【古楽の録音方法】チェンバロやヴィオラ・ダ・ガンバの機材選定とマイクセッティング

最終更新日

レコーディングメソッドシリーズ第一弾は古楽。

ワンポイント録音と最も相性がいいと言ってもいいでしょう。

そして、その繊細な世界を録音するというのは一筋縄ではいきません。

細かく見ていきましょう。

代替テキスト

こんにちは!
当サイトへお越しくださりありがとうございます!
お越しくださったあなたはもう友達です。
わたしは音楽家になって数十年・・・
筆者の詳しいプロフィールに関しては『わたしたちについて』や『服部 洸太郎音楽作品リスト』をご覧ください。

わたしたちについて『チームのメンバー』

服部 洸太郎 音楽作品リスト

古楽のロマンと録音方法

古楽の録音は個人的にはとてつもなくロマンを感じるジャンルであり、とても魅力的だと思います。

例えばチェンバロは1397年にヘルマン・ポールという人物が発明したと主張という記述が、チェンバロ史についての最古の記述となっています。

1425年、ドイツのミンデンの大聖堂にある祭壇彫刻にチェンバロを演奏する姿も刻まれており、この時代にはすでにチェンバロの音色は人々の耳に届けられているものと考えられます。

ポイント現存している最古のチェンバロは、1480年頃のもの。
推測ではありますが、ドイツのウルムで作られたクラヴィツィテリウムで、現在はロンドンの王立音楽大学に保存されています。
icon image

楽器を含め音楽を録音するときは是非その歴史的背景や制作された時代背景、楽曲の情報など様々な知識をしっかりと学び、ロマンを感じながら録音しましょう。
録音エンジニアが何を想い、何を感じモニターするかで音は決まります。

1425年付近だと1429年にあの有名なジャンヌ・ダルクがシノン城に現れ、オルレアンを解放、パテーの戦いに勝利しました。

icon image

ちなみに1415年にはアントワープに世界最古の証券取引所が誕生しました。

株式市場の歴史をざっくり把握する / Stock market

響き方と残響について

古楽器の収録については伴奏、つまりコードが出る楽器類はすべて減衰系がほとんどであり、チェンバロについても現代のピアノとは構造が真逆でハンマーで叩く打楽器ではなく、弾いて響かせるタイプなのでギターに近い構造になります。

そのため、ゲイン調整では最大ボリュームが必然的に決まってきます。

アンサンブルの場合ですと、実は管楽器の多い古楽の世界、もっとも大きな音の出る管楽器に合わせるのがポイントです。

管楽器はざっとこれだけの種類があり、私たちに最も身近なのがリコーダーでしょうか。

  • リコーダー
  • フラウト・トラヴェルソ
  • ショーム
  • バロック・オーボエ
  • オーボエ・ダモーレ
  • オーボエ・ダ・カッチャ
  • シャリュモー
  • バセットホルン
  • ナチュラル・トランペット
  • スライド・トランペット
  • ナチュラル・ホルン
  • コルノ・ダ・カッチャ
  • クルムホルン
  • コルネット(ツィンク)
  • サックバット(サグバット)
  • セルパン
  • オフィクレイド
  • ポンマー

こういった管楽器がどれだけアンサンブルに組み込まれるか?によってマイク選定やマイクセッティングなどが変わってきます。

まずはシンプルな弦楽器系でみていきましょう。

無指向性 or 指向性

古楽の収録は歴史の再現のニュアンスが非常に強いのが特徴です。

筆者が好きでいつも見ているYoutubeにこんなチャンネルがあります。

そうです。

この世界観。

できれば演奏者やお客さんも当時の服装で、当時の湿気、気温。

これはクラシックワインの世界にも通じるところがあるかもしれませんね。

また、普段はノイズととらえないような現代的な環境音も考え方によっては排除してもいいでしょう。

いえ、排除というニュアンスは少し違うかもしれません、そういった世界観を創るという意味ではシークエンス性に最も意識を向けて録音するべきジャンルであると言った方が適切かもしれません。

後述しますKM184の指向性マイクもオフマイク特性である程度の空間を入れる方がストーリー性が感じられると思うので、古楽の場合は特に無指向性マイクとの相性がいいと想いますし、筆者は無指向性で収録したいと思っています。

Sennheiser MKE 2の例

Sennheiser MKE 2は最高の選択肢の一つです。

Sennheiser MKE 2をチェンバロにオンマイク収録したのがこちら。

オンマイクですので空間性はとらえられていませんが、こちらはチェンバロ奏者と相談の上、ソロでの収録ということもありオンマイクを選択しています。

オンマイクとオフマイクの特性の違いは次のKM184でご試聴いただけます。

ゼンハイザーであれば、近年個人的に大注目なのがMKH8040もしくは、MKH8020のペア。

こちらはZOOM F3のマイクアンプでの試聴をしたことがありますが、かなりの破壊力があります。

参考にしてください。

【このマイク、凄いです】SENNHEISER MKH8040, MKH8020を徹底分析

Neumann KM184の例

空間性をとらえない収録の場合、指向性のオンマイクも選択としては最高です。

こちらでオンマイクとオフマイク全く同じ環境でのテストを比較していただけます。

KM184の場合オンマイクではイメージ通りの音が撮れますが、オフマイクではイメージ以上の爆発力があるように想います。

奏者の感情を捉える力といいますか、そういった力はKM184は強く持っているマイクロフォンですので、おすすめのマイクの一つです。

【NEUMANN KM 184】各マイク位置でのピアノ音源テストや比較なども!

