【聴き比べあり】なぜミュージシャンは指向性マルチマイクが好きなのか?!

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ふと目覚めた本日は、ちょっとマニアックな記事になりそう。

昨日更新したnoteでは人生の優先順位と題して、2023年にやるべきことをピックアップ。

まずはフォルクローレのアーカイブと、GPS関連のスキルアップに全力投球していきます。

が、その前にちょっと気になっていたことをコラム形式でまとめていきます。

タイトルの通り、ミュージシャンとオーディオマニアの違いや思考回路について分解していきます。

といいますのも、この二種類の音のプロは、聴いているポイントや意識するポイントが全く違っており、制作の段階で衝突することが多い。

しかも多くの場合録音エンジニア側は雇われていることが多いため、折れ続けなければいけない。

そんなこんなで録音エンジニアはフラストレーションを抱えてる人が結構いるんじゃないか?

と筆者の肌感覚で思うわけであります。

両者の思考回路を理解することで、より良い歩み寄りによって音楽制作が進んでいくのではないか?

という非常にニッチなコラムとなっています。

音楽に興味のある方や、これから音楽家を目指す方、そして何より、録音エンジニアを目指す音響専攻の方は必読のコラム!

それでは進めて行きましょう。

両者の視点

筆者は幸いなことに、ミュージシャン視点、録音エンジニア視点両方から見ることができます。

なので、クライアントワークをしても、『このジャンルのミュージシャンはこういう音が好きだろうな・・・』と予測して、マスタリング。

すると、感動してくれることが多い。

ミュージシャン仲間として共感はできるが、録音エンジニアとしては実は妥協している・・・なんてことも多々ありました。

ミュージシャンの視点

スタジオセッション収録というと、やはりマルチブースに楽器を詰め込んで、収録。

ジャズの場合、ドラムは特に残響のコントロールに気を遣いながら録音していきます。

ミュージシャンがマルチマイク収録を好んで選択する理由の一つにこの残響のコントロールという視点があります。

筆者の専門はピアノですが、ピアノだって、演奏している椅子で聴く音と客席で聴く音は当然違います。

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ちなみに演奏者視点の音はこちらの記事で体験することができます。

【NEUMANN KM 184】各マイク位置でのピアノ音源テストや比較なども!

例えばライブコンサートなどでは、リハーサルで無指向性マイクを客席において、各位置で聞こえ方をテストする等の工夫をしていました。

場所によって残響時間が大きく変わるのはよくない。

多少の違いはあれど、演奏者が想定している範囲を超えた時間で響くのは会場のせいにするわけにはいきません。

残響というのは通常足すことはできても減らすことはできない。

厳密に言うと減らすことも可能ではありますが、音質に大きく影響する場合が多いです。

つまり、ミュージシャンの視点としては、スタジオセッションの場合、まずはできる限りデッドな音(残響が少ないことを表す)で収録して、必要なら足せるという環境を作りたいわけです。

それに加えてジャズなんかの場合だと、打点と空間音を別枠で捉えるミュージシャンもいます。

例えばドラムなんかの場合でスタジオブースセッション録音の場合、シンバルの打点音と、そこから膨らむ空間の音が完全に分離してミックスされることもあり、ワンポイント系の録音エンジニアはこういう現象を極端に嫌いますが、ミュージシャン側は完全に意図してミックスしてもらうことが多い。

マルチマイク録音エンジニアの場合はこういったジャンルごと、楽器ごとのミュージシャンの趣味趣向をよく理解しておく必要があるわけですね。

録音エンジニアの視点

録音エンジニアや、ワンポイント録音系エンジニアの場合は、筆者が録音エンジニアの視点で書いた五島先生とのジャズトリオの対談記事がありますので、こちらもチェックしてみてほしいわけですが、何よりも要素と要素の自然な融合を好みます。

ジャズピアノトリオの録音方法〜ベースとバスドラムの融合とドラムの空間性

シンバルの打点と空間が別で聞こえてくるなんて違和感を感じるし、そもそもシンバルの音というのは、美しい増感と減衰を繰り返しながら空間に広がっていくものと捉えるため、コンプレッサーで圧縮して必要な響きを演算で足していくといった処理に抵抗がある場合も多いわけです。

