Contents menu
※この記事は2020年6月30日に更新されました。
本日は録音技術シリーズということで、ニッチな楽器の代表例と言えばバンドネオン。
日本では演奏者も数少ないことからプロのエンジニアでさえなかなか録音する機会には恵まれません。
芸術工房Pinocoaを運営しているご縁もあり、アルゼンチンのバンドネオン奏者とも録音に関する意見にやり取りをする機会に恵まれ、筆者なりのバンドネオン録音のやり方が見えてきましたので、シェアしたいと思います。
リモートレッスンで使うバンドネオン奏者はもちろん、動画収録や編集者も突然バンドネオンのMV制作の依頼が来た・・・・なんて時に余裕で対応できるように、しっかりと把握しておきましょう。
【録音の仕方】上達方法~実践編:サンプル音源あり
ワンポイント録音での最高のマイク位置は決まっていません。 常に培ってきた情報とデータ、そして最後はその音の感動する位置を信じ切れる感性にかかっています。
【ピアノ録音】ワンポイント録音の威力を痛感する2つの音源聴き比べ
音の宇宙とも言われるピアノ。 それはまるで生き物のように呼吸し、少しでも機嫌を損ねれば悲惨な音響へと舵を切られてしまいます。
現地での定番方法は!?

まず、アルゼンチンタンゴの聖地ブエノスアイレスのほぼすべてのスタジオや、制作コンテンツにおいて、バンドネオンの録音は、指向性マイク×2本を左右に設置する方法が採用されています。
アルゼンチンではかなり最初期の頃から指向性マイクを使ったこのスタイルで収録されています。
また、スタジオ収録の際は、吸音材でバンドネオンを囲ってしまってセッティングするのが一般的で、そこからミックスしていきます。
同じバンドでの比較がベストなので、比較音源は後半に続きますが、まずはアルゼンチン・ブエノスアイレスでの一般的な収録風景をみてみましょう。
ちなみにこちらはアルゼンチンのスタジオで収録されているため、筆者は関わっていません。
筆者はこのバンドが来日公演をしていたころは、主に無指向性のワンポイント録音にハマっていたため、バンドネオンの収録に無指向性マイクを多用して、テストを繰り返していました。
バンドネオンに無指向性は合うんじゃないか説

Barrio Shino 来日公演の際、リハーサルなどに同行し、無指向性と、指向性それぞれ徹底的にテストしてみました。
すると、バンドネオンの収録には実は無指向性の方が相性がいいんじゃないか?とだんだん思えてきたわけです。
それもそのはず、バンドネオンの音の流れとしては確かに左右から発声し、空間で混ざってベストな音を産み出します。
であれば、ベストに混ざったポイントを狙って収録したほうがいいのではないでしょうか?
当然指向性にしかないメリットもあります。

やはり楽器自体の振動や、特殊な構造故の機械音、また指の輪郭などは指向性マイクの方が的確に収録することができます。
ただ、この部分を補助として、どちらをメインにするか?と考えた時に、無指向性マイクをメインに、補助マイクとしてバンドネオンのノイズ(いい意味での)を混ぜていくという戦略がいいのではないでしょうか?
実際にバンドネオンの音をソロで収録することはあまり想定されないことに加え、ソロの場合は、指向性、無指向性、どちらでも奏者のコンセプトを尊重して選択すればいいとは思います。
バンドの中でのサウンドを意識して収録しなければいけないのと、一緒にアンサンブルしている楽器の倍音や、特性によってセッティングを変えていかなければいけませんが、タンゴという編成で使われている楽器の場合は、バンドネオンの特性を考慮しても無指向性がいいんじゃないか?と考えています。
それでは、ブエノスアイレスで現在主流の指向性マイクでの収録と、ブエノスアイレスではほとんど実践されることのない、無指向性録音の聴き比べをしてみたいと思います。
【聴き比べ】バンドネオンの録音

