記事はこちら

「私、実はコンタクトでさ~コンタクト忘れたから今なんも見えへん。。。」

となれば、読んであげたり、お手伝いができますよね。

というような当たり前の会話に認知症もなればと筆者も願っています。

そして、痴呆から認知症へ名称変更した長谷川先生のさらなる社会への認知症理解にこの本が役立つことを確信しています。

生きるとは?

本書を読んでみて、生きるとは何か?について、ぼんやりとですが、見えてくるような気になってきます。

本当にぼんやりとですが。

第7章の「日本人に伝えたい遺書」は必見です。

まとめ

率直な感想は、やはり、認知症の研究や理解、まだまだやっと一周した。。。ということ。

認知症の第一人者である長谷川先生が実体験として認知症の気持ちを代弁してくれることで、見えてくることはたくさんあります。

とはいえ、先生の種類は嗜銀顆粒性認知症 、他にもアルツハイマー型やレビー小体型、前頭側頭型認知症などなど様々な種類があり、すべての全容が見えてきたわけではありません。

WHOによると、2015年時点で、認知症の人は世界で約5000万人。

それが2030年には8200万人、2050年には1億5200万人とも見込まれています。

冒頭のデータのように、2025年には日本では推定で700万人とされていますから、世界規模で見ても日本人の認知症率は非常に高いであろうと言えるのではないでしょうか?

世界的に未曾有の超少子高齢化社会を迎えようとする今、私たち生産世代ができることはなんでしょうか?

長谷川先生や関係者各位様のご尽力で、認知症のケアや理解は随分と進みました。

海外からのレポートや、介護術なども広く知られるようになりました。

フランス発のユマニチュード。

本書にも登場する「 パーソン・センタード・ケア 」などなど。

筆者もなるんだろうな~とは思います。

先生ももちろん準備してこられた。

準備してこられたからこその今の生活というのはあるのかなと感じました。

アルツハイマー型限定ですが、新薬アデュカヌマブの研究も進んでいるようですし、医療大麻でのアルツハイマー型に効果的な配合も具体的にレポートや研究データが上がってきているそうです。

もしかすると、WHOの見込みは外れて2050年には治る病気になっているのかもしれない。

今私たち若い世代ができることは、「知ること」、そしてせめて、「理解してあげること」で、世代間を超えたより良い社会になっていくのではないでしょうか?

そんな第一歩となり、ひとまずの認知症研究の区切りとも言える本書。

老若男女問わず是非読んでみてはいかがでしょうか?

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