ただし同じ指向性マイクであっても、奏者の底知れぬパワーをあまり全面に出したくないケースもあるかと思います。

純粋に音楽というよりも、音そのものをフォーカスして収録するような企画の場合はDPA4011という神指向性マイクがあり、超おすすめです。

DPA4011ステレオペアセットをサウンドハウスで見る
icon image

別の言い方をすれば、筆者の思考回路としてはライブコンサート時にはKM184を、収録やセッション録音の際は状況によりますが、DPA4011を選択するのがいいのかなと考えています。

同じくオンマイクとオフマイクの比較はビオラダガンバでも試聴してみてください。

DPAという選択肢(管楽器が多い場合)

先述の4011をはじめDPAは素晴らしいマイクロフォンです。

DPAの場合はパワフルな印象やガッツといったニュアンスとは離れていくのに対して、相性の良い楽器というのが管楽器。

管楽器のソロまたは、管楽器が多い編成、アンサンブルで選択するのがベストであると考えます。

例えばDPA4060の場合バウンダリーマイクとして使用することもできるため、映像込みでの世界観を演出したい場合はマイクスタンドを立てずに収録することが可能になり、おすすめです。

DPA4060をサウンドハウスでチェック

ゼンハイザーMKE2も同じくバウンダリーが可能なラベリアマイクではありますが、こちらはより高いマイクセッティング位置での方が芳醇な低域を収録できるため、高さ、位置に関してある程度融通が利くのはDPAの方。

4060のバウンダリーマイクに関しては当スタジオの音響顧問である五島昭彦氏が録音した音源がありますので、五島昭彦作品リストにてチェックしてみてください。

金田式DC録音:五島昭彦氏の録音作品リスト

金田式DC録音のハイレゾ視聴はスタジオのAudio Data Roomでも体験していただけます。

Kotaro Studioの音響資料室はこちら

ショップスという選択肢(弦楽器が多い場合)

弦楽器を録音するならショップスこそが最高の選択肢でありおそらく世界中の録音エンジニアで異論を唱える人は少数派であると思います。

特にバイオリン群などの松脂を使って弦を小刻みに引っ掛けるタイプの楽器にとっては、その松脂の引っかかり感というのはショップスにしか出せない凄まじい世界がそこにあります。

ショップスのMK2カプセルは無指向性カプセルで現在では手に入りにくい状況ではありますが、金田式DC録音でも五島昭彦氏が採用しています。

現在ショップスで無指向性マイクを使う場合は指向性切り替え式のMK5を購入してください。

絶対に指向性のMK4以外は使わないという方以外はこちらのMK5の方が圧倒的にお得になります。

SCHOEPS ( ショップス ) / Stereo-Set MK 5(指向性切り替え式)をサウンドハウスで見てみる

指向性マイクだけでOKという方はMK4というものがあり、こちらも世界中の弦楽器奏者、弦楽器アンサンブルのプロデューサーから信頼されているモデルです。

SCHOEPS ( ショップス ) / Stereo Set MK 4 (指向性)をサウンドハウスで見てみる

バイノーラル録音は?!

さて、先述シェアさせていただきました、Youtubeチャンネルでの世界観を再現するとすれば。

あるいは古楽のロマンを語る上で時代をそのままタイムマシンに乗せるとすれば。

バイノーラルマイクも選択肢としてはありかもしれません。

ただし、他の録音方法でも解説していますが、バイノーラル録音で音楽収録は個人的には好きではありません。

もちろん考え方は人それぞれですし、この世界の正解はあなたの中にしかありません。

バイノーラルの音が古楽の音とマッチすると感じたのであれば是非あなたの感性を信じてください。

レコーダーやマイクアンプ

現在は入手困難となっていますが、こちらのF3のマイクアンプ性能はとんでもない性能です。

当スタジオの音響顧問の五島先生とサウンドデバイスの名機702Tとの比較テストを計画していますので、追ってお届けする予定ではありますが、F3のマイクアンプであれば上記のようなマイクロフォンの性能を最大限引き出せると思われます。

