はじめに

音楽の魔法には、聴く人の心を動かす力があります。

この魔法の一つがコード理論です。

特に中学生や高校生の吹奏楽部の皆さんにとって、コード理論は演奏をより豊かにし、音楽の理解を深める重要な要素です。

本ガイドでは、コード理論の基本からジャズ理論までを、わかりやすく解説します。

コードが音楽にどのように影響を与えるのか、その魅力を一緒に探求しましょう。

コード理論の基礎

コードとは、複数の音が同時に鳴ることで生じる和音のことです。

音楽においてコードは、メロディやリズムと並び、楽曲の骨格を形成する重要な要素です。

例えば、Cメジャーコードは、C(ド)、E(ミ)、G(ソ)の3つの音から成り、明るく穏やかな響きを持ちます。

対照的に、Cマイナーコード(C、Eb、G)は、やや暗く、感傷的な雰囲気を持っています。

これらの基本的なコードを理解し、どのように楽曲に用いられるかを知ることは、音楽の根本を理解する第一歩です。

メジャーコードの構成

メジャーコードは、音楽における明るくポジティブな感情を表現するのに適しています。メジャーコードは、以下のように構成されます:

  1. 根音(ルートノート)
  2. 根音から4つ目の音(長3度)
  3. 根音から7つ目の音(完全5度)

例えば、Cメジャーコードは次のように構成されます:

  • C(根音)
  • E(根音から長3度の音)
  • G(根音から完全5度の音)
Cメジャーコードの図

マイナーコードの構成

マイナーコードは、より感傷的で内省的な感情を表現するのに用いられます。マイナーコードの構成は次の通りです:

  1. 根音(ルートノート)
  2. 根音から3つ目の音(短3度)
  3. 根音から7つ目の音(完全5度)

例えば、Cマイナーコードは次のように構成されます:

  • C(根音)
  • Eb(根音から短3度の音)
  • G(根音から完全5度の音)
Cマイナーコードの図

これらのコードの構成を理解することで、音楽の根本的な構造に対する理解が深まります。コードは楽曲の感情的な基盤を形成し、演奏者や聴衆に影響を与える重要な要素です。

さて、ここで長3度や短3度、完全5度などの単語が登場しました。

この辺りはKotaro Studioの音楽家育成塾の記事にてかなり細かく解説していますので、参照してみましょう。

コード進行の理解

コード進行とは、複数のコードが一定の順序で進行することを指し、楽曲の感情的な流れや構造を作り出します。

さて、ここから先はローマ数字が登場します。

ローマ数字に関してはこちらのレッスンを参照してみましょう。

ポピュラー音楽のコード進行例

  1. I-IV-V-I進行: これはポピュラー音楽で最も基本的なコード進行の一つです。例えば、Cメジャーキーでは、C(I)-F(IV)-G(V)-C(I)の順に進行します。この進行は多くのポピュラー曲で見られ、明るく心地よい響きを持っています。
  2. vi-IV-I-V進行: これは感情豊かな進行で、多くのバラードやバラッドスタイルの曲で使用されます。Cメジャーキーでは、Am(vi)-F(IV)-C(I)-G(V)と進行します。

ジャズ音楽のコード進行例

  1. II-V-I進行: ジャズにおいて最も重要なコード進行の一つであり、ハーモニック進行の基本です。例えば、Cメジャーキーでは、Dm7(II)-G7(V)-Cmaj7(I)と進行します。この進行はジャズスタンダード曲で頻繁に使用され、音楽的な緊張と解放を表現します。
  2. Turnaround進行: ジャズにおいては、曲の終わりや次のセクションへの移行に使用されることが多い進行です。例えば、Cメジャーキーでは、Cmaj7-Am7-Dm7-G7と進行することがあります。