また、バスドラムパートというものが存在している意味さえ見失います。

先述の記事でも紹介していますが、バスドラムというのは基本的にウッドベースとリンクしながら推移していく、またシンバルの響きを支える役目、そしてスネアの雑味を調整する役目等々、まさに縁の下の力持ちといわんべく、様々な要素を下から支える超重要な役目を担っています。

だからバスドラムの音を適当に録音する録音エンジニアはマルチマイク、ワンポイントどのスタイルでも信用するべきではありません。

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収録予算に限度がある場合、バスドラム、ウッドベースに最高のマイクを使ってください。
管楽器などのフロント楽器のマイクは妥協してもそれなりにカバーできます。

歩み寄る方法

ズバリ、両者の視点をしっかり理解すること。

録音エンジニアとして活動していきたい場合はミュージシャンの視点をしっかり把握する、ミュージシャンが求めているところ、聴いているところを理解して、妥協点を見つけていく。

ミュージシャン側も録音エンジニアの気持ちをしっかり理解して、好みだけを押し付けて音響的に不自然な要求を押し付けないと両者はいい関係が築けます。

聴き比べ

さて、この記事を書こうと思ったきっかけが久しぶりにApple Musicでジャズを聴いたこと。

民族音楽の楽しみ方〜文化を知るということ

そして2014年にドイツ・ケルンのロフトというスタジオで制作したコントラバスとのデュオ作品をリミックスしていていろいろ気づいたことを記してみました。

ケルンの名門スタジオロフト(現在もkotaroの写真が使われています。)

当時はマルチマイクを極めまくっている、ステファンにレコーディングしてもらい、時間の関係でタイムマシンレコードの五島先生にミックスしてもらうという形をとっています。

制作したCDは完売しており、増版の予定はありませんので、ファイル形式で聴き比べ視聴していただこうと思います。

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どちらが優れていると言うものではありません。
先述したように、両者の視点を意識しながら聴いてみてください。

サンプルA:ワンポイントエンジニア視点

音響視点こちらはワンポイント録音エンジニアがマルチマイク収録された音源をミックスしたもので、先述の通り、倍音や空間の音をどうやって混ぜようかという視点に則って編集されていることがわかります。
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この記事ではDropbox経由でファイルを掲載しています。
Dropbox経由での音声配信の方法はこちらの記事を参考にしてくださいね!

【保存版】WORDPRESSにDROPBOXの音声, 動画ファイルを埋め込む方法

サンプルB:ミュージシャン視点

ミュージシャン視点こちらは筆者が記事のためにラフミックスしたものですが、倍音の広がりなどよりも打点の輪郭や、残響のコントロールに意識が向いている、完全にミュージシャン視点で編集した音源です。
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楽曲自体がちょっと特殊なジャンルなのと、サンプルBがエフェクト処理などせずにバラして配置しただけなので、よくわからないところもあるかもしれませんが、音響特性の違いは顕著に伝わるのではないでしょうか。

そんな音響視点のおはなしでした。

Kotaro

音大を卒業後ピアニストとして活動。 自身のピアノトリオで活動後北欧スウェーデンにてシンガーアーティストLindha Kallerdahlと声帯とピアノによる即興哲学を研究。 その後ドイツへ渡りケルンにてAchim Tangと共に作品制作。 帰国後、金田式電流伝送DC録音の名手:五島昭彦氏のスタジオ「タイムマシンレコード」にアシスタントとして弟子入りし、録音エンジニアとしての活動開始。 独立後、音楽レーベルを立ち上げ、タンゴやクラシックなどのアコースティック音楽作品を多数プロデュース。 その後、秋山庄太郎氏後継の写真スタジオ「村上アーカイブス」でサウンドデザイナー兼音響担当として映像制作チームに参加。 村上宏治氏の元で写真、映像技術を学ぶ。 祖父母の在宅介護をきっかけにプログラムの世界に興味を持ち、介護で使えるプログラムをM5Stackを使って自作。 株式会社 ジオセンスの代表取締役社長:小林一英氏よりプログラムを学ぶ。 現在はKotaro Studioにてアルゼンチンタンゴをはじめとした民族音楽に関する文化の研究、ピアノ音響、さらに432hz周波数を使った癒しのサウンドを研究中。