ZOOM ( ズーム ) / F3 Field Recorder をサウンドハウスでチェック

予算が許せばFireface UFX IIはレコーダー機能もついて最高です。

RME ( アールエムイー ) / Fireface UFX II オーディオ・インターフェイス&レコーダー をサウンドハウスで見てみる

PCベースで録音するスタイルも考えられますが、その場合はオーディオインターフェイスになります。

PCベースでの録音の方が一般的でありマイクアンプやADCの選択肢が豊富なので機材選びが楽しいです。

市販品でやはり最高峰なのがRME。

RME ( アールエムイー ) / Fireface 802 オーディオインターフェイス をサウンドハウスで見てみる

予算の上限がない方はADCとマイクアンプをそれぞれRMEで別で揃えてシステムを組むのもおすすめです。

RME ( アールエムイー ) / QuadMic II マイクプリアンプ をサウンドハウスで見てみる

これらは単体ではレコーディングできず、初心者の方は必ずオーディオに精通している方のアドバイスのもと購入と使用をするようにしてくださいね。

RME ( アールエムイー ) / ADI-2 Pro FS R Black Edition AD/DAコンバーター をサウンドハウスで見てみる

マイクセッティングについて

さて、ここからはマイクセッティングについて考察していきます。

チェンバロの録音

チェンバロの録音はピアノの録音と似ている点が反響版を経由して倍音を拾うという点。

そのため、ワンポイント録音の場合は似たようなセッテイングになります。

もちろん現場で随時モニターしないとわからないことがありますが、基本的には反響版の高さを超えないようにセッティングしてください。

また、KM184の記事でもお届けしていますが、マルチマイクの場合はおしりからのチャンネルはワンランク大きな反響効果が得られて、メインマイクとそれらをミックスすると少し現実離れした音響に変わっていきます。

シネマティックサウンドでの録音

ドキュメンタリー映画や、チェンバロを題材とするような映画などのサウンドではこちらのワンポイント用のメインマイクに加えておしりからのステレオチャンネルをミックスしていく方式が最適かと思います。

また、MKE2で視聴いただいた完全オンマイクの方法は、チェンバロの右手側カーブしている部分に無指向性マイクAB方式で貼り付けて録音。

これはピアノ録音でもKotaro Studioがよく採用する方式であり、反響板からの倍音が非常にバランス良くとらえられるためオンマイクではベストな選択肢です。

反面、ペアマッチしていないマイクを反響板の中に入れてしまう方式に関しては当スタジオでは懐疑的です。

まずは反響板からの倍音を捉えることがピアノ録音に関しても最優先事項であり、その要素を逃してしまっては音楽収録の最も大切な音楽性とストーリー性が失われてしまうと考えています。

このような録音スタイルに関してはサンプリング音源を制作するようなプロジェクトの場合は最適な方式であると考えますが、ストーリー性を犠牲にできない録音現場では避けた方がいいでしょう。

古楽アンサンブルの場合

古楽アンサンブルのセッティング例としては、全体を無指向性マイクのAB方式で収録し、楽器の特性によって補助マイクとしてパートを録音して足していくという方針が一般的です。

例えばチェンバロの貼り付けABマイクを全体の空間マイクにミックスしていくやり方や、他の古楽器群を逆にピックアップするやり方。

といいますのも、チェンバロや古楽器の減衰系楽器の場合はマックスボリュームが決まっているのと同時に最低ボリュームも自動的にある程度決まってきます。

どんなにピアニッシモな音を目指してタッチしてもチェンバロのでる音というのは決まってきますのでそのあたりを考慮して音響を考えていく必要があります。

ただし、それ自体が古楽の再現であるという考え方かどうかはその収録の演者さん、プロデューサーの方としっかり相談しましょう。

数百年前の古楽アンサンブルを再現するのに、管楽器や音の小さい楽器をマイクで拾ってピックアップするなんてありえませんし、サロンで聞いていたお客さんの耳には到底そんな音で入ってくるわけがありません。

ここは歴史を重視するのか?それとも現代での聴きやすさをある程度重視するのか?しっかり見極めながらセッティングしていきましょう。

Kotaro

音大を卒業後ピアニストとして活動。 自身のピアノトリオで活動後北欧スウェーデンにてシンガーアーティストLindha Kallerdahlと声帯とピアノによる即興哲学を研究。 その後ドイツへ渡りケルンにてAchim Tangと共に作品制作。 帰国後、金田式電流伝送DC録音の名手:五島昭彦氏のスタジオ「タイムマシンレコード」にアシスタントとして弟子入りし、録音エンジニアとしての活動開始。 独立後、音楽レーベルを立ち上げ、タンゴやクラシックなどのアコースティック音楽作品を多数プロデュース。 その後、秋山庄太郎氏後継の写真スタジオ「村上アーカイブス」でサウンドデザイナー兼音響担当として映像制作チームに参加。 村上宏治氏の元で写真、映像技術を学ぶ。 祖父母の在宅介護をきっかけにプログラムの世界に興味を持ち、介護で使えるプログラムをM5Stackを使って自作。 株式会社 ジオセンスの代表取締役社長:小林一英氏よりプログラムを学ぶ。 現在はKotaro Studioにてアルゼンチンタンゴをはじめとした民族音楽に関する文化の研究、ピアノ音響、さらに432hz周波数を使った癒しのサウンドを研究中。