これらのコード進行は、演奏や作曲において基本的な要素として覚えておくと役立ちます。

ジャズの進行は特に複雑で多彩であり、さまざまな感情や雰囲気を表現するためのツールとして活用されています。

コード進行を理解することで、楽曲の構造や感情の流れを読み解くことができ、自身の演奏や作曲に新たなアイデアを取り入れることができます。

次章では、ジャズ理論にさらに深く踏み込んでいきましょう。

ジャズ理論の基本

ジャズ音楽は、独自のハーモニックスタイルとコード進行を持つジャンルであり、理論的な知識が重要です。ここでは、ジャズ理論の基本を理解するために、実例を挙げながら解説します。

セブンスコードの重要性

ジャズ音楽において、セブンスコード(7thコード)は重要な役割を果たします。セブンスコードは、基本のトライアド(三和音)にセブンス(7番目の音)を加えたものです。主要なセブンスコードには以下のようなものがあります:

  • メジャーセブンスコード(Maj7): Cmaj7(C-E-G-B)
  • マイナーセブンスコード(m7): Dm7(D-F-A-C)
  • ドミナントセブンスコード(7): G7(G-B-D-F)
  • マイナーセブンスフラットファイブコード(m7♭5): Bm7♭5(B-D-F-A)

これらのセブンスコードは、ジャズのコード進行において頻繁に使用されます。例えば、以下のコード進行を考えてみましょう:

  1. II-V-I進行: ジャズで最も一般的な進行の一つです。例えば、CメジャーキーでのII-V-I進行は、Dm7(II)-G7(V)-Cmaj7(I)という順序で進行します。この進行は、ジャズスタンダード曲や多くのジャズコンポジションで見られます。各セブンスコードの役割は以下の通りです:
    • Dm7(II): ドリアンスケールに基づくメロディを演奏するのに適しています。
    • G7(V): ミクソリディアンスケールに基づくメロディやソロが演奏されます。
    • Cmaj7(I): メジャースケールに基づくメロディが演奏され、曲の解決を表現します。
  2. ブルース進行: ジャズにおけるブルース進行は、ブルース音楽から派生したもので、感情豊かな演奏を可能にします。例えば、Cメジャーキーでのブルース進行は、C7(I)-F7(IV)-G7(V)という順序で進行します。セブンスコードの特徴的なブルーススケールと組み合わせて演奏され、情熱的な演奏が楽しめます。

ジャズ理論の応用

ジャズ理論は、ジャズ音楽の他にも、ポップ、ロック、フュージョンなどのジャンルにおいても応用されます。セブンスコードやコード進行の理解は、作曲家やアレンジャーにとっても貴重なツールです。ジャズ理論を学ぶことで、音楽の深みや表現力を高め、自身の演奏や作曲に新たなアイデアを取り入れることができます。

ジャズ理論を学び始める際には、セブンスコードやII-V-I進行を中心に練習し、実際の楽曲で応用してみることがおすすめです。ジャズ音楽の魅力はその奥深さにあり、学び続けることで新たな発見が待っています。

自分の演奏にコード理論を取り入れる

音楽演奏においてコード理論を活用することは、表現力を豊かにするための重要なステップです。ここでは、コード理論を実際の演奏に取り入れる方法を段階的に解説します。

ステップ1: コードの基本的な理解

まず、コード理論の基本を理解しましょう。メジャーコード、マイナーコード、セブンスコードなどの基本的なコードの構成と音楽理論を学びます。楽譜やコードチャートを読む練習も行いましょう。