芸術工房Pinocoaで制作されたBarrio Shinoの中から、バンマスの大長志野オリジナル曲にて比較してみたいと思います。

バンマス・・・昭和語感満載にゃ!(笑)
同じ場所、同じスタジオではないため、厳密な比較とはいきませんが、それぞれの収録方法によるキャラクターの違いを楽しんでみてください。
1、指向性オンマイクを使ったバンドネオンの音
2、無指向性オンマイクを使ったバンドネオンの音
3、ホールの釣りマイク収録~無指向性オフマイクの音
自然派はやはり無指向性か?!
さきほどの「アルゼンチン・ブエノスアイレスでの一般的な収録風景」で使われている曲も筆者が別実にリハーサルにて無指向性マイクで比較のため収録しています。
こちらも比較してみましょう。
まずは先ほども紹介した音源。
そして、次に無指向性マイクメインに、補助マイクも無指向性オフマイクを使ったサウンド。
いかがでしょうか?
やはり指向性でのミックスとなると、ミックス&マスタリング段階でかなり音の加工をしなければいけなくなります。
バイオリンなどは特にコンプレッサーやイコライザーの影響を顕著に受けやすく、迷いの森に迷い込んだら最期・・・という状況になってしまいます。
その点で無指向性ワンポイントの場合は、現場のモニターでしっかりと音を決めてしまうため、音が壊れにくいという印象です。

当然クライアントによって、指向性マイク+加工のパワーと迫力が欲しい!という方もいらっしゃると思うので、お仕事で収録の場合はクライアントの意向をしっかりと確認しましょう。
ちなみにこちら・・・・
同じ曲を人工知能がマスタリングした音源です。

ラフマスタリングまでしてしまい、仕上げはソフトに・・・なんて世界はもうすぐそこまで来ており、数十年したら完全自動になってそうですね。。。

昭和時代は録音エンジニアといえども、役割が分かれていて、マスタリングエンジニアという職業も存在していたんです。
バンドネオン録音の暫定的な答えはこれ!

もちろん暫定的です。
今後変わるかもしれませんが、筆者としてベストだと思うセットを考察します。
メインマイクはこれ!

個人的に市販されてるマイクで無指向性と言えばここからスタートだと思っています!こちらのマイクを2本用意しステレオペアで収録しましょう!
こちらの無指向性マイク、感覚を33㎝にしてセッティングしてみてください。
→無指向性マイクのセッティング方法の詳細(準備中)
補助マイクはこれ!
→NEUMANN ( ノイマン ) KM184 mt Stereo Set
指向性マイクはお値段と性能がしっかり関連付けられます。

安物買いの銭失いになってしまいがちな領域ですので、導入するのであれば絶対にケチってはいけません!
こちらを、ステレオペアでセットするのではなく、左右に完全に振り分けてセットしてみてください。

この写真では手前に33㎝感覚の無指向性マイクをセットしています。
ちょうどこのセットに、指向性マイクを左右に設置する感覚です。
無指向性マイクはあまりオフマイクすぎてもいけません。
しかし、オンマイクすぎてもギラギラしてしんどい音になってしまいます。
倍音が最もよく響く場所をしっかりモニターで見つけてください。
録音&配信する場合
録音する場合はもちろん、配信する場合でも最強のアイテムがあります!
ZOOM F6
これ、この価格帯から見ても考えられないくらい高性能。
オーディオインターフェイス機能もあるので、自宅からの配信はもちろん、レコーダーが基本なのでどんな場所でも収録することができます。
極端な話、大自然の森の中でバンドネオンソロ・・・なんてファンタジックな収録も可能です。
4チャンネルタイプのF4もおすすめですが、今買うならF6で決まりです。
ZOOM F4 レビューと音質チェック
デュアルSDカード仕様となっています。 これだけでもう安心感は別次元に違います。 特に仕事で使う場合、2重3重のバックアップは当たり前になってきますので、デュアルSDカードはとても重宝します。
F6だと6チャンネルあるので、上記のように、指向性マイク+無指向性マイクとをセットして、さらに、ガンマイクでナレーションなどをすべてまとめることが可能です。
ガンマイクはMKE600買っておけば間違いは起こりません。
オンラインバンドネオンレッスンだと、この組み合わせが最強ではないでしょうか?!
自宅からの配信の場合は、F6をオーディオインターフェイスにし、ATEM Miniスイッチャーでばっちりです。
PCの選び方はこちらを参考にしてみてください。
→【音響機器・映像機器】お値段高すぎない?と感じた時の思考法
みなさんの参考になれば幸いです。