ステップ2: コード進行の練習

次に、コード進行の練習を始めます。ポピュラー音楽の曲やジャズスタンダード曲からよく使われるコード進行を選んで練習しましょう。

例えば、II-V-I進行やブルース進行などがあります。

各コードの転回(インバージョン)やコードの変更方法を学び、指の運動を練習します。

ステップ3: ジャズ理論の学習

ジャズ演奏を目指す場合、ジャズ理論を深化させましょう。

モード理論、コードスケール、コードの拡張(アルターシオン、スス4コードなど)など、ジャズに特有の理論を学びます。

また、ジャズのリズム感やフレージング(フレーズのアイデア)にも注目します。

ステップ4: ジャズ演奏の実践

ジャズ演奏に取り組む際には、ジャムセッションやバンドでの演奏が重要です。

他のミュージシャンと連携し、コード進行に合わせた即興演奏を練習します。

また、ジャズスタンダード曲を演奏することで、理論の実践力を高めましょう。

ステップ5: オリジナル曲の作成

コード理論を活用して、オリジナル曲を作成しましょう。

自分のアイデアをコード進行に落とし込み、メロディを作成します。

オリジナル曲は自己表現の一環となり、コード理論を実践的に活用する絶好の機会です。

ステップ6: 即興演奏の練習

ジャズや即興演奏を楽しむために、即興演奏のスキルを磨きます。

コード進行に即座に対応する能力を養い、自分の音楽的なアイデアを演奏に反映させる練習を行います。

ジャズスケールやフレージングの練習が役立ちます。

ステップ7: 持続的な学習と実践

音楽は永遠の学び舎です。

コード理論や演奏スキルを日々磨き続け、異なるジャンルやスタイルに挑戦しましょう。また、他のミュージシャンとの共演やフィードバックを受けることも成長の一環です。

ステップ8: アートとしての表現

最終的に、コード理論は音楽をアートとして表現する手段です。

自分の感情やストーリーを音楽に込め、リスナーに共感と感動を与える演奏を目指しましょう。

最後に最も大切なこと

最後にもっとも大切なことを伝えたいと思います。

コード理論や音楽理論というのはとても大切なガイドとなります。

それらを無視して音楽を学び、高めていくことはできません。

ただし注意して欲しいところが、それらの理論や概念に縛られた囚人にならないこと。

「〇〇の理論的に整合性がないから」とか、「理論的にはおかしい」といった概念で自己の表現に制限をかけてしまうことになるのはまさに本末転倒と言えます。

これらの理論や体系は人間が勝手に作り出した多数決の概念に過ぎないことを知るべきであり、仮に数学的算数的に整合性のある論理や理論でも、多数決で消滅してしまった例はたくさんあります。

音律が代表的な例でしょう。

理論体系に沿って、厳格に守り構成された音楽は多くのオーディエンスから称賛されるでしょう。

なぜならそれは多数決の結果だからです。

音楽理論の基礎を固めたのちにそれらの理論から解き放たれて自己の表現を高めていくという作業を決して忘れないでください。

そして、最終的に表現者として、芸術家として、音楽家として目指していくべき道がここにあるということを意識して音楽理論を学んでくいくことが大切なのではないかと一人の音楽家として思います。

制限の先に自由があり、自由があるから限度を設ける。

制限と限度、そして自由の塩梅を決めるのはあなた自身です。

他の誰からも制限を受けたり、限度を設けられたりしてはいけません。

それは管理された囚人と同じこと。

芸術家になるのであれば、あなた自身がすべての塩梅を決めてください。

プロフィール

こうたろう
こうたろう
音大を卒業後ピアニストとして活動。
日本で活動後北欧スウェーデンへ。
アーティストLindha Kallerdahlと声帯とピアノによる即興哲学を研究。
その後ドイツ・ケルンに渡りAchim Tangと共にアルバム作品制作。
帰国後、金田式DC録音の第一人者:五島昭彦氏のスタジオ「タイムマシンレコード」にアシスタントとして弟子入り。
独立後音楽レーベル「芸術工房Pinocoa(現:Kotaro Studio)」を結成。
タンゴやクラシックなどアコースティック音楽作品を多数プロデュース。
大阪ベンチャー研究会にて『芸術家皆起業論~変化する社会の中、芸術家で在り続けるために』を講演。
その後、秋山庄太郎氏後継の写真スタジオ「村上アーカイブス」でサウンドデザイナー兼音響担当として映像制作チームに参加。
村上宏治氏の元で本格的に写真、映像技術を学ぶ。
祖父母の在宅介護をきっかけにプログラムの世界に興味を持ち、株式会社 ジオセンスの代表取締役社長:小林一英氏よりプログラムを学ぶ。
現在はKotaro Studioにて『あなたのためのアートスタジオ』音と絵をテーマに芸術家として活動中。
2023年より誰かのための癒しの場所『Curanz Sounds』をプロデュース。

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